表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/151

2話 狼狽

 眼を開けると悠馬の前には純白の草原が広がっていた。


(ここは……どこだ?)


 混乱した思考のまま手で周囲をまさぐる。

 手に伝わるのはしっとりした極上の絹のような感触。

 もう少し味わってみたくて、思わずぐみぐみと揉んでみる。

 次の瞬間、


「このヘンタイ!」


 バチン!!

 威勢のいい少女の声と共に、殴り倒される。

 慌てて跳ね起きる悠馬。

 目の前には下半身も露わな15歳くらいの金髪の美少女。

 その隣には目前で起きてる事が信じられないとでも言いたげな18くらいのメイド服の少女。


(いったい何が起きてる?

 っていうか、今俺ってこの娘の事を……)


 あわわ。

 あまりの事態に狼狽する悠馬。

 どう見ても演技ではないその様子に、レミットも警戒を解く。

 幸い今の発光現象を警戒してか、外の奴等は様子を窺っている。

 今の内にこの転移してきたっぽい少年の目的を聞き出さなくては。

 猫の様に四つん這いで忍び寄り、顔を近付ける。

 赤面する少年の様子に、悪人ではないと直感する。


「アナタ……名前は?」

「うえ? あ、俺は悠馬。

 久遠悠馬っていうんだ」

「クオン・ユーマ、ね。

 長いからユーマって呼ぶわね。いい?」

「あ、ああ」

「あたしはレミット。

 あっちの娘はアイレス。

 とある理由で襲われてるの。

 助けてくれない?」

「え? 襲われてる……?」

「そう、あたしは由緒ある家の出なの。

 今はちょっと事情があって逃亡中だけどね。

 報酬は弾むわ……

 お願い、助けて!」

「でも……残念だけど、俺にはそんな力なんて……」

「それは嘘でしょう?

 だって見えてるわよ、それ」


 レミットに指摘を受けた悠馬は肩から下げた鞄を見下ろす。

 そこに収めたデッキの数々。

 それらが今や眩い輝きを上げている。


「それって魔導書でしょ?

 しかもそんな強力なものは見た事が無い。

 あたしと変わらない年齢に見えるけど……

 アナタこそいったい何者なの?」

「いや、俺は普通の学生で……」

「まあいいわ。

 今は内側の変態さんより外の狼さんの方が怖いから。

 だからお願い、ここは助けて!」


 必死に縋りつき懇願してくるレミット。

 よく見ればその細い四肢は小刻みに震えている。

 勝気そうに見えても年下の少女だ。

 きっと恐怖を必死に堪えているに違いない。

 場違いなドレスとメイド服の二人の少女。

 年代物らしい馬車。

 格子窓から見える鎧を着込んだ荒くれ者達。


(ここは……異世界か何かか?

 何かが理由で転移した?

 よく小説とかで見かけるパターンだけど……

 当事者になると結構アレだな)


 萎える脚を懸命に抑える。

 悠馬は現代日本で育った普通の高校生だ。

 少々カードゲームが得意なだけの。

 こういった暴力行為に馴染みはない。


(正直暴力は苦手だ。

 けど、こんな娘達を放っておけるか!)


 悠馬は持ち前の決断力で判断すると、レミットに尋ねる。

 自分の持つ魔導書……デッキの使い方を詳しく聞き出す為に。






 次回、ついにデェエル開始です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ