14話 付与
◇2ターン◇
自分のターン開始と共に、ダズは密林との契約を結ぶ。
大地より生まれたマナを使い、更なる召喚を行う。
「来やがれ、<ゴブリンの集結>!」
またも砕け散るダズのシールド。
武装設定により狂騒化が付与される。
更にガーダーの特殊効果により追加コストとして2枚の手札が失われていく。
しかしその効果は絶大だった。
密林の奥より怒涛が響き、場に3体ものゴブリンが現れる。
<狂乱ゴブリンの集結>
AP 1000
DP 1000
SP 碧② 手札×X枚
『特記』
この呪文を唱えた時、貴方は手札を望む枚数消費しても良い。
そうした場合、この呪文を消費した手札枚数分コピーする。
「きゃはははは!
いっけ~野郎ども!!」
ダズの命の下、悠馬に襲い掛かるゴブリンとオーク。
悠馬はすかさずサラマンダーの特殊能力を発動。
オーク一体がターゲットになり燃え尽きる。
しかし現状としてはそれが限界だった。
DPの高いドラナーに一匹を受け持ってもらい、残りを敢えて通す。
砕け散る2枚のシールド。
これで悠馬の身を守るものはもう何もなくなった。
次に本体にダメージを受けた場合、悠馬の敗北となる。
「おいおい、どうした~?
もうリザインした方がいいんじゃねーのか?」
まさに崖っぷちとしか言い様のない悠馬。
そんな悠馬を煽るダズ。
しかし当の本人は意に介さず黙々とマナを伸ばしターンを返すのみ。
悠馬のターン終了宣言に合わせ、ドラナーは再度火蜥蜴を召喚。
悠馬の場にはドラナーとサラマンダー2体が再び並ぶ。
>ダズ、ターン開始時にデッキより1枚ドロー。
更なる<狂騒化>によりシールド1枚と手札を1枚ロスト。
追加コストとして2枚の手札を消費。
ユーマのターン開始時にデッキより1枚ドロー
さらにシールド破損により2マナ増強。
ユーマ 手札 7⇒6 マナ5 シールド0
ダズ 手札 5⇒0 マナ2 シールド1
◇3ターン◇
「ひゃっは~今日は最高にツイてるぜ。
まさかこれを引けるとはな!」
魔導書から引き出した1枚にダズが舌なめずりをする。
それはダズの切り札といってもいいカードだったからだ。
「<怒れる軍勢>をキャストだ!」
<怒れる軍勢>
SP碧① 無色①
『特記』
ターン終了時まで貴方のガーダーはAPとDPに1000の補正が掛かる。
DPを超えたAPは直接シールドか本体へぶつける事が可能となる。
これで3体いるダズのゴブリン達はAPとDPが共に2000へ上昇。
悠馬の場には3体のガーダーがいる。
あのサラマンダーが先程のブレスを使ったとしても、倒し切れる数でも耐久性でもない。
(勝った! これでオレの勝利だ!!)
勝利を確信し、ダズは戦闘宣言を行う。
しかし彼は知らなかった。
決闘<デュエル>に置いて……いや、ありとあらゆる勝負事において勝利を意識する瞬間、その瞬間こそが最も無防備になるという事を。
「サラマンダーを2体サクリファイス。
更に溢れるマナを注ぎ込む。
その効果により火山地帯の活性化<ヴァイタライズ>。
灼熱を以って結実とし、今ここに我は願う」
襲い掛かってくるゴブリン達を冷静に見定めながら、悠馬はこの時まで溜めていたマナを一気に活性化。
爆発的な熱量が生まれ紅の奔流となる。
悠馬の周囲から爆炎が立ち昇っていき、まるで活火山の噴火の様に燃え盛る。
儀式<リチュアル>補助。
再び語るが、それはこの<サガ>にとって最も大事な事の一つである。
何故ならこの儀式をもって召喚することが可能となるのだ。
このゲームの代名詞。
デッキの象徴、デッキそのものともいえるヴァイタルガーダー。
即ち<ガーディアン>の召喚である。
「灼熱より来たれ!
荒ぶる暴君<殲滅龍グ・イレイズ>よ!」
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
悠馬の召喚に応じたのは砦ほどもあるドラゴンであった。
溶岩地帯から荒々しく巨躯を乗り出し、下を見る。
そこには巨神と遭遇し震える3体のゴブリンがいた。
「薙ぎ払え!」
「GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
悠馬が命ずるまでもなく吐き出されるのは殲滅のブレス。
比重の重い金属が内融したその高熱ブレスはたとえ城の城門であろうと圧倒的な質量と熱量とで押し砕き燃やし尽くすほど。
憐れなゴブリン達は断末魔すらなく消し飛んでしまった。
「ば、ばかなあああああああああああああああああ!!
だってありえねえだろ!?
なんだ、そりゃあああああああ!!??」
錯乱し地面に腰を付きながらダズは後ずさる。
彼の言う事も一理あった。
あんな悪夢の化身みたいな存在をガーディアンとして配下にしているなど、もはや規格外にも程がある。
神にも等しい存在を相手に、いかに召喚術師とてどう対抗すればいいのだ?
だが狡猾な彼は気付く。
恐ろしい頑健そうな体躯、鱗に覆われたドラゴンのその体に、隷属の証たる紋章が刻まれてはいない事に。
「ぷ、ぷあははははは!!
何だ手前、ハッタリかよ!
身に余る召喚は身を滅ぼす事を知らねえのか!?」
ダズの指摘通りであった。
自分の制御できる域を越えたガーディアンの召喚は招き手たる召喚術師本人に牙を剥く。
通常ならもっとマナを掛けてゆっくり召喚すべきところなのだ。
このままでは悠馬のターンになった瞬間、暴君は悠馬に襲い掛かるだろう。
しかし悠馬は慌てる事無く自分のターン開始時、ドラナーへ付与の召喚術を掛けていく。
何かを命じられたドラナーも陰鬱な顔を活き活きとし、頷く。
「荒ぶる暴君に<血脈の簒奪>を。
更に紅蓮の踊り手に<名も無き者への銘称>を。
龍より魔名<グ>をドラナーに付与し、ランクアップ。
己が配下を従僕とせしめよ。
紅蓮の『担い手』ドラ<グ>ナーよ!」
「兄さんの命ずるがままに!!」
悠馬の秘儀によりドラナーがランクアップ。
ドラナーは炎の使い手からドラグナー<龍操師>として龍の使い手となる。
暴れ回るドラゴンを容易く掌握。
瞬く間に自分の制御下においてしまった。
これこそカレンを探してる間にドラナーとの会話で出た意見を参照にした結果であった。
ドラナーの一族はその昔、龍使いとして名を馳せたらしい。
乱獲により使役する龍の数が減ってしまい、次第にその血は薄れていったと。
けれど焔に対する親和性は残ったのだ。
だからこそ、学もない自分がそこそこの召喚術師としてこれまでやってこれたのだとドラナーは自嘲していた。
けれど悠馬は気付いた。
今は失われてる……? ならば然るべき準備さえしてやれば、ドラナーは真の力を引き出せるのではないか?
その推察はまさに的中した。
場に対する威力は凄まじいも、主に刃向かう為に扱い辛いガーディアンであった<殲滅龍グ・イレイズ>を今やドラナーは完全に指揮している。
ただせっかく召喚されたのに暴れ足りない様だ。
ドラグナーに硫黄臭い鼻息を洩らし不満を訴えてる。
「なになに?
えっ、暴れ足りないですかい?
よ~し、じゃあ格好の相手がいますよ。
その矛先は……」
「ひいいいいいいいいいいいいい!!」
視線を向けられたダズは即座に両手を上げ降参する。
あんな化け物たちを相手にして、勝てる訳がない。
自分は何という無謀な真似をしてしまったのか。
禁忌に手を出した己の浅はかさを呪いながら、ダズは地べたに這いつくばり赦しを乞うのだった。
>デュエル終了
勝者、久遠悠馬!




