12話 再会
凛然とした悠馬の宣誓。
そこには強い意志が込められていた。
突然の襲来に驚いたダズだったが、目の前の相手が年端もいかないガキだと知った瞬間、持ち前の傲慢さが心を曇らせる。
下から睨み付ける様に威嚇を行う。
けど悠馬は一向に介さず、真っ直ぐな視線を返すのみ。
これはダズの些細なプライドを傷付けた。
何で自分を恐れ敬わない?
この女騎士といい、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
肥大した自我。
渦巻く怒りが憎悪となり加虐へと駆り立てる。
「面白え……
そこまで言うからには覚悟は出来てるんだろうな?
啖呵を切った以上、手前とはきっちりケジメをつけっぞ」
「ああ」
「よ~っし、ならばいくぜ。
ダズ・ゴズブレイの名において宣言す。
クオン・ユーマ。
汝にデュエルを申し込む!」
「揺るがぬ闘志と烈火に誓い、今ここに誓約す。
我が名は久遠悠馬。
汝、ダズ・ゴズブレイの申し出を受ける!」
召喚術師達の決闘誓約の成立。
その瞬間――世界の全てが弾け、決闘を行う闘技場へと再構成される。
デュエルによるフィールドが形成されていく。
半ば悠馬に見蕩れて呆然としていたカレンだが、突風の様な羽ばたきと共に近くに着地してきた鷲獅子の姿に慌てて身構える。
ユーマと名乗った少年はあの鷲獅子から飛び降りてきた。
おそらくユーマのガーダーであるのだろう。
これほど立派な体格の鷲獅子をカレンは軍務でも見た事がなかった。
それに鷲獅子は馬車を抱えていた。
小型の馬車とはいえ、恐ろしい程の膂力だ。
雌馬を攫うという鷲獅子の習性を思い出しカレンは青くなる。
害意はないと思うが、油断しないにした事は無い。
あの馬車から襲撃者が現れるかもしれないのだ。
剣を構え何時でも動ける様にする。
だがそんなカレンの決意は良い意味で裏切られた。
「大丈夫、カレン!?」
「お嬢様!」
もどかしいとばかりに荒々しく開く馬車の扉。
と同時、自分目掛け弾丸の様に走ってくるのは金髪の美少女。
主君の姫君であるレミットに間違いない。
もう二度と会えないと思った。
しかも無事な姿をこの眼で見れた。
再会出来た喜び。
身体の力が抜けそうになるのを、必死に堪える。
汚れた身体を気にせず胸元に飛び込んでくるレミット。
カレンはいつもそうしてるように、優しく抱き締める。
レミットは人一倍さびしがり屋だ。
公務に忙しい両親や兄姉達に構ってもらえず一人涙する時があった。
騎士としての分を越えた行為だとは思っていたが、カレンはそんなレミットを慰めてきた。
常に付き添うメイドのアイレスと共に。
3人の中には主従を越えた絆があるとすら思う。
「よくぞ、よくぞ御無事で……」
「カレンこそ!
生きててくれて嬉しい!」
「良かったですわ、カレン様」
「アイレスもよく頑張ったな」
「わたくしは何も……」
「襲撃は無かったのか?」
「それがね、山越えの途中に」
「大丈夫だったのです!?」
「うん、ユーマが助けてくれたの」
「そうですね。召喚術師を撃退してくれましたわ。
全ては」
「クオン・ユーマのお蔭、か?」
「ええ」
「彼は……いったい何者なのだ?
助けられた私がこういうのも何だが」
「そんなの決まってるでしょう」
真剣な顔で話し合う二人にレミットはとびっきりの笑顔を浮かべる。
そして信頼の込められた瞳でバトルフィールドを見る。
「アイツはただの馬鹿よ。
エッチでお人好しでカッコイイだけの、ね」
書き足しです。
後から見直して結構手直しをしてます。
ので、お暇な時は読み返すと新しい発見があるかもしれません。




