【孤独と隠れんぼ】
【本編に進む前に】
これは私の作成した全く持っての短編集です。
この小説には…
※ホラー要素
※不可解な表現
※サイコパスな表現
※暴力、グロテスクな表現
これらが含まれています。
それでも大丈夫な方のみ、お進み下さい…
【孤独と隠れんぼ】
街の郊外にひっそりと佇む寂れた廃墟、そこには真っ赤なナイフを携えた少女が座り込んでいた。
時刻はもうすっかり夜も更けており鬱蒼とする木々が不安を煽っていた。少女の目の前には深い闇が広がっている。だが、天井からぶら下がっている何かは鈍くギシギシと音を立てて揺れていた。
「………ぁ…」
少女は喉から絞り出すように声を出す。
殆ど声にならないままそれは虚空に吸い込まれて消えて行くばかりだった…少女の体はあちこちに傷跡や痣のようなものが見え隠れしている。服もやや草臥れているようだった。
「……さびしい…だれか……」
瞳から流れる一筋の雫が頬を伝う。
「だれかぁ……助けてよ…みつけて…」
その悲痛なる声も虚しく、誰の耳にも届く事は無かった。
少女は俯き、紅いナイフを見た。
真っ赤なナイフは月明かりに照らされて怪しさを孕んだ光を濡らしていた。
「お願い……私を、みつけてよ」
徐に彼女はナイフを持ち上げて首に当てたかと思うと手前に滑らせた。
少女の細い首から真っ赤な鮮血が迸り壁や床をみるみる内に染め上げていく。
カランとナイフがその手から零れ落ち、少女の躰は冷たい床へ崩れ落ちた。
それでもなお、紅い水溜りは大きく広がっていった、空に浮かぶ月は雲に隠れて冷たくなった少女までも覆い隠していった。
やがて夜が明け、清々しい空気が漂う頃…コツコツと足音が響き、冷たい少女の元へ歩み寄る影が見えた。
「……みつけた…」
その影は呟いたあと跪き、冷たい少女の頬を撫でた。
「……遅くなって、ごめんよ」
影は俯き、涙を零した。床を濡らすほど零し続けていた。
冷たくなった少女は、嬉しそうに微笑んでいた。