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第1章 人造人間

「ここは円周角の定理を利用して角ABCと角EFGが等しくなるので……」


 …………

 …………

 眠い……。



 銃声がした。

 それを認識した瞬間、私は身構えると慎重に辺りを見回す。

 そして私は、自分の目の前に立つ黒ずくめの少年と、その手に握られた銃を見た。

 銃からは煙が立ち上っていて、わずかに火薬のにおいがする。

「カンナ……?」

 驚いて声を上げる私に構わず、その少年、カンナは再び私に銃を向ける。

 普段は無表情のカンナが、獲物を見つけた蛇のように口元を吊り上げている。

「カンナ!?」

 カンナの銃口が火を噴くと同時に、私は逆方向に走り出した。

 カンナが何を考えてるのかわからない。でも、とにかく、逃げるしかない。

 カンナは追いかけてこない。ただ立って、銃を乱射している。

 銃弾が私の右腕数ミリ横をかすめる。

「……ッ!?」

 驚いた私は、振り返った反動でバランスを崩し後ろに倒れる。その頭上を弾丸が通過していく。

 再び跳ねるように立ち上がり逃げ出した私に、カンナは照準を合わせ、銃を乱射。

 その中の数個が、私の右足に命中した。

 ズキンとした痛みが右足から全身に流れる。

 痛みに足を押さえて蹲る私に、カンナが近づいてくる。

 私は逃げることもできず、その姿を見つめていた。

 カンナが照準を私の頭に合わせ、

「見るべきものを見ておかないと、後悔するよ……?」

 ……どういう意味?

 それを私が聞き返す前に、

 引き金を引いた。



 銃声は……しなかった。

 代わりに、ガン!!と机に頭をぶつける音が響き、額に痛みが走る。

「……よってこの角とこの角が等しくなるので、△ABCは二等辺三角形となる」

 中年の数学教師が、小テストの解説を終える声が、遠くに聞こえた。

 夢か……。

 残念なような、安心したような、妙な感覚に襲われる。

 本来、私たち人造人間には、眠るという行動は必要ない。これは数学教師が発する催眠波の影響だろう。

 私の名前はアクア、またの名を荒川ミク。さっきも書いた通り、私は人造人間。

 荒川ミクというのは、私の人間の名前だ。顔面偏差値は平均。成績は低いほう。

 私たちは、魔術師と呼ばれた男性によってこの世に生み出された、4体の人造人間。理由はわからないけど、人間に化けてこの中学校に通うよう言われている。

 性格も見た目も様々。魔術師が死ぬ前に造り上げたという、いってしまえばこの世に1体しか存在しない人造人間。それは、人間とほぼ変わらないといっていい。

 カンナもまた、同じように作られた人造人間だった。

 性別は男。端整な顔立ちにいつも無口・無感情・無表情。髪は黒。対照的に、肌は不自然なくらい白い。整った顔立ちに、黒い眼鏡。長い前髪の下から覗く目はいつも無感情だ。

 これも黒い、トレーナーのような服の上に、唯一の色彩である青いカーディガンを羽織っている。黒いズボンは、ブーツインしている。

 腰には、さっき夢の中で私を撃った銃。種類はわかんないけど、結構威力があると本人が言ってた。

 人間の名前は永井カイト。私より一つ年上の、中学3年生だ。

 ちなみに断わっておくと、私のミクと、カンナのカイトは偶然だ。あるいは、魔術師がそっち方向にはまっていたかだ。

 もはや、知るすべはないけど。


 寝起きで、頭がぼんやりする。そして、そんなときに限って、教師はビシバシさしてくる。学校あるあるだ。

 そしてこれは、私も例外ではなかった。

「じゃあ次の問題を……荒川!説明してください」

 数学教師が名簿を掲げて私の名前を呼んだ。

「はい?あ……えと……」

 ガサガサとテキストをめくり、問題を把握。10秒で解き方を考える。この辺、人造人間独特の思考速度だ。

 そして脳は3秒で結論を出した。

「……解りません」

 思考速度は高くても知能指数は人並みかそれ以下なのだ。

 呆れたように解説を始める数学教師を見ながら、もう少し知能指数が高くても良かったのになと考えていた。


念を押しておきますが、アクアのミクとカンナのカイトは偶然です。作者が二次オタなのは……まあ否定しません

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