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3/6


 部屋の中、男が二人ソファに向かい合って腰をかけている。一人は若く20代後半だろうか目の前の男に書類を見せる、書類を受け取ったもう一人は彼よりも年上で恐らく上司だろう。


「では副隊長、仕掛ける場所は食堂と中庭、大聖堂の3つでいいですか?」

「ああ、本当は教室と屋上それから植物園にも仕掛けたいところだけど、さすがにこんな仰々しい物を置いたら目立ってしまうからね」



 二人がなにやら話し込んでいると、部屋の扉が開き男が一人部屋に入ってきた。

「おう、話は進んでるかぁ?」

「はい。」若いほうの男が答える。

「順調ですよ。そちらは?」

「設置許可は取ってきた。後は今日の内に取り付ければ完璧だ。」男が話しながら近づいて来る



「で、メル。てめぇは何してんだ?」

 入ってきた男が、副隊長の隣で膝を抱えて座っている少女を見ていう。

「メルいい加減機嫌を直せ」若い男が苦笑いを浮かべながら少女に声をかける。


 副隊長がおもむろに席を立ち、若い男の隣に腰掛けた。

少女は、そんな彼を物言いたげな目で追いかけ、隊長が来る何て聞いてない。とソファーから足を下ろしながら、少々不貞腐れたような声で返事を返した。


「言ってねえからな」少女の隣の空いたスペースに男が座る。

さっきからずっとこの調子です、と副隊長が説明する。



 ふと静寂が部屋を包んだが、男が少女に顔を向け問いかけた。

「それで、メル。その腕はどうした?」

「んー、何の事?」少女は机の上に置かれた書類に手を伸ばしながら男の方を見ず答える。


「おいおい、馬鹿にしてんのか?じゃあ、聞き方を変えてやる。その右手と右足、誰にやられた。」部屋の温度が格段に下がったような錯覚を覚える。目の前に座る男達も真剣な顔で彼女を見る。



「…」メルは書類を取ろうとするのを止めて隊長の方を見る。

「俺をだませると思ってんのか?まず、自分のテリトリー外である学園の応接室で靴を脱いでるのがおかしいよな?いくら俺らがいるとしても警戒心が一番高いおめぇが、すぐ動けなくなるような行動するわけねーだろ。その次にメル、何で上座に座ってる。」

メルの視線を受け、なおも言葉を重ねる。


「普通招待された方、つまり俺らが上座に座る。特にこのメンバーで、そういった事を一番気にすんのはおめぇだけだ。なのにトニーが下座に座ったってことは、おめぇが一番最初にその席に座ったってことだ。でかいソファーの右側、俺たちからはおめぇの右側が見えにくくて、一番にドアから出ていける位置だ。」



「…んー、…はぁ」しばらく隊長の目を見返していたメルだったが、何を言っても無駄だと判断したのだろう。大きなため息をひとつついた。


「…ちょっと、階段から落ちて着地に失敗しただけ。階段も4,5段目ぐらいからだったし。本当にちょっと捻っただけで大丈夫だよ」

 最初は明るい声で説明していたが、だんだん周りの視線に耐えきれなくなったのか、最後の方の声は窺うような声になっていた。


「誰だ」相手を教えろ、とメルを見る目がさらに強くなる。

彼女は助けを求めるように向かいのソファーに腰掛ける二人を見るが、こちらもさっさっと言えというような目で見られた。裏切り者め。


「騎士の人」諦めたのか、小さな声で答える。

しかし、静かな部屋では十分聞きとれる大きさだった。

「ほー、ブレイク家のガキか」

「うわ、隊長に目を付けられるなんて、カワイソー」

「いや、むしろ多くの騎士団員に目をつけられて、じゃないかな?」

 

 相手が分かったとたん、彼らは口々に話しだした。恐らく、オーウェン・ブレイクは騎士団に入隊したら熱烈な歓迎を受けるのだろう。お気の毒です。


「とりあえず、ネストに直してもらえ。」

隊長は相手が分かって満足したのか、ただでさえ強面の顔が凶悪な顔へとシフトチェンジしていた。


メルは、はーいと返事をしながら副隊長の前へと移動して治癒魔法を受ける。

「では、学園に王国騎士団警備隊を派遣。学園の一部に魔法解除装置を設置。そこではレイス子爵の魅力が解けるので、その違和感からおかしいと気付いてもらう。という方針でよろしいですか」とトニーが確認を行う。


「ああ」

「それで大丈夫ですよ」

隊長と副隊長がうなずく。


「でも、それでも気付かなかったらどうするの?」

怪我を直してもらったメルが、隊長に問いかける。

「そしたら、この国は終わりだな」

隊長の返答はひどく静かな物だったが、その目はギラギラと獲物を狙う目をしていた。


騎士:オーウェン・ブレイク

副隊長:エルネスト・ダービー(隊長からはネストと呼ばれている)

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