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アイリス誘拐事件・後編
「アイリスっ!」
叫んだ声は、廃工場に響きました。
「ク、ラ…イド…」
掠れて聞き取りにくい声。
でもその声は、確かにクライドを呼びました。
「動いたらこの子、死ぬよ?」
男は、ニヒルな笑みを浮かべています。
「ふふ、ふふふ。返して欲しければ、僕の言いなりになることですね」
心底楽しそうに、残酷に、男は微笑んでいました。
「何でも、するから…!アイリスだけは、無事に返してくれ」
「だ…め……やめ、て…クライド…」
アイリスは、必死に声を絞り出して訴えます。
「大丈夫だよー、アイリス」
にこり、と変わらない笑顔を、クライドは作りました。
男はニヤリ、と笑い、アイリスの首からナイフを離しました。
それと同時に、クライドの口角も吊りあがります。
パァァンッ!
乾いた銃声が響きました。
クライドは、目にも留まらぬ速さで銃を出し、発砲したのです。
銃弾は、見事に眉間を撃ち抜いていました。
男が倒れたのを見ると、クライドはアイリスに駆け寄りました。
縄を、解きます。
「クライド…」
アイリスは、安心したように微笑みました。
アイリスをかかえ、クライドは廃工場を後にしました。
僅かな硝煙は、男の死体を囲みました。




