クライドの気持ちは?
「アイリス」
クライドの声で、アイリスは目覚めました。
少しだけ冷たい手が、アイリスの頰を撫でました。
「なぁに?クライド」
その表情は、真剣そのものでした。
「アイリスは、さ」
クライドの頰は、アイリスの好きな赤。
「俺のこと、どう思ってる?」
質問に、アイリスは不安を覚えました。
「俺は、アイリスが」
アイリスは、遮るように。
「やめて!」
叫びました。
「それ以上、言わないで…」
不安、なのです。人を愛せる自信が無いのです。
何よりアイリスは。
この関係が変わるのに、恐怖を覚えていました。
「…ごめん」
クライドは、アイリスに謝り、目を伏せました。
「私は」
アイリスは、先程の質問に答えます。
「クライドを、必要だと思っているわ」
ただ、それだけ。
「でも、ごめんなさい。私には、人を愛せる自信なんてない。貴方を、知らない内に傷付けてしまうかもしれない。それが……たまらなく、怖いの」
アイリスは、慎重に言葉を選びながら、正直に告げました。
暗くなったアイリスの表情を見て、クライドは、震える手で優しく頭を撫でます。
「アイリスは─────優しいんだね」
それは、初めて言われた言葉でした。
「私が、優しい?」
「とっても」
アイリスは、自嘲の笑みを浮かべました。
「違うわ…。ただ、臆病なだけ。怖がりなだけ、なの………」
その目には、涙。
アイリスは、臆病な自分が大嫌いでした。
全てから逃げる自分の臆病さが。
「ううん、優しいよ。他人を傷付けるのが、怖いんでしょう?」
「違うわ。…私が、傷付けたくないのは…」
呟くように言ったので、クライドは聞き返しました。
「私が傷付けたくないのは!貴方だけよ、クライド!」
アイリスは勢いに任せ、叫びました。
他人を傷付けるのが怖いなら、ヒトゴロシなんてやっていない。
クライドは、驚いて目を丸くしてしました。
本当は、アイリスは気付いていました。
クライドが、好きなのだと。
でも、制御できないその感情が怖いのです。
「…忘れて」
あくまで冷静に、アイリスは言い放ちました。
「いや、無理でしょ」
「頭ぶつけて忘れて」
アイリスの顔は、熱くなっていました。
「だから無理だって…」
何であんなこと言ったんだろう、とアイリスは頭を抱えました。
「…ありがと。でも、前も言ったけど…俺がアイリスを守るから」
その言葉がたまらなく嬉しくて、アイリスは照れ隠しにクライドに抱き着きました。
「アイリス?」
クライドが、困惑したように声を出しました。
「え、と…その…」
「…ふふっ」
あまりの困惑ぶりに、アイリスは思わず笑いました。
平和な日が、いつまでも続く?
いえいえ、そんな訳はありません。
平和はいつか、終わってしまうのですから…
でもそれは、もう少しあとのお話。




