守るから
どうしてこうなったのかしら、とアイリスは思いました。
鍋の中には毒々しい色のシチュー(の、つもり)。
「アイリスー。料理出来ないなら、無理しなくて良いんだよ」
本当に、どうしてこうなったのかしら。
「ねえ、これ何入れたの?」
アイリスは、思い出しながら言います。
「ホワイトソース、ジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、お肉。それと隠し味を少しいれたわ」
クライドは、苦笑いです。
「隠し味って…何入れたのさー」
少しも反省せず、アイリスは答えます。
「何だったかしら」
「まあそれは良いとしよう。何の肉ー?」
アイリスは、ニヤリと笑って言いました。
「人肉です♡」
「料理禁止」
即座に言い渡されました。
ですがアイリスは納得しません。
「味は大丈夫なはずよ。…多分」
「人肉入ってる時点で大丈夫じゃないから。俺、食べないよー?」
「私もよ」
クライドは、溜息を吐きます。
「結局食料の無駄じゃないかー。もう一生料理しないで」
この毒々しい料理、一体誰が食べるのか。
そんな疑問が、2人の頭をよぎりました。
「捨てよー」
「捨てましょう」
見事に重なりました。誰かが食べるという選択肢はありません。
そうしてアイリスは、キッチン出入り禁止になったのでした。
2人で暮らし始めてからは、2人で殺しをするようになりました。
2人の手口は鮮やかで、警察も犯人の性別すら掴めない状況でした。
その中で、アイリスの捜索も行われていました。
なので、アイリスは外も出歩けません。
でも、アイリスは血の色さえ堪能できれば、それで良いのでした。
「アイリス。俺、何があってもアイリスを守るから」
唐突に、クライドがそんなことを言いました。
アイリスは、ありがとう、と言って微笑みました。
そんな言葉、聴き慣れています。
でも、他の誰に言われるより、アイリスは嬉しかったのです。
それが、どういうことか。
まだ、アイリスには分かりません。
胸が高鳴る、この感情を─────




