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アイリス姫の殺人生  作者: クラウン
1/8

1. 姫ノ好キナ紅

この作品は、一国の姫を主人公としています。どうぞ、アイリス姫の殺人生をお楽しみ下さい。

赤い満月の夜、とある小さな国に、お姫様が産まれました。

肌は病的なまでに白く、髪は満月よりも美しい輝きを放つ白銀。

そして─────まるで血のように真っ赤に染まった、ルビーのような瞳。

十年もすればその美しい容姿は、国中の男性を虜にするであろうと噂される程でした。

アイリスと名付けられたその少女は、何不自由なく育っていきました。

アイリス姫が十四歳になったころには、その美貌は国中の男性を釘付けにしました。

穏やかで誰にでも優しさを忘れないその性格は、皆に好かれることとなりました。

彼女は、どんなに綺麗な色よりも、赤色が大好きでした。

ある日、庭で真紅の薔薇を眺めていたときでした。

アイリス姫はその香りを楽しもうと、薔薇の茎に手を伸ばしました。

チクリ。

姫は思わず、手を引っ込めます。

薔薇の棘が、指に刺さってしまったのです。

怪我をした指からは、赤い赤い血液が溢れ出します。

「なんて……なんて、すてきな紅…」

アイリス姫は、自らの血に見惚れました。

その色は、言うまでも無く紅。

その紅を、彼女は今まで見てきたどんな赤よりも美しいと感じました。

一瞬で、血の紅に惚れてしまいました。

それから彼女は、毎日のように自分の手を傷つけ、紅を見ました。

しかし、それに使用人や両親が気づかない訳もありません。

何故自分を傷付けるのか、皆に問われましたが、頑なに理由を口にはしませんでした。

ですが、それから彼女にペーパーナイフですら与えられませんでした。

アイリス姫は、耐えきれずに夜中、城を飛び出します。

こっそりと、ローブを羽織って。

そして空き家に逃げ込みました。

そこで偶然見つけたナイフを手にしました。

キィ、と扉の開く音がして、人が入ってきました。

びくり、と姫は身体を震わせます。

「ひ、姫!?」

このままでは、捕まってしまう。

そう考えたアイリス姫は、反射的にその人物を刺し殺していました。

ローブには、べっとりと血糊がつきました。

にも関わらず、彼女の口元は綻んでいました。

「ああ…紅。紅だわ……!なんて、すてき…」

暫くこの幸せの余韻に浸っていたいと考えましたが、ローブを脱ぎ捨て、大人しく城に戻ることにしました。

勿論、人を殺したことは秘密にして。

夜中に出て、空が明るみ始めたときに帰ったアイリス姫は、城の脱走を誰にも知られていませんでした。

平然と部屋から出て、食事をする。

そう、まるで。

何も無かったかの、ように。

今宵もまた、こっそりと抜け出します。

もちろん素性がバレては大変ですから、ローブを羽織って。

ですが、昨夜とは違い、そっと持ち出したナイフを手にしています。

そして、偶々通りかかった罪なき人々を滅多刺しにし、惨殺します。

その時の姫の顔には、恍惚が浮かんでいました。

大好きな紅色を浴び、幸せに溺れたアイリス姫は、又もや昨夜のように夜の空けぬうちに帰りました。

それを一週間程続けました。

新聞では正体不明の殺人鬼として取り上げられ、国民は皆、恐れおののきました。

当然、アイリス姫の耳にもその噂は届いていました。

と、言いますか、殆どのことは姫の耳に入ってくるのです。

何故なら、アイリス姫は次期国王。

毎朝使用人が教えてくれるのです。

殺人鬼のことは、毎日のように聞くこととなりました。

その時、決まって姫は、

「……そう」

と、窓の外を眺めて、短く応えるのでした。

使用人から見えないその顔には、全ての男性を虜にする微笑が浮かべられていました。

次第に夜歩きする人が居なくなって行き、姫は何十分も彷徨うようになりました。

遂には民家に押し入り、殺害するようになりました。

「あは、あははははっ!!ふふ、ふははははっ!嗚呼……なんて、美しい紅」

静まり返った部屋に、普段出すことのない姫の笑い声が響き渡ります。


第1話、楽しんで頂けましたか?

この話を書くのは楽しいので、出来るだけ早く次話を掲載します。

どうぞ、よろしくお願いします。

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