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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
68/111

65、蜂の巣封鎖

 レックスさんとの相談で、今回入手した素材を皆で分配する事で丸く収めようと言う事に纏まり、実際にその方向で賛同を得られた。

因みに、僕達の取り分が一割と言うのは少ないのか多いのかは正直判らないが、言い出したのは僕だ。

前回の僕達が持ち帰った蟻の素材は、丸々僕達の収益になって居る。

あるに越した事は無いのかもしれないが、今回の蜂の分までどうしても必要なのかと考えて……今後は王国軍とも顔を合わせる機会が増える可能性を考慮し、友好的な知り合いを作れるならケチる方が損をする可能性が高い事からの決定だった。


 特に今回行動を共にしている部隊は冒険者が手におえない場合に派遣される事が多い為、今後は何かと一緒になる事が多くなるだろうし、上手く仲良くなっておけば僕達に手強い敵の討伐を手伝わせてくれるかもしれない。


 僕達の現在の目的は、とにかく強くなる事が第一だ。

素材は全て提供してでも強い敵と戦う機会を得られる事が今後は必要になる。

それがレベル40を超えた後の難しい条件の一つである為、レックスさんの様に色々と協力してくれそうな知人は、こちらとしても出来るだけ増やしておきたいタイプの人材ではあった。




◇ ◇ ◇




 蜂の巣周辺を調べるには人数が必要なので、二小隊十二人を残した全員で移動した。

巣のある場所は膝程度の高さに草が生えた少し開けた場所で、高さ五m程の大きな岩が数個だけまばらに点在している場所にあり、やや離れた場所に森が見える。


 日が暮れてからは蜂の行動が低下するのは間違い無さそうで、《暗視》により周囲を見回しても一匹も見つからなかった。

音に反応される可能性を否定できない為、《消音移動》を使いながら僕だけ入口に近づく。

巣の入口に迷宮を呼ぶ準備を整えてから中を少しだけ覗いた。

……思いっきり、昆虫の複眼と見つめ合ってしまった……。


 相手が動く前に、予定通りに迷宮を設置した。


「迷宮の設置、完了しました。中に蜂が居る事も確認出来ました。周囲の捜索をお願いします!」


僕の声に反応して全員が迷宮付近に集合する。

移動迷宮なんて普通は見る機会が無い為に、物珍しそうに見て居る隊員も相当数いた。


 僕とレックスさんの小隊だけで取り敢えず迷宮内部から様子を見る為にマスタールームへ迷宮の扉の裏から侵入し、ゲルボドとミラを加えた残りで周囲を調べていく。


 迷宮の中は中々に酷い状況だった。

蟻の巣を倒した時にはまだ出来なかったのだが、熟練度が上がった事により、マスタールームで使用できる《迷宮の主》の能力によって迷宮内の侵入者を階層と数で認識できる様になって居る。

僕達が迷宮を取得した老魔術師の迷宮でも途中から構造を変化させて邪魔して来たのは、こういった情報を知られて居た為だったのだろう。


 認識出来る蜂の数は百二十二匹……多すぎだろ……。

まぁ、巣をつついたら溢れ出して来るのは当然なのかもしれないけど。

これは少し落ち着くまで放置した方が良さそうだ。


 因みに、現在の僕の《迷宮の主》では、自分の迷宮内に生息する魔物の数は把握できていない。

《迷宮の虜》状態にしておけば配下の数は全て把握できるのだが、僕は一匹も使役して居ないので全く情報がないのだ。

老魔術師の迷宮では全てが《迷宮の虜》状態だったので、僕達の進行度合いなんかもそれで把握されていたのかもしれない。


 流石にこの状態では迷宮内に行く事は諦めて、外で捜索中のメンバーと合流する。

周囲は《光魔法》による照明で明るくなっていた。

今日はどの部隊もそれ程戦闘をしていないので余力があるらしく、ここぞとばかりに光の効果をばら撒いて相手の様子を窺いながらもこちらの探索を容易にする事に役立てている。


 ミルファさんに確認した所では蜂の出現は無く、他に出入り口らしき物はないようだ。

念の為に一時間程周囲の探索にかけたが、特に異常や変化は発見されなかった。


 僕は蜂の動向を確認する為にマスタールームへ戻り、今日の所は他の全員で野営地に戻って貰う事にした。

明日からは全体の半数が宿泊場所をマスタールームへ移動する事になって居るので、朝から荷物の移動を行う予定だ。

役割分担も明日の朝決めるとの事なので、こちらで蜂の動きを確認してから僕も向こうへ戻る方向でいる。

さて、ある程度蜂の動きを観察してから僕も今日は寝るとしましょうか。




 ◇ ◇ ◇




 迷宮内に居るので陽が出たかどうかは分からないのだが、いつもの様に目が覚めた。

迷宮を出てみると陽が昇りかけていたので、時間はいつも通りの様だ。

迷宮内部の動きを《迷宮の主》で確認すると、寝る前に納まって来ていた蜂の動きはそのままの様だ。

日が昇る時間辺りから動き出すとしたらそろそろ、温度で決めているのならば迷宮で封鎖されている関係で温度上昇は鈍いのでもう少し後になるだろう。


 僕にはそこまでハッキリとは感じられないのだが、魔法物質が既に低下を始めているはずなので、蟻の巣での事を考えると二~三日で動きが鈍くなると予想している。


 姉さんの魔素は魔法物質を濃密にした物なのだが、人体を平気で透過する。

その事から、魔法物質は途中に何があろうと透過するのではないかと僕は考えて居たのだが、どうやら人体は七割が水だと言う姉さんの前世の知識により解決した。


 水は光を通すが土は通さない。

姉さんの記憶から引用すると、放射線と言う物も同様に該当するだろう。

空気や水と比べ、金属や厚い物質では通過する線量が圧倒的に違うらしいのだ。

その密度の違いが魔法物質にもある程度は当てはまるらしく、今回の方法でほぼ密封が可能である事が蟻の巣で実践されている。

後は蟻同様に他の穴を開けないでいてくれれば良いのだが、そこは種族が違うので何とも言えなかった。


 蜂の強さも、数が少ない内に確かめておいた方が良いかな?

そう思って、迷宮内に蜂が四匹しかいない事を確認してからマスタールームから通じている小部屋経由で迷宮に入った。

扉を軽く開けて遠くから様子を見て居ると、三匹は魔獣の死体に集まって肉を剥ぎ取りながら肉団子を作って居る。

肉食の蜂だけあって、持ち帰る為に肉団子にして自分にくっ付けて移動するようだ。


 一匹だけ離れて獲物を探している奴が居たので、こいつをターゲットにして行動を開始する。

《アイテム》から弓と矢を出し、宙に浮かびながら獲物を物色している個体に弓を放った。

こちらに気が付いたらしく、何かの音を発しながらこちらへ向かってきた。

その音に気が付いた三匹の内一匹が、こちらへ向かい始めたが問題は無い。

最初の一匹が部屋に入った段階で扉を閉めて鍵をかけた。

これは《迷宮創造》スキルで鍵を設置し、《迷宮の主》の能力で自由に開け閉めできる。

鍵開け技能が無い蜂にどうこう出来る訳が無いのだ


 中に閉じ込めた蜂と対峙して、まずはレベルを確認する。

レベルは30、蟻と変わらない位だ。

こいつの特殊情報には《麻痺毒》《沈黙毒》《盲目毒》《分解毒》とあった。


 昨日の話だと、色々な毒の種類が居ると聞いていたが、実は一匹で全部持って居ると言う……。

継続ダメージの毒って言うのが《分解毒》だとすれば、完全に昨日の話と一致する。


 取り敢えず動きを確認する為に回避主体で行く。

もっとも、蜂の動きは僕と相性が良かった。

ブンブンと飛びながら攻撃してくるのだが、針に気を付けながらすれ違い様にはねを二枚程切り飛ばしたら飛べなくなった。

その後はもう雑魚だった。


 次に、扉の外で少しうるさくガシガシとやっているのが居るので、軽く扉を開けてみた。

その隙間に蜂の顔が一気に滑り込んできて、こちらを威嚇しながら扉をガシガシ噛んでいる。

しかし、残念ながら相手はそんな体勢だ……。

僕は片手でドアを押して蜂の身体を挟んだまま、片手剣でその首を刎ねた。


 音がしなくなったので、そっと扉を開いて外を覗くといまだに二匹は肉団子を作って居た。

折角なので一匹は剣の特殊能力の断裂攻撃で胴体を切り裂き、それに気が付いたもう一匹はドアに挟んで首を刎ねた。

うん、この方法、実は使えるかも。


 さて、皆と合流して今日の行動方針を聞いて来よう。

まだまだ王都へ戻れなく鳴ってしまっているが……先は見えてきた。

頑張って行きましょう。

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