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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第五章
110/111

105、王都迷宮二十層(1)

 目の前には怪鳥と呼べる程の巨大な姿をした魔物が居る。

《広視界(異世界)》の影響で普通ならば見えない位置に居る仲間の前衛陣も見えているのだが、左真横のゲルボドがその巨大なクチバシを受け流し、更にその左横にいるリアナが自分を鷲掴みにしようとして襲い掛かって来た鳥類特有の四本のあしゆびの内二本を切り捨てている。

リアナは更に追撃とばかりに剣を突き立て、爆炎を伴った魔素で強化された《技》を発動させる事で大ダメージを与えているのが見えた。


 【竜殺し】の称号を得る為の鍛錬の為、王都近郊の迷宮探索を再開して何日位潜っているだろうか?

僕達は現在、王都の迷宮二十層にいる。

ギルドや王城関係に残っている迷宮の最深攻略記録は二十一層である為、そろそろ公式での未到達階層に突入する事になる。

まぁ、あくまで公式な記録に残っている範囲というだけなので、本当に誰も行った事が無いかどうかは不明なのだが。


 ここまで来ると、他の冒険者の姿はまず無い。

実際に十六層より下では、他の冒険者を見かけていなかった。

それには当然ながら理由がある。

現在の階層だと敵のレベルは35を中心に上下3レベル程度の幅がある感じなのだが、一流と言われる中でも上位に数えられる35レベルに到達した複数パーティーの探索部隊ですら簡単に全滅する事も珍しくなく、安全に活動するためには達人クラスである40レベルの複数パーティーが必須とまで言われている。


 しかも、僕達の様にゲルボドの転移魔法や移動迷宮を呼び出して勝手に出入口を作ってしまうような常識はずれな事をしない限り、単純に往復で一~二ヶ月かかってしまう程のキツイ探索となるのだ。

当然それ程の期間迷宮に潜る以上、相当な荷物を持ち込む必要がある。

最低限の食料や水の確保が可能な状態は必須。

出来る限り薬品等も持ち込みたいし、武器のメンテナンスに必要な物も当然必要となるだろう。


 実際に二十一層にたどり着いた構成には、薬品不足を補う為に回復魔法が出来るメンバーを複数、破損した武具を再利用や入手した素材から加工出来るように職人系の知識を持った錬金術師を複数、更には原魔石を作る為に壁から削り取った素材を丸い石に加工する技術をメンバーに習得させたり、それを活用する為に魔石を様々な道具や魔法具に加工できる錬金術師を同行させたりもしたらしい。


 下手をすると二ヶ月もかかる探索だ。

迷宮内で手に入れた魔物の肉を利用しなくては絶対に食糧不足になるし、持ち込める水の量でどうにかなるはずも無い。

それを克服するため、魔石自体を徐々に燃焼させる事で木の枝や薪などが無くても火を確保する方法や、魔法物質で作成した水は魔法の効果が切れると同時に消える事から飲料水にできない為、空気中の水分を徐々に貯め込むための魔法具等が必須になる。

それらを維持・作成する事が出来なければ、強力な魔物が徘徊する迷宮を生き抜く事は出来ないであろう事は容易に想像できるので、非戦闘員である錬金術師も重要な役割を担っていた事は間違いないだろう。


 因みにその二十一層まで到達した際には参加人数の四割の脱落という事実と、持ち帰った素材の量的には見本品程度の物でしかなく、収支で言えば圧倒的なマイナスとなった事は言うまでも無い。

余談として、その見本品程度の品は本当にギルドで現在も見本品として保管されているとの事。

そんな訳で、当然被害甚大な事が確定の深部へ探索に向かうパーティーは皆無である為、収支的に十分納得できる十六層で一攫千金を狙って挑む位が、ここ数十年の定番となっていた。

以前二十層辺りで魔法物質を含んだアイアンゴーレムが出現するが安定供給は無理とは聞いていたのだが、確かに安定供給どころか時々でも無理だというのが正直な感想かな。


 そんな二十層を探索中の僕達は、現在は六人……僕、姉さん、ゲルボド、ミラ、リーナ、リアナで探索を行っていた。

当初の予定では僕の従魔達も一緒に連れて来る予定だったのだが、ミラとリアナの底上げを優先する方が良いとの意見もあり、現在は姉さんの従魔であるエグフォルドタイガーの集団と一緒にリーナの迷宮で暴れているはずだ。

レベル的に多少物足りないと思われるが、こちらで現れる敵のレベルがもう少し上がるまでは我慢して貰う方向で。


 そのおかげで現在のリアナには特にその成果がでており、姉さんに渡された魔送石から得られる魔素を使いこなしている為に恐ろしい程の実力を発揮し始めていた。

単純な身体能力は見た目からは想像できない程の膂力りょりょくや俊敏性を発揮し、元々《炎の結晶》由来の能力を得意としていた為か、魔法物質を炎の属性に変換して技に乗せる《爆炎剣》というスキルを新たに習得している。

しかも姉さんから送られてくる魔素を使用している為、その威力は凶悪といえる程の物となり、ここに至るまでの経験で更に熟練度も急上昇して技のバリエーションも豊富となっていた。


 因みに、武器に関してはそろそろ変更を考えているらしい。

今使用している物は耐熱と魔法物質の伝達に特化させたゴーレム産の鉄製らしいのだが、そろそろミスリルにでも……と言っていた。

僕の武器に関しては特に問題も要求も無い為に継続の方向なのだが、愛用のソードドラゴン素材を使った剣に変化が現れて来た事も変更しない要因となっている。


 元々ソードドラゴン素材から作った僕の剣は、特殊能力である断裂攻撃の為に魔法物質を伝達する事が容易な素材となっており、強度的にも下手な金属に負けては居なかった。

それでも使用する事で多少の磨耗や劣化は起こる為、いずれは破損してしまう事は覚悟していたのだが……姉さんから送られてくる魔素で断裂攻撃を行うようになってからは予想外の変化が起こるようになっていたのだ。

その変化とは、剣表面への魔素の沈着化……すなわち、磨耗や欠損部位すら補強した上で強化してしまうトンデモ仕様となっていると言う事だ。

残念ながらこの剣はリアナの爆炎系では剣自体にダメージが行くという相性の悪さがあったので僕だけが使っていたのだが、そういった都合により予備も含めて僕が大事に使っていく予定となっている。


 次にミラに関してだが、こちらも中々の成長となっていた。

リアナの《爆炎剣》に触発されたのか、風属性を付与して矢に様々な影響を与える《操風弓》というスキルを覚えたらしく、矢に風を纏わせて飛距離を伸ばしたり軌道を変化させることから始まり、螺旋状の風の刃を先端付近に発生させる事で貫通力を増したり、刺さった途端に四方八方へ小さな風の刃を撒き散らす追加効果を与えられるようになってきた。

まぁ、一番衝撃だったのは、弓を使わずに矢自体を投げて目標に向かって追尾させる《ホーミングアロー》だろう。


「それ、もはや《操風弓》スキルと言うには弓が関係無いんじゃない?」


という姉さんの突っ込みが、今でも忘れられないのだ!


 そんな感じで魔法以外の風属性スキルを手に入れたのだが、それを使う事で《自然魔法:風魔法》も多少ではあるが熟練度が増していくらしく、それを自覚してからは《魔術師魔法(異世界)》の属性を持った物を使用した際にも対応した自然魔法の熟練も増していくようになった様だ。


「熟練度っていう位だから、武器での戦闘なんかと違って魔法なんかは本人の意識の中で応用できる経験として生かせるなら連動して上がるのかもね~」


という姉さんからの適当な予想は貰ったのだが、詳しい事は分かっていない。

僕の場合は技を使用する際に必要なSPの大半をステップ系の技で使ってしまうから……まぁ、そのうち余裕が出来る事があったら考えよう!

因みに《簒奪の聖眼》によって《爆炎剣》も《操風弓》も使用可能になっている。

おそらく使う機会は無いけどね!!

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