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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
108/111

104、準備終了

 余裕を持つと言う姉さんの言葉通り、帰って来てから十日が過ぎていた。

明日から王都の迷宮探索を行うとの連絡は受けているので、今日でこのゆったりとした生活は終了となる訳だが、十分に満足がいく休憩期間だったと言える。


 領主様をはじめとしたエルナリア領主館の方達はエルナリアへ戻っており、必然的にお嬢様はミルロード邸での生活を再開している為、学院から戻られる時間までレックスさん達と一緒にアイアンゴーレムを狩りまくり、戻って来てからは毎日お茶を飲みながらお話をしたり、王都の中での散策だけではなく、迷宮経由で僕の生家がある故郷の村に行ったりもしていた。

故郷の村は魔物がほとんど居ない安全地帯なので、安心して連れて行けるからだ。


 領主様が戻った事もあり、居ない間も準備を整えていた迷宮公開が間近となっているらしく、エルナリア領の方は大忙しの毎日の様だ。

因みにその話は領主様のお抱えとなっている、僕も色々とお世話になった冒険者のライルさん達からも聞いていた。

彼らの仕事は公開前の下調べとして、他のお抱え冒険者と一緒に上の階から順次攻略して迷宮の様子を調べていたらしい。


 危険を考慮して三層までクリアして探索自体は終了し、現在は実力の底上げを兼ねて迷宮の魔物相手に素材稼ぎをしているとの事。

迷宮公開と同時にレックスさん達のアイアンゴーレム素材と一緒に王都で売却し、冒険者達にその旨味をアピールするらしい。


 公開する迷宮の魔物は半数以上がこの大陸ではほぼ見かけないもので揃えてある為、上手くいけば単純な使用目的だけではなく、他国への転売目的の商人が大勢来るのではないかと期待しているとの事。

国の中枢以外へ売ると不味い素材が無いかは、王国に迷宮の報告をした後で担当が送られて一年程かけて行われるそうだ。

もっとも、攻略が進まない迷宮はそのまま担当が常時置かれる事になるそうだが。


 担当が居る事のメリットとデメリットは幾つかあるらしいのだが、一番のメリットは国の判断を仰ぎたい事例に対応しやすい事。

デメリットは迷宮からの素材の持ち出しが滞りやすいという事だろう。


 滞りやすい理由は簡単で、迷宮出口で担当が全ての品を一度鑑定系のスキルで調べ、その品質の誤差等を調べていく。

同じ魔物でも、レベルが違うと素材の質が違うのだから当然とも言える。

いい例としては、アイアンゴーレム素材が魔法物質の含有量で高品質な製作品の素材に適するかどうかが決まる等といった感じになる。

同様に皮や牙、骨等といった素材にも質の差は現れてくるのだ。


 当然、担当と信用が出来る少人数だけで行われるこの作業は数が増えるほど時間がかかる訳で、冒険者の数が少ない初期ならそれ程でもないが、ある程度軌道に乗って来た頃に問題となる恒例行事なのだそうだ。

それならば人数を増やせば? とも思えるのだが、鑑定系スキル持ちの中でも詳細な情報を得られる人員だけしか資格がなく、ある程度の頻度で二重にチェックをする事もあるとなれば……作業が遅くなるのは当然と言えるであろう。


 まぁ、開放する迷宮は通行証さえ得られれば六層までは直通の階段から入れる為、七層全てが一年もあれば攻略されるはず。

王都から離れたエルナリア領ならば本来担当者が常時居てくれた方が色々と良いはずなのだが、もし何かあってもこちらから限られた数人ではあるが迷宮経由で王都へ行く事が出来るのでその必要も無い。

因みに、エルナリア邸から固定迷宮経由でミルロード邸に繋がるルートだけを領主様、右腕的な立ち位置の老執事さん、姉さんの師匠であるクレリアさんに加え、お嬢様付きのメイドであるルルさんの父親とラナさんの両親にも許可してある。


 ルルさんとラナさんの家族に関しては、お嬢様がこれから度々エルナリア邸に戻る事を考えて教える事にした。

王都に居るはずなのに何故か戻って来る娘に事情を聴くなと言うのも酷であるため、知っている人以外には話さない事を条件に教えている。

もっとも、迷宮の主が僕である事等の詳しい情報は非公開とし、迷宮利用する方法が見つかったとだけ伝えてある感じだ。

まぁ、仮の屋敷へ移動する際に目隠しとゴーレムに乗って移動したとはいえ、王都へ行く何らかの手段がある事はエルナリア邸に勤める全員が理解しているんだけどね。


 移動手段がある事は理解していても、それが常時利用可能なのかどうかやどの様な利用方法なのかは理解していないので、そうそう完全な事実がバレる事は無い……ハズ!

国王様を含む特定の王家関係には知られている訳だし、バレても問題は無いっちゃ無いしね。




 ◇ ◇ ◇




 遂に、王都にある迷宮探索を再開する日がやってきた!

この迷宮は以前に多少探索していたことがあり、ゲルボドの魔法には迷宮内で行った事がある場所になら転移出来る便利な物がある為、そこから再開する予定だ。

まぁ、実際には行った事がある場所の座標を調べる魔法で位置を確認しておき、その座標に飛ぶ事で転移している為、行った事が無い場所にも飛ぶ事自体はできるらしい。


「間違うと、壁の中に埋まって死ぬシャ――――!」


と言うゲルボドの説明もあり、姉さんによって絶対やらない様に釘を刺されていた。


 そこで怖かったのは座標の間違いなのだが、行った事がある場所ならばそのままの名前である《座標》という魔法で確認する事ができるらしく、間違える事はまずないとの事。


 もっとも、


「他の冒険者が到達する階層まではそれを使うけど、人が来ない階層に行ったら移動迷宮を呼び出して出入りする方向で」


と言っていたので、姉さんでも多少は不安に思う所があったのかもしてない。

どっちにしても王都の迷宮までは移動迷宮経由で行くので、単純に面倒だからと言う可能性もあるけどね。




 ◇ ◇ ◇




 王女様改め、リアナの準備も整い、遂に【竜殺し】となる為の挑戦が再開される事になった。

そのメンバー構成は、正直な所……大半の人に普通ではないと断言されてしまう偏ったものになっている。


 片手剣と盾装備の前衛が三人。

格闘術と魔法で戦う遊撃が二人。

弓使いが一人。

そのうち、前衛の一人以外が魔法を使える良く言えば万能型のパーティー、悪く言えば武器も偏った中途半端なパーティーと言われるだろう。


 もっとも、その内実は明らかに違う。

前衛は身体強化に特化した者、魔法が瞬間発動可能な魔法剣士、詠唱が必要とはいえ複数属性の広範囲魔法を使いこなす魔法剣士。

遊撃の二人は更に凶悪な身体強化を行って攻撃し、無尽蔵とも思える魔法で攻撃・サポート・回復を担う。


「普通に役立つはずの、弓使いの存在が霞んでしまう程の酷い構成だ……」


と、某レックスさんが言うほどであった。


 因みに、弓使いとしては若干霞んでしまっているミラなのだが、ゲルボドから受け継いだ各種異世界魔法がMPではなく各魔法の回数制である事から幅広く使いまくる上、練習によって身に付けたこの世界の魔法も使いこなす超万能タイプとなってサポートしてくれている。

このパーティーだから霞むだけで、本来ならば恐ろしく有能と言われるであろう実力者になっていた。


 もっとも、この世界における最強の一角、竜を倒す為にはその実力でも全く足りない。

もちろん、当然他のメンバーもだ。


 それを成し遂げる為……僕達は迷宮に潜り、更なる実力を身に付ける!

それこそ、人の限界と言われるレベルすら超えて!!

そう、僕の……僕達の本当の戦いはこれから始まるのだ!!!

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