旦那さん見てるー？

　はあ、はあ……どう？　旦那さん、見てるー？　ああ、まずは挨拶だよね。初めまして――まあ、僕はずっと前から旦那さんのことをよおく知ってたよ。旦那さんのいないときに何度もお宅にお邪魔してたからね。

　リビングの白いカーペット、あれ、僕が選んだんだよ。奥さんが『これに替えたい』って言って、画像を見せたやつ。前のは、横になると背中が痛くなっちゃうんだよね。シミも目立ってきてたしさ。ふふっ、奥さんから、たーっぷり出たアレのシミね。

　ああっ、言い忘れてた。旦那さんがこのDVDを見てるってことは、奥さんはもうあなたのところへ戻らないということだよ。

　そう。どうも、間男です。ふふふっ。いやあ、ドキドキするなあ。こうして旦那さんに直接挨拶する日が来るなんて。旦那さんも今、ドキドキしてるんじゃない？　

　ところで旦那さん、カレーが好きなんだってね。奥さんから聞いたよ。毎回鍋が空っぽになるくらい食べちゃうんだって？　奥さん、『子供っぽい』って笑ってたよ。ほんとかわいいよね。

　はあ、はあ……ほら、この動画を見てよ。わかる？　この鍋、見覚えない？　それと床も。そう、お宅のキッチンと鍋だよ。中身は旦那さんの大好物、カレー。奥さんと二人で作ってるところだよ。仕上げに隠し味を入れて、よく混ぜるんだけど……ふふふっ、奥さんの唾液たっぷりの口、すっごくよかったよお。じゃあ少し早送りするね。はあ、はあ、あああ、ほら！　たっぷりと入ったでしょ。奥さんの唾液と一緒に、僕のがさあ。

　ふふふ、こっちの動画も見て。旦那さんが、僕たちの特製カレーをおいしそうに食べるところ。奥さんが隠し撮りしてたんだよ。子供みたいにがっついてるね。ふふふ。無邪気に「おいしい、おいしい！」って言いながら食べてる旦那さんを想像すると、すごく興奮して、毎回たっぷり出ちゃうんだ。

　ああ！　それからこれも見て！　ハンバーグ！　旦那さん、好きなんでしょ。奥さんがひき肉と一緒に僕のをコネてくれて、あはっ、声が入っちゃってるね。生肉って冷たくて気持ちいいんだよ。玉ねぎがちょっと沁みちゃうけど、僕はエムだから大丈夫。それに、旦那さんが僕の精子マゼマゼハンバーグをうれしそうに食べてくれると思うと……ああっ。たっぷり溜めててよかったなあ。

　それからこっちの動画は……ああ、リビングでヤッてるだけだね。ああ、でもこっちの動画はソファでヤッてるところだ。旦那さん、いつもここに座ってテレビを見てるよね。ひょっとして今もそこに座って、この映像を見てるんじゃない？　うふふ、僕たちの場所でね。あとは奥さんの部屋のベッドで――まあ、これもつまらないね。ああ、旦那さんのベッドでもヤッたんだよ。気づかなかった？　僕と旦那さんって匂いが似てるのかもね。

　あとは、そうだなあ……ああ、これは奥さんが僕の精子を旦那さんのコーヒーに混ぜてるところだね。どう、おいしかった？

　でも、僕が頼んだわけじゃないよ。奥さんがノリノリでさ。奥さんは飲むだけじゃなくて、飲ませるのも好きみたい。よく、旦那さんのことを笑ってたよ。『あのバカ、全然気づかないの！』って。

　かわいいよねえ。奥さんが浮気してることに全然気づかずに、毎日一生懸命働いてプレゼント買って、それで照れた顔で『好きだよ』って言ったんだって？　あははは！　旦那さんの名前を口にしながらヤッたときは興奮したなあ。まあ、奥さんは嫌がってたけどね。僕のことだけ感じていたいってさ。

　ほんとかわいいよねえ……旦那さん。純粋でさ。

　それに比べて、奥さんはなんて醜いんだろう。こんなに純粋な旦那さんを裏切るだけじゃなくて、バカ呼ばわりするなんてさあ！　ほんと醜いよ……。どんどん嫌になっちゃってね。でも、旦那さんは……ああっ、ふふふふふ。

　今から旦那さんにカレーを作ってあげるね。あっ、といっても、この映像を見てる頃には食べ終わってるかな？　ねえ、どうだった？　今日のカレー、おいしかった？　きっと、すごく喜んだんじゃないかなあ。『やった！　ハンバーグカレーだ！』って。

　肉はたっぷり余ると思うから、これからも食べさせてあげたいな。

　ふふ……じゃあ、見ててね。まずはバラバラにするところから。はあはあ……ほら、旦那さん、ちゃんと見てる？　これ、誰だと思う？　もっとよく見て。はあ、はあ、はああ！　はあ！　ねえ、ちゃんと見てる!?　はあ、はあ、旦那さん！　ほら、もっとよく見て！　ふふふふっ！　見てよ！　はあ、はあ、はあ！　見て……後ろを。

「やっと会えたね」