第4話
イスミが留学生としてやってきて一月が経った頃。中等部に進学してからの初めての魔物討伐の実習を明日に控えていた。
「楽しみだな!魔物討伐。まぁ俺たちはちょくちょく行ってるけど」
「ミーナ様のストレス発散の付き合いですけどね」
「だな!それよりもソラお前、菓子買いに来てないみたいだけど会いに行かなくていいのか?」
「うん、まだ忙しいから会えないって連絡もらったよ。なんかバタバタしてるみたい」
「そうなのか、大変だな王女様って」
「ソラって王族なの?」
「違うよ?なんで?」
「だってミーナ様ってこの国の王女殿下でしょ?なんでソラが会いに行くのかなって思ってさ」
最近は俺たちいつものメンバーにイスミが加わり、仲良くしている。
「そっか、イスミは知らないのか。こいつと王女様は婚約してるんだぜ」
「・・・え?そうなの?」
「うん、成り行きでね。でも、話していると意外と可愛かったりするんだよ」
「それよりもですよ、明日の魔物討伐の実習はこのメンバーでいいですか?」
「俺は構わないぜ。イスミはどうする?」
「魔物討伐の実習って具体的に何するの?」
「そうでした!イスミくんは知らないんでしたね。ボクが説明しますよ」
魔物討伐の実習それは年に1回行われており、それぞれ1年間学んできた武器や魔法を使いより多くの魔物を討伐するのが目的な実習。この実習の真の目的は、エルフ種は人間や獣人と比べて筋力が弱い。昔は奴隷商に捕まるエルフが多かった。今後そうならないためにも小さいうちから強く育てていくという目的があった。
「ふーん、そうなんだ」
「イスミはどうする?俺たちと組むか?」
「この学園にはさ、ソラ以外のハイエルフはいるの?」
「いないよ、僕だけ。どうしてそんな事聞くの?」
「いや、気になっただけだよ。ソラ以外に見た事無かったから」
「そんなのはどうでもいいんだよ、組むのか?組まないのか?」
「いいよ、一緒にやろ。実習って屋外だよね?先生の付き添いとかあるの?」
「よっしゃあ!!!先生の付き添い?ないぞそんなの」
「まぁ申請したら付き添いがあると聞いたことがあります。王女様の場合は先生が付き添った見たいですけど、基本的にはボク達の実力を知るための実習ですからね」
「なるほど、ありがとう。今日用事があるから先に帰るね」
イスミは俺たちにまた明日っと言って帰って行った。
「なんだ、あいつ今日はやけに早いな」
「家の用事でしょうか?」
「まぁなんでもいいんじゃない?それよりも明日が楽しみだね」
「そうだな、最近は行けてないしな。ミーナのバタバタが落ち着いたら行こーぜ」
「それもいいですね、きっと王女様ストレス溜まってますよ」
「そうかもしれないね、発散の前に僕呼ばれるかもしれないけど」
「まぁ、それに関しては仕方の無いことだ、この国では
ハイエルフしか王様になれないんだからよ」
「僕は形だけだと思うけどね、国を動かすなんて無理無理」
イスミが帰ったあと少し雑談をしてから、俺たちは学園を出た。家に着いた時にセバスさんがやってきた。
「お久しぶりです。ソラ様。王女殿下から言伝を預かってきました。『次の学園が休みの日に会いましょう』との事です。では、私はこれで失礼致します」
セバスさんはそれだを言うと城に帰っていった。
「次の休みか、あっ!お菓子買っていかないといけないな、多分楽しみにしてるだろうし」
「ソラ?誰か来ていたの?」
「うん、セバスさん。次の休みに会いましょって言われた」
「あらあら、ソラ楽しそうね」
「え?そうかな?」
「そうよ、最初の頃は慌ててたりしてたもの」
「そう言えばそうかもしれない。僕楽しみなんだ」
「さぁ、荷物置いて手を洗ってらっしゃい、ご飯にしましょ」
「父さんは?」
「パパなら今日遅くなるって連絡あったわ、寂しいけど、お仕事ですもの仕方ないわ」
そう言っていた母親の顔は悲しそうだった。
夕飯を食べ終えた後は明日の討伐実習の為に、色々と準備をしている時に母親がやってきた。
「ソラ、明日はお弁当だったわよね?」
「うん!お弁当だよ、母さんのご飯美味しいから楽しみ」
「まぁ!だったら明日は腕によりをかけて作るわね」
「うん、楽しみにしてるね」
「えーと、一応ナイフとか持っていくかいつもはミトが持っていくけど、たまにはね」
事件に巻き込まれるとはこの時の俺は全く思ってもみなかった。
翌朝昨夜のうちに準備していた荷物に、母親が作ってくれた弁当を加え俺は家を出た。
「実習先のエルフの森までは、歩いて行かないといけないから大変なんだよな」
「よぉ!ソラおはよー!」
「カイト、おはよう。朝から元気いっぱいだね」
「まぁーな、今日この日が楽しみで仕方ないからな」
「ミトは?」
「ミトならイスミ迎えに行ってると思うぜ、イスミは場所分からないと思うって、昨日帰りにミトが言ってたからな」
「あっ!そうだったね、イスミ大丈夫かな?もしかして学園に行ってるって事ないよね?」
「それは大丈夫だろ、先生も当日は現地集合って言ってたしな」
カイトと話しながら歩いて、エルフの森に着いてしばらくするとミトとイスミがやってきた。
「ここにいたんですね、探しましたよ」
「水の案内で探せばよかったのに」
「ボクはソラくんと違って多種多様な魔法は使えません」
この世界に存在している魔法は火系統、水系統、風系統、土系統、光系統、闇系統、無系統の7系統がある。
魔法は便利だが大抵は一人一つの魔法しか使えない。しかも種族によって偏りがある。
人間は火系統や無系統を得意としており、獣人は水系統と土系統、エルフ種は風系統と光系統を得意としている。闇系統は稀に持って生まれるものもいる。
「確かに、ソラはいいよな全部の魔法が使えてさ」
「全部使えたとしても使うのって限られているから」
「それもそうか、森で火事を起こされても困るもんな」
「ハイエルフだから全部の魔法が使えるの?」
「うーん、違うと思う。母さんや父さんに聞いてみたけど、使えないって言ってたし、王女様も使えないって言ってたから、今のところ僕だけかな使えるの」
「便利だよな、水の心配をしなくてもいいから他の班と比べて荷物が少ない」
「流石に水筒くらいは持ってきてよ」
話し込んでいると、先生がやってきて生徒たちが1箇所に集まりだした。
「さて、皆さん今年も魔物討伐実習が始まりました。今年はイスミくんがいますが、今まで学んできた事を思い出しながら真剣に取り組んでください。それと、毎年言っていますが、ほかの班の妨害や危険な行為は決して行わないこといいですね?もし怪我をした時は教えた魔法を使って下さい。先生たちが駆けつけますので、それでは実習を始めます」
先生の有難い話を聞いて、ゾロゾロと動き始める。
「よし!今年も俺たちが1位を取るぜ!」
「順位もあるの?」
「ありますよ、魔物の討伐数や採取とかでも点が加算されますね」
「1番珍しい魔物を討伐すれば、点数高いんだぜ!前衛は俺がいるし、魔法はソラが居る!ミトはなんでも出来るし、知識量も半端ない」
「バランスがいいんだよね、僕たちの班」
「そうですね、今年はイスミくんもいますし、間違いなくボクらが一位ですね」
「そう言えば、先生が怪我をした時に魔法を使ってくださいって言ってたけどどんな魔法?」
「風系統の魔法ですよ、イスミくんは火系統か無系統でしたよね?」
「うん、僕は無系統が得意だよ」
「無系統と言えば!身体強化だな!俺身体強化の魔法使いたかった」
話しながら森を歩き、魔物を見つけては倒して素材を剥ぎ取る。闇系統の空間魔法が使えると荷物が増えなくて助かる。
「だいぶ奥まで来てしまいましたね、引き返しましょう」
「それもそうだな、戻りながら魔物を倒していこうぜ」
「ボクとしては珍しい植物や鉱物がないか探したいですね」
「花や石なんていいだろ、ここはやっぱり魔物だろ!」
森の奥まで来てしまった俺たちは引き返すべく踵を返し、森の入口まで戻ろうとしたその時、木の影から人間が現れた。
「なんだ、お前ら!」
「カイトくん、彼らを刺激しない方がいいと思います。見てください彼らの装備品を」
「そう、動かない方が身のためだよ」
お読み下さりありがとうございます。
頑張って続けていきたいと思います。
誤字脱字を見つけたら教えて下さい、なるべくないようにしておりますが。




