弟子入り
リンは竹の細い芯に糸をくるくると巻き終えてカゴに仕舞うと、スイに尋ねました。
「この糸を作って、それからどう使いますか?」
「傘お化けの傘を直すのに使います」
傘お化けは横でそれを聞いていて、喜びを隠しきれずにくるくると舞い踊ります。
「やったー!」
「ちょっと、滴が飛ぶから!」
「ならば、丈夫な糸にしなければ。数百年使っても切れないような」
それからスイは『雨の糸』を教えてもらう間だけ、仙人のリンに弟子入りすることになりました。
「細く柔らかく紡げば、布を織ることが出来ます。私がよく紡ぐのは、そういう糸です。雨は水、すなわちその性質によって火が燃え移ることはありませんが、長く火の中にあれば、やがて蒸発してしまうでしょう」
「はい」
「この技術は仙力を得て初めて習得されるもの。早くて数年、長くて数十年はかかるでしょう」
「え……」
まさか、そんなに時間がかかると思っていなかったスイは目を丸くしましたが、元よりあやかし者になってから歳もろくにとりませんし、年月などあって無いものということを思い出しました。
「それでも、学びますか?」
「はい、お願いします」
新しいことを学ぶのは、久しぶりのことです。どきどきと緊張しながらも、この技術を応用したら、もっと色々なことが出来るようになるかも知れないと期待もしていました。
「おれは、その間暇だなあ。ちょっとその辺をぶらぶらしてくるや」
傘お化けは、ピョンピョンと片足で跳んで行き、やがて拡げた傘に風を受けて舞い上がりました。そのまま、空の彼方に見えなくなりましたので、スイは、彼がここへ戻って来られるか心配になります。
しかし、何年か経った後、傘お化けはちゃんと帰ってきました。――その他大勢を引き連れて。
まるで、ガラクタ蚤の市、もしくは豆百鬼夜行。
「エヘヘ、類は友を呼ぶってか?」
「落とし物に、忘れ物、小さいあやかし者、興味本位で加わった子狸、迷子――ちょっと待て、人の子が混じっているんだけど」
百鬼夜行の最後尾に、なに食わぬ顔をして並んでいたのは、妖気を持たない明らかに人の幼子でした。




