雨を紡ぐ
後書きに挿し絵があります
まず折れた傘の骨を直す為に、材料の竹を採りに行くことにしました。
頭の中に竹林を思い描いて『淡い』の扉を開くと、すでに目の前にはさやさやと風そよぐ緑の竹林の直中でした。
山の中腹らしく、今は薄く霧が漂い世界は朧気に見えます。樹雨が葉から滴り落ち、一人の黒い着物の女がしなやかに両手の指先を使い、雨を紡いで糸にしていました。
気配に気がついたのか振り向いて、切れ長の眼差しと目が合います。
「お早うございます、ぼくは、雨降り小僧のスイです。あなたは、雨女なんですか?」
女は糸を紡ぎながら答えます。
「私は仙人のリンです。これは、仙術の一種なのですよ。スイさんは、雨師さまにお仕えする方ですね」
「それは、雲の中に居た頃の話です。人として生まれてからは、めっきりお会いすることがなくなってしまったんです」
「あら、スイさんは人なのですか? てっきり私、あやかし者と思いましたけれど」
雨を紡ぐ技術を教えてほしいと頼みますと、仙人のリンは代わりに雨師さまや雲の中のことなどを教えてほしいと言いましたので、スイはそれくらいならと頷きました。
傘お化けは雰囲気に呑まれたのか黙り込んで微動だにせず、まるでただの壊れた傘のようです。
スイは昔のことを思い出そうとしながらぽつぽつと語りました。
沢山のことを思い返すうちに、スイは雨が怖いと思いながらも、雨の音を聞くと心が落ち着くので嫌いにはなりきれないことに気がつきました。全ては昔、空の上できょうだいだったのです。
リンは、透明な雨の糸を紡ぎながら静かに話に聞き入っていました。




