乾天の慈雨
スイはボロボロの和傘を拾いました。
真っ青な空が広がり太陽がじりじりと照りつけてきて、汗がだらだらと垂れてきますから、日傘に丁度良いとそれを差しました。
あちこち穴が開いて骨もなん本か折れていますが、何も差さないよりは大分ましです。
足元の大地は乾燥してひび割れ、草の先も元気を無くして萎れかけ、生暖かい風に幽鬼のように揺れていました。
傘を差しながらぶらぶらと歩いて行きますと、里芋畑で小さな男の子と手拭いを姉さんかぶりにした腰の曲がったお婆さんが畑を見ています。
「降らねぇなあ、里芋の水がたりねぇべ。こんなに葉が萎れちまって」
緑のまだ残る大きな葉の茎に、色褪せたしわくちゃの葉がミイラみたいになって、カラカラと砂ぼこりの混じった風に吹かれて纏わりついていました。
「お婆ちゃん、おれ、雨ってどういう感じか忘れてしまったみたいだ」
近くの川の水位もとても低く、不安そうに二人は天を眩しそうに見上げましたから、スイはしばらくここに居ることにしました。
道の真ん中でミミズが干からびて死んでいます。
次の日、とうとう雨が降りました。こぬか雨がさらさらとふり、乾いた大地を潤していきます。
「雨って、こんなに綺麗だったんだね」
男の子が、じっと空を見上げて嬉しそうに呟きました。こっそりその様子を見ていたスイに、傘は言いました。
「良かったな、俺も雨で本領が発揮出来るってことよ。さあ、次はどこへ行く?」
「わあ、しゃべった」
「カカカ! どうだ、驚いたか?」
「まあ、いいや。一緒に行こう」




