霜柱
足の裏からみしみしと、霜柱の背伸びする気配がします。
スイは夜も明けやらぬ薄暗い道の端に踏み出そうとした片足をそっと引き上げて、もう片方の下駄の隣に揃えました。
地面に頭を近づけて耳を澄ませますと、キンキンに冷えた囁き声が微かに聴こえてきました。
「集まれ、集まれ」
「伸びろ、伸びろ」
「もっと高く」
「氷の神殿を造ろう」
「がんばれ、がんばれ」
「寒いよ、冷たいよ」
「まだ眠いよ……」
聴いているうちに気の毒に思えてきました。
触れれば簡単に折れてしまいそうな氷の神殿の柱が土の天井を押し上げていきます。少しずつ、少しずつ――。それを、黙って見守っているうちに、辺りが明るくなり始め、それに連れて地面がキラキラと輝きを増していきました。
透き通る幾千もの柱を有する美しい神殿が出来上がったのです。
「空の神殿にも負けない、素晴らしい柱が出来たね。みんな、すごいや」
頑張ったね。と、白い息と共に氷の子供たちに労いの言葉をかけると、きらり、きらりと誇らしげな輝きが返ってきました。
こんなに見事な神殿が誰かに踏まれてしまうところを見たくはなくて、名残惜しく思いながらも立ち上がりました。ずっとしゃがんでいたせいで足が痺れてじんとしましたし、足首がパキリとなりました。手がかじかんで指先が赤くなっています。
「うう、寒い」
あやかし者なのに、妙に人間らしい仕草で袖に冷えた両手を入れて脇に挟みながら、ふと空を見上げました。
金色の空に茜色の雲が浮かんでいます。一晩中空を巡っていたはずの星は一つも居なくなっていました。その代わりのように煌めく地上に視線を落とし、ふと思いました。もしかしたら、疲れた星たちはいつの間にか霜柱の神殿に降りてきて、静かに休んでいるのかもしれないな、と。




