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崖の上の寺
岩山を登り続けるうちにとうとうお寺の屋根が見えてきて、やがて、苔むした小さなお堂の全体が現れました。今もなお、岩の上にしっかりと建っています。
いつの間にか雨が止み、眩しい光が差してきました。振り返ると、足元の崖に雨雲が蟠っています。
スイは、雨雲の上に出たのです。
「彩、雲の中には誰もいなかったよ」
「残念だったな」
「でも、懐かしい声がたくさん聞こえた気がした。きっと、きょうだいたちだよ」
「ふーん、俺は、何も聞こえなかったな。スイだからこそ、聞こえたんだろう。……おまえ、もしかして帰りたくなったのか?」
「いいや、僕はまだ、見たい景色が沢山あるからね。こうやって、きょうだいたちに会おうと思えば会えることがわかったから、十分さ」
「雨師さまには?」
「もっともっと、沢山お土産話を仕入れてから、会いに行くよ」
それが楽しみになったんだ、と、スイは泥だらけの顔で笑いました。




