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第十一話 子狸

 こちらが巻き込んでしまったようなのに、お礼を頂くなんて申し訳ないなと思いながらも、スイは有り難く受け取りました。

 その美しい和紙は光を通しつつも破れにくそうで、繊維が不思議な模様を描いています。

 一旦傘お化けに預けて、子狸に向き直りました。


「きみは、一匹で遊んでいたんだね。それで、親の狸と狐が化かしあいを始めてしまって、巻き込まれないように逃げてきた。そうしたら、なにやら面白い行列が行くので、気になって付いてきたということで合っている?」


「キュウ」


 どうやら、合っているようです。


「師匠、今度は僕が行きます。棲みかはすずちゃんの家の近くらしいのでもう一度ご足労頂くには忍びありませんから」


「お気をつけなさい。化かしあいに巻き込まれると、どうなるか分かりませんよ。間違って川に入ったり、毒キノコを食べさせられるかもしれません。武士に化けた者同士の戦いに巻き込まれるやも」


「十分気をつけますよ」


「何かあれば、私を呼びなさい。これを。移動の札です」


 彼女は文字の書かれた札を三枚手渡しました。行きと帰り、そして師匠を呼ぶ用だと説明されました。

 スイはなるべく師匠は呼ばないように、自分だけで解決しようと決めました。


 さて、子狸を抱いて行きの札を妖力の火で燃やすと、たちまち、辺りの景色が一変しました。見覚えのある山や崖や森。向こうの開けた場所には桧皮葺(ひわだぶき)の屋根が数件分見えました。

 もう辺りは山の影で薄闇に包まれており、蛙たちが大合唱をしています。子狸はピョイと腕から飛び出してどこかへ駆けて行きました。親の所へ帰ったのだろうかと考えていると、直ぐに駆け戻って来てスイの胸に飛び込みました。咄嗟に抱き抱えると、子狸は丸くなってガタガタと震えています。

 急に蛙の声が止みました。

 異様な気配に神経を尖らせて、たった今子狸が逃げてきた方向を睨み付けていると、ガサガサと梢を掻き分けてぬうっと巨大な骸骨が姿を現したのです。



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