【学園生活スタートです…!①】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「ふぅ…」
校長室から出たミリアは長いローブを纏い、ちょうど授業の休み時間だった事もあり図書室へ行き一息つく事にした。
「まさか、こんな事になるとはなぁ…」
想像を超える、実に何とも言えない感情がミリアに重くのしかかる。
「それにしても、本当に豪華な学校だな…」
とぼとぼと歩くこの『ノヴァウィル学園魔法学校』略して『ノヴァル魔法学校』の廊下は純白な大理石で出来ていて、さらに真っ赤ではない、高級感のある落ち着いた赤色の絨毯が敷かれていた。
さらに壁に目を向けると、これまたお洒落な壁掛けのキャンドルホルダーが等間隔に飾ってあり、一つのキャンドルホルダーに三つもキャンドルがあるので、その炎は明るさ以外に煌びやかさも放っているように見えてくる。
そして、キャンドルホルダーの間にある大きな窓は長方形で、やや上の方が半円のように丸みを帯びていた。その窓からは、わたあめのように真っ白でふわふわの雲が見えた。……下に。
「く、雲が下に見える…」
どこまで凄いんだこの学校は…。と思ったミリアは驚きを通り越して、もはや呆れるという感情までに届きそうだった。
「や、やっと図書室に着いた…」
『やっと』というのは、別に図書室が遠かったとか、(確かに近くもなかったが)途中で道に迷ったとかではない。
図書室に来るまでの、廊下ですれ違った他の生徒からの明らかに『注目されている感』に疲れただけなのだ。
理由は至って単純。この『長い』ローブを身につけているから。ただそれだけで注目を浴びているのなら、アストラルは皆の憧れなのかもしれない。
もしそうだったら、大多数の人は胸を張って堂々と歩くでしょう。しかし、ミリアがその大多数の中に入っている訳などあるはずがなかった。
ミリアは図書室の扉を開け、中に入った。
図書室はとても広くて天井も高く、窓からは日の光が入ってきて開放感があった。壁は大図書館のように落ち着いたアンティーク調の茶色の木製本棚がずーっと奥まで続いていた。それ故に、本の数も数え切れない程で独特の迫力感満載だった。
その迫力感の手助けをしているように高い天井からは茶色を基調とした図書室の雰囲気に合うよう、淡いゴールドカラーのシャンデリアも掛けられていて、思わず見とれてしまいそうになる。
席の数も十分過ぎる程で座れなくなる、という事はほぼほぼ無いだろう。
「何か面白そうな本はあるかな…」
ミリアは、一部は天井まである本棚を見てまわる。天井まであるといっても、きちんと階段があり三階分まで段になっているので全ての本がきちんと取れるようになっていて安心した。
本棚を見てまわるミリアの目に、一冊の本が目に止まった。
「基礎魔法の呪文集…?」
『これはいい…!』とミリアは思った。なにせ、上級クラスの生徒だというのに基礎魔法の呪文一つさえ知らないからだ。
本を抱え、机に向かおうと歩き出したその時『ドンッ』という音をたてて本が床に落ちてしまった。表紙を眺めながら歩いていたせいで、人とぶつかってしまったのだ。
「わっ…!すすすす、すみません…!わわ、私の不注意で…!ごごご、ごめんなさ─」
「ふふっ、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。僕もよく前を見ていなかった。こちらこそすまなかったね。はい、これ落とした本。怪我はしてないかい?」
そう優しい声でミリアに話しかけたのは、銀髪で整った顔をした男子生徒だった。
「いいい、いえ…!わ、私が前を見ていなかったばっかりに…」
慌てなくてもいいと言われたのに、明らかに慌てているミリアの顔をその男子生徒は何故か不思議そうにじっと見つめた。
「わ、私の顔に何か、つ、着いてます…か…?」
男子生徒は何か意味があるような笑みを浮かべて言った。
「いや、そうじゃないんだけど、ちょっとね」
「…?」
ミリアも男子生徒の違和感がある笑みには気がついたが、意味まではさすがに分からなかった。
「それじゃあ僕は行くよ。さっきは本当にすまなかったね」
男子生徒はミリアにそう言うと、図書室を後にした──
「えっーと、小さな水を発生させる呪文は…ふむふむ。立体的な氷を生み出す呪文は…って、思ったより多い…」
下の街では引きこもりが故に多くの時間を持て余しているものの、この量の呪文を覚えられる気は全くしなかった。これに中級魔法も加わるとなればなおさら。
『キーンコーンカーンコーン』
椅子の背もたれに体重を預けて伸びをした所で、予鈴のチャイムがなった。ミリアは次の授業からクラスに入ることになっていた。
急いで本を元の場所に戻し、ミリアは図書室を出た。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。