【大ピンチ!?まだ呪文を知らない魔女の入学試験です…!(誰か助けてくださいぃ…)④】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
杖は魔法陣を展開。すると、そこに大きな氷の塊が現れ鋭い音と共に、一瞬にして氷のお城を作り上げた。
ドライアイスから出るもくもくとした白い煙のように、その闘技場の幅いっぱいに出来た巨大な氷のお城からは足元まで届く程の冷気が漂っていた。
「こりゃ、凄いもんじゃ」
校長先生が関心の声を上げて氷のお城を見上げた次の瞬間、先の尖った無数の氷の塊がお城の周りに現れ、ミリア目掛けて一直線に飛んで来た。
「…っ!」
ミリアは目を瞑ったものの杖は下ろさず、まだやっていなかった雷魔法をイメージした。
『バリバリバリ!ビリビリ!ドドドドドッ!』
『パリン、パリン、パリン』
凄まじい雷鳴の音数と振動、さらにそれと同時に氷が割れ、破片が地面に落ちる音もした。
『な、なんとか助かった…?』
氷の破片が落ちる音と、雷鳴の音が止んだのでミリアは目を開けた。地面にはガラスの破片のように、氷が細かく散乱していた。
「ふぉっ、ふぉっ。今のも随分と派手じゃったのう。実に面白い発想じゃったぞい」
「あり、がとうござい…ます?」
この場合、なんと返答するのが正解なのだろう…。というか、面白いと言うより危機一髪だったし…。
『さて、これで残るは毒魔法か…。毒魔法って…なんだ?よくある実験みたいにAとBの液を混ぜて毒を作れーって事?それとも敵を弱体化させろって事?でも誰に?まさか校長先生に…?いやいや、流石にそれは…』
ミリアが頭でぐるぐると毒魔法について考えていると、遠くから『バサバサバサ』と大量の鳥の大軍らしき羽の音と鳴き声が聞こえてきた。
やがてその音は大きくなり、ミリアたちがいる闘技場の真上を通過して行った。それまでは良かった。問題はその鳥たちが何故かピンポイントにフンを雨のように落としてきた事だ。
「ふぉっ、ふぉっ。今日はこんなに良い天気なんじゃ。さずかし鳥たちも飛びたがろう」
『いい、いや校長先生!そんな事言っている場合ではないのでは…!?』
ミリアは校長先生とは正反対に焦った。このままだと間違いなく、二人して鳥のフンまみれになってしまう。
『そ、それだけは嫌だっ…!』
ミリアは両手で杖を持ち、空に向けて魔法陣を展開した。
すると鳥のフンは、半透明で毒々しい紫色のオーラを放っているの球体の中にそれぞれ収まり、止まっていると錯覚するほどゆっくりと落ちてきていた。逃げるならこのタイミングしかない!
「こ、校長先生…!闘技場から出ますよ…!」
「ふぉ~、そうじゃのう。このままではフンまみれになってしまうわい。ちょうど全ての試験が終わったところじゃ。出るとしようかのう」
ミリアと校長先生は無事、フンまみれになる事なく闘技場から出てくる事が出来た。
『よ、良かった~』
ミリアがほっと胸を撫で下ろしている時、校長先生はミリアに拍手をしていた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉ~。いやはや、実にお見事じゃった。わしは長年この魔法学校の校長をしているが、これほどまでに完璧で素晴らしく、壮大に入学試験をこなす新入生を見たのは初めてじゃ。それに、ほとんどの子は基礎魔法のどれかひとつが特性として優れいているのに対して、お嬢さんは全て優れているとは驚きじゃった。おめでとう、もちろん合格じゃぞい」
校長先生は親指を立て、笑顔とグッドサインをこちらに向けた。
「あ、ありがとうございます……。って、えっ!?」
「ほれ、では校長室に戻るとするかのう。お嬢さんにローブを渡さなくてはならないからのう」
『そうだ、入学試験を受けに来ていたんだ…。しかも校長先生ご、合格って…』
ミリアは思い返した。そういえば校長室の扉をノックする時から、いかに自然に帰れるかという事しか考えていなかった。しかし実際には、自分の手でノックをして、入学試験を受けて、…合格、していた。
校長室に着くと、校長先生はミリアにローブと帽子を渡した。ローブはリリーと同じ長い物だった。ローブと帽子にあるポイントカラーは校長先生がその子に似合いそうな色をチョイスしてくれるらしい。
そしてローブと一緒に胸元に着けるリボンも貰った。こちらの色は階級を意味しているらしい。下級クラスが緑、中級クラスが青、そして上級クラスがミリアに手渡された赤色。
「こ、校長先生。ちなみにローブの長さには何か意味があるのでしょうか…?」
ミリアは今朝、リリーと登校する時に感じた疑問を校長先生に聞いてみた。
「うむ、その通りじゃ。短いローブは一般生徒。長いローブは『アストラル』に所属する生徒を意味しておる」
「アストラル…ですか…?」
「そうじゃ、アストラルは度々下の街に現れる魔物を退治する組織の名前じゃ。言わば、街の護衛者じゃのう」
ん?ちょっと待てよ、ミリアが今受け取ったローブは長かったような…。つ、つまり…?
「ふぉっ、ふぉっ。ちょうどあと一人、上級クラスの子がアストラルにいたらなぁ~。なんて考えておったところだったんじゃ、いや~運命的じゃのう」
「……、えーーーっ!?」
こうしてミリアは入学して早々に上級クラス入り、そして街の護衛者『アストラル』の一員となってしまい、魔法学校生活の一歩を踏み出す事になったのでした。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。