【大ピンチ!?まだ呪文を知らない魔女の入学試験です…!(誰か助けてくださいぃ…)③】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「ぜ、全部の魔法同時にやります…!」
それを聞いた校長先生は、『何を言っているんだいお嬢さん?』という顔をしてミリアを見ていた。頭に?マークが浮かぶとしたら、確実に一つではないだろう。
正面を向き直してミリアは一呼吸した。
『やっぱりあんな事言っておいて、何も出ないのはなんか恥ずかしいから、んーっ、この際炎でも水でもなんでも良い!何かしら出ろ…!』
片目を瞑ったまま心でそう唱えた瞬間、ミリアの杖はそれに応じるように魔法陣を展開してみせた。
いや、応じるというより応じすぎた。
魔法陣の先で、勢いよく地面からライターの火とは比にならない程の火柱が立っていた。
火柱からある程度距離があるとはいえ、十分にミリアもおそらく校長先生も強い暑さを感じていた。パチパチと音をたて、火花も飛んで来ていた。しかし、もはや暑いという感情よりも驚きの感情の方が勝っていた。
火柱は闘技場の観客席の最上階を優に超え、先が見えない程高く空に向かって燃え上がっていた。
『ち、ちょっとやりすぎたか…?』と思った次には、火柱と同じくらいの太さの滝のような大量の、これまた勢いの強い水が火柱の先から降ってきて、一瞬にしてあの火柱を鎮火してしまった。
高い火柱を瞬時に消した水の量は多く、闘技場の観客席までは行かないものの、ミリアたちがいる場所は腰あたりまで冠水していた。勢いで飛んできた水しぶきがまるで雨のようだった事も加わり、ミリアも校長先生もずぶ濡れ状態だった。
「すすすす、すみません…!(泣)」
「ふぉっ、ふぉっ。まるで湖の中におるみたいじゃのう」
確かに、大量の水が冠水しているとはいえ、ミリアの生み出した水は色も綺麗で凍えるほど冷たい訳でもない。例えるなら校長先生がおっしゃる通り、湖が近いだろう。それも、青空を鏡のように反射させる湖。
『ゆ、愉快な先生で良かった…』
そう思い安堵したものの、早く水を消して校長先生の服を乾かさなければならない。流石にこの冠水状態で、さらには校長先生の服をびしょ濡れにしておいてこのまま続行は出来ない。
『治癒魔法って、この大量の水消せるのかな…?。人じゃないけど、元通りにするという意味では同じ…か?』
使った事も見た事もない治癒魔法。どこまで可能なのかは分からなかったが、とりあえずやってみることにした。
…呪文、知らないけど。
『お願い水!無くなってー!』
願いを込めて心でそう言うと、ミリアの杖は魔法陣を展開。徐々に水たちが闘技場の中心の空中に集まって、満月のように大きく球体になった所でぎゅっと縮まり、変わりに水色の小さな光を水の波紋のように放って消滅した。
これで水問題は解決したものの、ミリアと校長先生の服はまだ濡れていた。
『ドライヤー、ドライヤーって、こんな所にドライヤーなんてあるわけないじゃん…。いや、まてよ?さっきの炎魔法と風魔法を合わせたらドライヤーになったりするんじゃ…?』
ほんの少し前に見たあの火柱の火力にならない事を願い、校長先生の頭上に焦点を当てて杖を傾けた。
「校長先生、ちょっと動かないでそのままで居てください。」
「ほう?」
校長先生がまたミリアの言葉を疑問に思うと、頭上に魔法陣が展開された。その魔法陣からは、暖かく優しい風が吹いてきた。暖かさ、風の強さ共に服を乾かすには十分な力だった。
それを見てミリアも自分の頭上に杖を向け、魔法陣を展開。同じように暖かい風を浴びた。
「いや~暖かくて気持ちがいいのお~」
「そそ、そうですね…!服もしっかり乾いているみたいで良かったです…!」
二人の服が完璧に乾いた事にミリアは安心した。(最初に言った「全ての魔法を同時にする」という事は冠水したせいで一旦止まっちゃったけど…)
『さて、残るは氷、雷、毒か…。氷と雷はまだしも毒…って、どうしたらいいんだろ…。まぁ、とりあえず毒は最後にしよう…』
ミリアは続いて氷魔法と雷魔法にチャレンジする事にした。
『ま、まず氷…出してみよう…。出るか分からないけど…。コップに入れるサイズの氷くらいなら、もしかしたら…出るかもだし…』
ミリアは杖を正面に向ける。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。