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【五は欠けない④】

この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。

「き、消えたわよ?」

「姿が見えませんね」

「え~?どこいっちゃったの~?」


「みんな!あそこだ!」

 ハルの指差す方を見ると、魔物の姿が移動しながら現れたり消えたりを繰り返していた。

 

 まるで瞬間移動魔法で…遊んでいるかのように。

 

「ちょっと、これじゃあ速くて魔法が当てられないわよ!」

「ハルさん、拘束魔法はどうですか?」

 ルークが上級クラスのハルに聞く。

 

「分かった、試してみるよ。ディオルドルーフ!」

 

 ハルは拘束魔法を詠唱するが、当たる前に魔物は瞬きをするくらいの速さで瞬間移動してしまう。


「ディオルドルーフ!、ディオルドルーフ!」

ハルは何度も拘束魔法を詠唱するが、やっぱり間に合わない。

 

「も~!魔物さんピョンピョン遊ばないでよ~」

ジルは解決策が分からず呆れと怒りが混じったように言う。

 

『ピョンピョン…?飛ぶ…?ジャンプ…?───そうか!』

 ミリアは心の中で考えた。飛ぶという事は必ず次に踏み込むために着地するはずだ。つまりこの辺り一体に魔物に見えないよう、透明の粘着床を空中に張ればいいんだ…!

 

 でも、そんな魔法はまだ習っていないし、家のノートにだって書いてもいなかった。

 

 『な、ならば、創るしかない…!今ここで…!』

そう、ミリアはこの世界でたった一人の『創作の魔法使い』。この世に存在しない魔法を何時でも好きなように作ることができる。今こそその特性を使うべきだ。

『で、でも…』

 

 今まではノートに書いて、イメージを十分に膨らましてから試行していた。だから、こんなに即興で出来るのかミリアは不安だった。必ずしも上手くいく保証はどこにも無い。

 

 しかし、そう考えている間にも魔物は五人をもて遊ぶように瞬間移動魔法を使って、リリーたちの数々の攻撃を見事に避けていた。

 

 

「ディーゼルララック!」

「テリエルオペガーサ!」

「ヒワルシラーダ!」

「ファデアラール」 

 

 リリーの炎魔法。ハルの風魔法。ジルの氷魔法。ルークの雷魔法。やはり、どれも当たる前に魔物は瞬きの速度で別の場所に瞬間移動をしていた。

 

 

 魔物は四人に集中している。この隙にミリアは魔物に負けじと高速で創作魔法を頭の中で創っていく。

 

 度々、魔物の攻撃がふいに飛んでくる。

 ミリアは魔物にも集中しながら氷は防御魔法の魔法陣で砕き、雷魔法はローブをはためかせながら左右に飛んで避ける。

 

「グリアルクロフ!」

 ハルが風魔法で、地面に置いてあったショッピングカートをいくつも宙に浮かせたところでミリアの魔法のイメージ、詠唱共に考えが固まった。

 

 ミリアはハルの魔法を視界に捕らえ、合わせて詠唱する。初めての即興の創作魔法を。

 

 「サーチェルビーテル…」

 

 ハルの魔法で魔物目掛けて多くのショッピングカートが一直線に飛ぶ。

 

 魔物はニヤリとしながらまた、瞬間移動をした──────が、その先で足を取られていた。ジャンプをするように体を上に動かしているが、足が全く連動しない。着地と同時にミリアの張った粘着床に作戦通りくっついたのだ。魔物は不器用に体を動かし予想外の事態に慌てる。


 ハルはそれを見て飛ばしたショッピングカートをUターンさせ、魔物に当てていく。

 ショッピングカートが魔物の体に体当たりして跳ね返っていく。

 

「みなさん…今です…!」

 ミリアは他の三人にも今がチャンスだと伝える。

 

「おっけ~♡」

「分かったわ!」

「了解です」

 

 三人もミリアとハルに習って杖の先を魔物に向ける。

 

「みんな、ここは全員で炎魔法を詠唱して一気に畳み掛けよう!」

 ハルの作戦を実行するように、みんなは炎魔法を詠唱する。

 

「ディーピアターファ♡!」

「ディーパルタート♩!」

「ディーパルタート」

「ディークルアーセス!」

 

 ジル、リリー、ルーク、ハルが一斉に詠唱し、巨大な焚き火のような炎が魔物の足元からメラメラと立ち上る。

 そしてミリアの創作魔法の詠唱が後に続く。

 

「ヴァームアリアー…」

 

 ミリアの杖から魔法陣が展開されると、遥か上空から光が落ちてきて、上から大、中、少の炎を纏った魔法陣が順に展開。光が魔物に到達した時、光は竜巻のような火柱になって魔物を包んだ。

 

 ゴォーーーッという強い炎の音と火花の弾けるパチパチというが響く。

 

 魔物はミリアの炎を食らった瞬間、大きく呻き声を出したが、やがて呻き声が聞こえなくなり火柱から紫色の光が天に登って行った。

 光を見届けていると、最後の光が強く光りミリアたちは思わず目を瞑る。

 


─────────────────

 

「───こ、ここは…?」


 ミリアが目を開けると、広がる景色は映画館だった。さっきまでの誰も居ない映画館ではなく、きちんとお客さんが居て、左右を見るとリリーたちが同じく鑑賞席に座っていた。

 

「も、戻って来れたみたいですね」

「みんな、ルークの言う通り、映画が始まる時間に戻って来たみたいだよ」

「わ~♡良かった~♡映画楽しみ~♡」

「そうですね…!リリーさん…!無事に戻って────」

「ミリアちゃん!始まるわよ♩ほらっ!終わったら感想会をするからねっ♩」

 

「か、感想会ですか…!?」

 

 

 大きなスクリーンに映される映像と大迫力の音に魅了されながら、五人は同じ映画を観て、違う味のポップコーンをお互いに交換し合いながら映画を鑑賞。

面白いシーンは一緒に笑って、感動的なシーンは一緒に泣いて。

 

 その後はフードコートでリリー主催の感想会が開かれ、ミリアたちは笑い合ったり驚き合ったりしながら充実した一日を過ごし、また思い出の一ページを彩っていく。


五つの椅子に座り、五つの飲み物をテーブルに乗せて。

〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗

読んでいただき、ありがとうございました。

小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。

ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。

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