【五は欠けない①】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「は、早く来すぎちゃったかな…」
ミリアは小さな持ち運び用の鏡で前髪を整える。
白くて大きな時計台があり、まわりにはベンチや噴水、少し広大だがしっかりと整備が行き届いている緑色の芝生。子供たちが楽しそうに駆け回っている声が聞こえるこの広場で、アストラルのみんなを待っていた。
そうです。今日はみんなでショッピングをします…!
「あっ!いたいた!ミリアちゃーん♩」
「流石ミリアさんです。時間ピッタリですね」
「いや、ミリアの事だ。きっと緊張して数分前には到着していたんじゃないか?」
「ミリアっち~♡おまたせ~♡」
いつもの聞き慣れた声と姿が目と耳に届く。
ニコニコしながら、リリーはミリアに小走りで寄って抱きつく。
ルークは腕時計に目を向け、時計台とのズレが無いかをしっかり確認。
ハルは芝生で駆け回る子供たちから飛んできたサッカーボールを蹴り返してあげる。
ジルは笑顔で両手を広げ、まるで小さな子供が飛行機のマネをするようにクルクルと回転しながらこちらに向かって来る。
「ごめんねミリア、待ったかな?」
「い、いえ…!私が早く来すぎただけですので…!」
「よーっし!これで全員集合♩それでは~?ショッピングモールに向かってレッツゴー♩」
「ご~♡」
「ゴー」
「ゴー!」
「ゴ、ゴー…!」
拳を上げたリリーの掛け声で五人も拳を上げる。拳には陽の光が当たり、空では鳥の群れが羽を動かして頭上を通って行く。
涼しい風と暖かい陽の光を浴びながら、五人はショッピングモールへと歩き出す。
「わ~♡見て~!マスコットキャラクターの猫さんと写真撮影出来るって~♡」
ショッピングモールに入ってまず一番初めに目に止まったのは、可愛らしい着ぐるみの黄色の虎模様をした猫さんとのフォトスポットエリアだった。
「本当ですね、子供たちも楽しそうで微笑ましいです」
「みんな!せっかくだから記念撮影しようか!」
「もっちろん♩ほら!ミリアちゃんもー!」
「は、はい…!」
リリーに手をひかれ、ミリアたち五人は記念撮影ブースへ行く。
「はい!それでは撮りますよ~!はいポーズ!」
スタッフのお姉さんの掛け声でシャッターが押される。
受け取った写真は、真ん中に猫さんが居て、猫さんのお腹辺りにしゃがんで満面の笑みでピースをするジルが右に、その左隣に同じくしゃがんで、小学生の入学式のような緊張した顔付きのミリアが。
そして、猫さんの右隣に少し恥ずかしそうな顔で猫さんに差し出された手を繋ぐルーク。
その反対側に、猫さんの手をぬいぐるみのようにギューッと抱いてウインクをするリリー。
それから、微笑んだ顔で猫さんの後ろでポンと頭を撫でているのがハル。
「この子たち、みんな同じようで全然違うのなんか可愛い~個性出てる~」
スタッフのお姉さんは、写真をミリアたちに渡す前に確認するため写真を見るが、この何とも言えない微笑ましさに思わず目尻が下がる。
「はいどうぞ!問題なく取れましたよ~!」
ミリアたちはお姉さんに渡された写真をお礼を言って受け取る。そうそう、猫さんにも忘れずに。
「猫さん~♡ありがとね~♡」
「ありがとうございました。素敵な思い出になります」
「猫さん、ありがとう!」
「また五人で来るからね~♩」
「お、お写真ありがとうございました…!」
ジルは猫さんに抱きつき、ルークは猫さんの左手で握手。ハルは後ろから頭をポンポンと撫でて、リリーは右手の肉球を触って癒されていた。
「ミリアっちも最後に猫さん触ったら~?可愛いよ~♡」
ジルにそう言われ、ミリアも猫さんに近づき抱きつくジルの隣でおでこを優しく撫でた。
ふわふわの毛並みに癒されると同時に猫さんの顔もまるで「ありがとう」と言っているように微笑んだ気がした。
「ねぇねぇ~♡次はUFOキャッチャーやろ~?」
猫さんとの写真撮影が終わると、ジルが次はUFOキャッチャーを提案する。
そのジルの提案で五人はゲームコーナーへと向かう。
「わーっ!さっきの猫さんの小さなぬいぐるみキーホルダーがあるわよー♩しかも五色♩」
「え~♡ほんとに~?じゃあじゃあ、取るしかないじゃんね~♡」
「五つ、取れますかね?小さいけど難しそうです」
「そう、ですね…。アームが強かったら取れそうですが…」
「ルーク、ミリア、五つ取れるかな。じゃなくって、取るんだよ!」
「そうだよ~♡ねぇ~リリーっち~?」
「そうよ!絶対に五人で色違いのお揃いにして帰るよの♩」
そうして、五人は一人ずつ順番にUFOキャッチャーにチャレンジした。
───そして、残すは後一つ。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




