【人を怒らせてはいけません③】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「え~♡面白そ~!する~♡」
「お、怒られても知りませんよ」
「大丈夫♩大丈夫♩あの二人優しいから~」
「そうだよ~♡たとえ怒られたとしても、ピコピコハンマーでポコッ!だよ~♡」
『この二人はミリアとハルが上級クラスの生徒だという事を忘れているのだろうか…。もし本気で怒らせば勝ち目は無いだろう』
ルークは一瞬そう思ったが、確かにあの二人の沸点が最高潮になったとしても、ジルの言う通りピコピコハンマーでポコッ。くらいだろうと感じ
「まぁ、確かに温厚な二人ですからね」
と返した。
「それじゃっ、走って先回りしましょ!草木の陰に隠れて私が魔法で脅かすわ♩」
「分かった~♡」
「了解しました。では、行きましょうか」
こうしてリリーたちは野生動物のように草木に身を隠し、ミリアとハルを待った。
やがてミリアたちの声と上下左右に揺れる懐中電灯の光が見えて来た。
そしてミリアとハルが大木のリボンを取り、帰り道に差し掛かった時、
「行くわよー♩」
リリーが楽しそうに杖を出した。しゃがんだまま、長いローブが姿を見せる。
「ラシュレビーア♩」
魔法陣を展開した先に、リリーと瓜二つの人間が現れた。
ちなみにこれは魔法学校では映像魔法と呼ばれていて、基本的には遠隔で遠くの景色を魔法陣に映して観察したりする事に使うのだが、自分でその魔法陣を展開して、カメラに動画を残すように撮影をし、今のリリーのように投影させる事も出来る。
そして、ミリアがそのリリーに驚きハルと走って行く。
「ちょっと、ミリアっちとハルっち走って行ったよ!?」
「リリーさん、私とジルさんに瞬間移動魔法をかけてください!その後、リリーさんもすぐに!」
「え、えぇ!分かったわ!」
こうして、ミリアたちがゴールに走っている間、リリーたちも慌ただしくゴールに先回りしていた。
──────────────────
「この二人、元から脅かすつもりだったみたいですよ。でも、ハルさんは途中から気づいていたように見えましたが?」
「うん。ジルの言う通りリボンが一つしかなかったから、何となくね」
「ハ、ハルさん…!気づいていたなら教えてくださいよ~」
ミリアが恐怖感から解放され、ふにゃふにゃな声でハルに話すと、ハルは笑いながら言った。
「ごめんねミリア、あんまりにもあれだったから」
「あれって?」
リリーが不思議そうな顔をして聞く。
「あ、いや、ほら。せっかくだから~と思ってさ」
あはは~とハルは何かを誤魔化しているように笑う。
「にっひひ~♡あれね~♡」
「ジルさんは何かご存知で?」
ジルがあまりにもニヤニヤした表情と声で言うので、ルークが気になって質問する。
「え!なになにジルちゃん!教えて~♩」
リリーが目をキラキラさせながらジルを見る。
「…?」
ミリアもリリーを真似してジルを見る。
「ハルっち~♡あくまで、あたしの予想なんだけど、言って良い~?良いよね~♡」
「ちょっ、ちょっとまったー!ジル、そ、それ以上言うな!」
「にっひひ~♡実はね~ハルっちは~──────」
そこまでジルが言ったところでミリアの視界の端にふわっと長いローブが現れた。
「ハ、ハルっち…?」
「ジル?分かっているね?」
なんだろう、杖を持って長いローブを纏ったハルの表情は『にこやか』なのに、何故か微塵も笑っているように感じられないのは。
「わわ、分からないです~(泣)」
ジルは逃げるように杖とローブを出して素早く飛び立った。
そのジルを逃がすまいと、ブワッと風をおこし、その風の勢いを利用してハルが追いかける。
ハルの飛び立つ風で、取り残された…?三人の髪や服がバサバサッと靡く。
「あちゃー、もしかして怒らせちゃった感じ?」
テヘペロッ♩というようにリリーは頭の後ろに手をつく。
「リリーさん、だから言ったでしょう」
「えーっ、でもルーク止めなかったじゃーん」
「そ、それはそうですが、私もピコピコハンマーくらいな物だと思っていたので」
「あ、あの~、一体何が起きているのですか…?ピ、ピコピコハンマー…?」
この後、ミリアには謎だらけのハルとジルによる攻防戦が繰り広げられたのでした。
遠くでは炎や氷が激しく飛び交っているのが見える。
果たして攻防戦の結果は─────
きっと、ここに居る五人にしか知り得ないのでしょうね。
……まぁ、大体は予想がつきますが。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




