【初めての魔法力テスト④】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
やがて、ミリアの魔法が止む。
ハルはなんとか耐えたものの、長いローブが所々焼けて欠けていたり、穴が空いたりしていた。
「おい、マジかよ…。あのハルさんが?」
「あの子、何者なの…?」
「ど、どうなってんだ…?」
「ミ、ミリアちゃん…?」
「ミリアっち…?」
「ミリア、さん…?」
リリー、ジル、ルークの三人もこの状況には驚くしかなかった。
なにせ、誰にも出来なかった創作魔法を作り、さらにはこの規模の魔法を正確に操っているのですから。まさにこれが最強の『創作の完全詠唱魔女』というように。
「すすすす、すみません…!や、やりすぎました…!ハルさん、お怪我はありませんか…?」
ミリアは慌ててハルに近づく。
「いや、大丈夫だよ。それよりミリア、やっぱり君は凄いね。でも、まだ負けてる訳じゃない。勝負はまだ続いているよ。ほら、戻って」
ハルはミリアに勝負を続ける意思を示す。
「わ、分かりました…。ハルさんがそうおっしゃるのなら…。で、でも、無理はしないでくださいね」
「もちろん分かっているよ。ただ、もう少し戦ってみたいんだ、君と」
ハルにそう言われると、ミリアは元の位置に戻る。
ハルは、肩に付いた煤を軽く払うと詠唱する。
「テリエルオペガーサ!ヒワルドールザルべ!」
ハルは再び、二つの魔法を詠唱。
ハルの魔法陣から勢いよく風が生み出され、ミリアを観客席のバリケードに押し付けた。そして素早く、今度は鎖ではなく氷で足元、そして両手までも拘束した。
─────『カタン』
ミリアの杖が音を立て、地面に落ちる。
ミリアは風の魔法で飛ばされた時、杖を地面に落としてしまっていた。
「おい、これはさすがにハルさん勝ったんじゃねーの?」
「そうね、ここからの逆転はさすがに無理でしょうね」
「やっぱハルさん強いなー」
「ミリアさんもここまで、ですかね」
「ミリアっち、降参するのかな~」
「───いえ、ミリアちゃんの力は多分、なんの根拠もないけど、こんなものじゃないと思うわ」
リリーは、ルークやジルとは違う気持ちだった。
本当に何の理由もないけれど、ミリアが負けるとは思えなかった。
ハル、そして闘技場にいる全員が、項垂れるように俯きながら拘束されているミリアを見る。
その時、ミリアの口元が小さく動いた。
「ウィールダルスト…」
ミリアが呟くように詠唱する。しかし、何も起こらない…。闘技場内が静寂に包まれる。
「やっぱり、今年の優勝もハルさんかー」
「一瞬、さっきの魔法は凄かったけどね~」
「ちょっと期待してたんだけどなー。ハルさん越えの魔法使い」
「新しいアストラルの子、思っていたよりも大したことな───」
「ねぇ!あそこ見て!」
拘束されているミリアの正面にいるハルの後ろに人影があった。
その人影は魔力で、杖の先で正面を向いているハルの杖を後ろから奪い、ハルの目の前に来た。
「ミ、ミリアっちが二人~~~!?」
そう、その人影はミリアだった。さっきの詠唱は分身の創作魔法。
今、拘束されているミリアは偽物に入れ替わっていて、何の音も気配も立てず、誰も気づいていない所を見るに、おそらくは人の目に捕えられないスピードで瞬間移動していたのだ。
「まさかあの子、このためにわざと拘束されたんじゃ…!?」
ミリアはハルの目の前に来ると奪ったハルの杖を魔力で『バキッ』と二つに折った。
『カタン、カタン』と二つに別れた杖が重力で地面に落ちる。
『カンカンカーン!』
「試合終了!ミリアお嬢さんの勝ちじゃ!」
その瞬間、拘束されていたミリアの姿は消え観客席からは立ち上がった人たちの拍手と歓声が上がっていた。
ミリアは歓声が耳に届いていないかのように地面に降り立ち、治癒魔法でハルの杖を元通りにした。
ハルも拍手をしながら地面に降りてくる。
「すすすす、すみませんでした…!も、元通りになりましたから…!あっ、ローブも──」
「ミリア、優勝おめでとう」
「…え?」
「優勝…?わ、私がですか…?」
ミリアはやっとそこで沸き上がる歓声が耳に入ってきて、辺りを見渡す。
『えーーーーーーーー!?』
夢かと思う現実にミリアは心の中で叫んだ。
間違いなくこの日はノヴァル魔法学校にとって、歴史的な日となったでしょう。
そしてミリアにとっても、忘れられない日となったでしょう。
────────「今回の優勝者は間違いなくミリアだ。素晴らしい魔法と判断力だった。だけど、今度は…………負けないよ」
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。