【守りたい④】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
『シュイン。ゴォォォォーーーッ』
水族館の窓ギリギリに、大きな魔法陣が展開。
「な、なんだ!?」
「魔法陣よ!きっと、あっちにいたアストラルの子が来てくれたのよ!」
「マジで!?あの距離で間に合ったのか!」
──そう、ミリアがここを守れないという話は『今までの』ミリアの話。
「注目されてる…。怖い…。けど、守らなきゃ。みんなの大切な街を、大切な思い出を壊したくない。ここで止まっていられない。ここで後悔したくない。お魚さん含め水族館にいるみんな、アストラルのみんなの笑顔を…私が守りたいから…!」
ミリアは咄嗟に瞬間移動魔法を使い。巨大な魔法陣を展開していた。そして今現在、炎を跳ね返し続けている。
ミリアの長いローブがバタバタと音を立てる程に勢いが強い。しかし、魔法陣が破られることは決して無かった。
やがて魔物は諦め、炎魔法を止めた。
その僅かな一瞬で、ミリアは空中にいる魔物の正面に飛び立ち、さらに魔物の頭の上を通り過ぎるように飛んだ。
魔物は水族館と真反対を向く。
そのまま魔物の目線の高さまで下がると、そこにはリリーとジルが待ち構えていた。
魔物が目を動かし、標的を二人に移したところで
「ウガーティルルッカ…」
ミリアが逆さまに飛びながら毒魔法で魔物を弱体化させ、動きを拘束。
「ヒワルブルーカデ!」
それを確認したジルがすぐさま巨大な氷の塊を魔物の頭上に生み出し
「ラキルスワーシャ!」
リリーの炎が素早くその氷を溶かした。
巨大な氷の塊は巨大な水の塊になり魔物に襲いかかった。
「ドッボーーンッッ」
魔物は大量の水に押され海に沈み込み、高さが水族館を超える水しぶきを上げた。
しかし、魔物はまた海から姿を現し、今度は水魔法を放つ。
ミリア以外の四人を標的にして、頭上にいくつもの魔法陣が展開される。そこから滝のような円柱状の水が降り注いでくる。
四人は空中を飛びまわり、魔物の攻撃を避けながら魔法を放つ。
「ディーパルタート!」
リリーは滝のような水の間を上手く見つけ、交わしながら魔物に炎魔法を放つ。
「ファデアナーリア」
ルークも同じように雷魔法を球体にして魔物に飛ばしていく。
「ヒワルシラーダ!」
「テリエルオペガーサ!」
その間にジルは氷魔法で水を固め、ハルが風魔法で氷の塊を魔物に攻撃として放つ。
魔物は数個程の氷の塊を身に当てられ、また海に落下して行く。
魔物が次に海から上がって来た時には、おぼつかない飛び方でヘロヘロになりながら翼を動かしていた。
「ハル!ルーク!トドメよ!」
「トドメ、刺しちゃえ~♡」
ハルとルークは息を合わせトドメを刺す。
「グリアルクロフ!」
ハルが風魔法を使い、下から海水を持ち上げて魔物を包み
「ファデアラール!」
ルークが電流を海水に流した。
魔物の体はハルとルークの狙い通り海水を通して感電し、数秒すると小刻みに震えていた動きを止めてやがてそのまま光となって消えていった。
空に青が戻って来る───
「ペンギンさ~ん♡いっくよ~!」
ジルがエサを投げると『パクッ』とペンギンは慣れたように投げられた魚をキャッチして食べた。
「わー!可愛い~♩」
「ですね…!まさかエサやり体験をさせて頂けるとは思いませんでしたね…!」
ミリアたちの魔物退治を見たペンギン担当のスタッフさんが「是非、特別に無料でペンギンさんのエサやり体験をしてみませんか?」と、魔物退治のお礼としてミリアたちに声を掛けてくださったのだ。
「ペンギンさん、ほらっ!」
「おぉ、ハルさんもお上手ですね。しっかりとペンギンが魚を口にくわえました」
「あははっ!みんな見て~♡あそこの二匹、岩の上にあるエサに気づいてないで探してるよ~」
ジルの指さした微笑ましい二匹のペンギンを見て五人は一緒に笑い合い、沢山の思い出をこの水族館で作った。
そしてミリアはこの日、小さくも立派な一歩を踏み出し、大きな成長を遂げた。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




