【守りたい③】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「え?」と四人が空を見上げると確かに、今からゲリラ豪雨でも来そうな暗い空だった。
「リリーっち、今から雨かな~?」
「いえ、これは多分…魔物よ」
「え~!?ハルっち、ほんとにー!?」
「うん。これは怪しい予感がするよ」
「確かに、ゲリラ豪雨などでは無さそうですね」
「ミリアっちー、大変だよ~(泣)魔物が来るよ~どうしよ~(泣)」
「ジ、ジルさん。ど、どうしよ~っ、と言われましても、た、戦うしか無さそうですよ…、」
「ジルちゃん。ミリアちゃんの言う通りよ。私たちはアストラル。戦うしか無いのよ」
「みんな杖出して!行くよ!」
ハルの掛け声で五人は一斉に杖を出す。杖と同時に風で靡く長いローブが姿を現した。
「みなさんは建物内に避難をお願いします」
ルークは他のお客さんに声をかけ、安全を確保。
その時、『バッシャーン』という荒い波と音をたて、なんと海から魔物が顔を見せたのだ。
魔物は宙に浮き上がると圧のある唸り声をあげ、バサバサと大きな翼を動かした。こちらに向かって強風がたどり着く。カタカタと水族館の窓が揺れ、水槽の水も波を立てた。
その姿はネズミに近く、丸くて大きな耳と細長い尻尾が見て取れた。しかし、背中から生えている翼は悪い意味で悪魔のように見え、例えば可愛らしいアニメキャラクターやぬいぐるみのようなネズミとはかけ離れていた。
「今度はネズミ、それも海からの登場ですか」
「ペンギンさんに手出したら、あたし許さないからね!」
「そうね、みんなで守りましょう。お客さんも、従業員さんも、水族館の生き物たちも!」
魔物はまた大きく声を唸らせると、尻尾を長く伸ばしてこちらに向かって半円を描いて足元を引っ掛けるように攻撃して来た。
それを見た五人は同時に素早く飛び立った。
五人が立っていた場所は、細い見た目とは相反する力強い尻尾が風を切り裂く勢いで通り過ぎた。
ミリアは魔物の周りを一周するように飛び始めた。魔物はミリアを標的にして翼をバサバサと動かしながらその場で、紫色につり上がったキリリとした目でミリアを追いかける。
《バン、バン、バン、バン》
始めにミリアを標的にした魔物は尻尾から炎魔法を出して攻撃を放つ。空中では、ミリアが通り過ぎたルートを辿るように空で炎の玉が数十個程、順番に爆発する。
ミリアの速い空中飛行に追いつけないと思った魔物は尻尾の先で炎の玉を出して、なんとミリアではなく水族館に向けて太いビームのような炎を放とうとしている。
「キャーーー!」
「や、やめろ!こっちにくるな!俺たちは一般人なんだ!魔法使いじゃないんだ!」
「お願い!私たち魔法使えないの!だから来ないで!」
ミリアの視界に、水族館内で悲鳴が上がり、多くの人が見守っていた窓近くから走るように慌てて離れ行ったり、泣きそうな顔をしている子供たちの姿が入る。
この水族館を、ここに居る人たちを、この街を守る事がアストラルの使命。
おそらく魔物の攻撃は間もなく水族館や水族館内の人たちに向けて放たれる。
守るためには、水族館の窓の目の前に行き、魔法陣を展開しなければならない。
でも、引っ込み思案で人前に出る事や目立つ事をするのは大の苦手であるミリアには、ここを守る事は出来ないでしょう。
───魔物は鋭い目つきで水族館目掛け、炎魔法を放った。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




