【アストラルとしての第一歩②】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
「リリー危ない!テリエルオペガーサ!」
リリーの前にハルが立つと、魔物を吹き飛ばすように風の魔法を放った。ハルとリリーの長いローブもバタバタと音をたて、風を後方に通してはためく。
魔物はハルの風魔法を受けて吹き飛んだ後、竜巻のようになった風魔法に入りクルクルと横方向に宙を舞い、目を回らせた。
「ハル、ありがとう。助かったわ」
「ううん、間に合って良かったよ」
「ジル!そっちだ!」
ルークが叫んだ。
「え?」
ジルはルークの指さす方向を見る。すると、推測するに魔物が風で回っている時に取れてしまったのだろう。イノシシの牙のような物が下の街に向かって回転しながら落下していた。
「ヒワルブルーカデ!」
ジルは氷魔法で牙のような物を凍らせて、動きを止めた。
「ジルちゃんナイス~♩」
「にっひひ~♡だってあたし強いも~ん♡」
風は止んだが魔物はまだ目を回している。トドメを刺すならこのタイミングだろう。
「ジルさん…!わ、私の方にその氷の塊をと、飛ばしてください…!」
「ん?分かんないけど分かった!ミリアっち、受け取って~♡」
ジルは魔法の杖を使い魔力で氷を飛ばす。
分かんないけど分かったとは何だ…?と思いながらも、ミリアはジルから牙入りの氷の塊を空中で受け取った。魔法の杖の先でしっかりと氷の塊を受け取った事を確認すると、ミリアは小声で詠唱をした。創作魔法だ。
「リバルトスガーディ…」
ミリアは唱えながら杖を魔物に向け、ジルから受け取った氷を魔物目掛けて勢いよく飛ばした。魔物に到達するまでに氷は二倍、その三倍、そのまた四倍、五倍…と数を増やした。最終的に魔物に接近するまでに氷の数は100近い数になっていた。
一度氷の塊を魔物にぶつけて氷を割る。同時にダメージも受け、魔物は唸る。怒った魔物はミリアを一直線に捉え、また猛スピードで走ってくる。
しかし、ミリアの目の前に近づくまでに割れた氷から出てきた大きな牙が魔物より速いスピードで追いかけ、
360度を囲む。魔物は驚いて走っていた足を急ブレーキをかけるように止め、自分の周りを見渡す。
その時、もう一度魔物に攻撃し致命傷を与えた。
100近い数の牙が魔物の全身にハリネズミの針のようにリズミカルにドドドドドッと魔物に突き刺さる。
魔物の体が大きいので、ミリアは数を100近くに増やしたのだろう。ちょうど全身に刺さる数だった。
流石の魔物もこれには耐えられず、体を反らせながら唸り声をあげ、紫色の光になって消えていった。
「よ、良かった…。上手くいった…」
ミリアは安堵した。
「ミリアちゃーん!やったねー♩」
空を飛びながらミリアが抱きついてきた。
リリーに乗ってきた風で二人の髪の毛がふわりと膨らんだ。
「わっ…!リリーさん!は、はい…!成功ですね…!」
「ミリアっち~♡リリーっち~♡あたしも仲間に入れてよ~♡」
ジルも杖を持ちながら両手を広げて二人のもとに駆け寄って来た。
「いや~流石です。お見事でした。今回もまたミリアさんに助けられましたね」
「い、いや、それほどでも無いですよ…。皆さんが居てくださったからこそです…!」
ルークはミリアを褒めて感謝を述べた。
ハルも笑顔を浮かべみんなと合流した。しかし、ミリアと同じ上級クラスのハルは少し違和感を覚えていた。
ミリアが言ったあの詠唱は聞いた事も、習った事もなかった。そして魔術の操り方が異常に素晴らしかった。
なぜなら、一切無駄の無い動きで、あの数の氷や牙一つ一つを繊細に動かしていた。教科書や辞典に乗っているような魔法ではなく、まるで自分で生み出したような魔法に感じられた。
ただ、この世界に創作魔法などは存在しないし、作る事も不可能だ。突然この世界に現れた魔法書や魔法辞典に載っている魔法しか使えない。
もちろん、ハルもこの事を知っていてこう思った。
『この学校でも何度か「創作魔法とか作れたら呪文覚えなくていいし、羨ましいよね~」「うんうん。それにもし出来たら、超カッコイイよね~」などと話題になり、何人もの生徒が創作魔法にチャレンジした。
しかし、誰一人として成功した者は居なかった。
であれば、ミリアの魔法は一体何の魔法でどこから見つけ出したんだ…?』
「ハルー?何考えてるのよー!帰るわよー♩」
「置いてかれて泣いても知らないもんね~♡嘘だけどっ♡」
「あぁ、ごめん。今行くよ!」
返事しつつ思考をめぐらせ、ハルも学校へ戻って行った。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




