表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封鎖区域-ブロックアウト-  作者: 柴咲心桜
第1章 病院脱出
1/4

プロローグ:制圧の朝

 まだ夜の気配が残る未明。


 郊外の国立中央医療研究センターの周囲に、不審な影がいくつも現れた。


 黒い戦闘服。フルフェイスのマスク。


 無線も一切使わず、手信号だけで動く異様な集団。


 その全員が、殺気を纏った沈黙をまとっていた。


 「――作戦開始」


 男は、仮面の下で低く呟いた。


 その声が、無音の闇に落ちた直後。


 病院の非常電源が突如作動し、館内は緊急モードに切り替わった。


 全フロアの自動ドアが強制ロックされ、通用口には重い隔壁が落ちる。


「な、なに……!?」

 看護師の一人が驚き、ナースステーションの端末に駆け寄る。


 だが、何か操作するより早く。


 銃声が一発。


 彼女はその場に崩れ落ちた。


「制圧班、東棟へ。抵抗は許可なく無力化しろ。入院患者は生存を最優先で確保。対象αの部屋は最後だ」


 仮面の男――**“ヴァルド”**は、部隊を指揮しながら静かに歩を進める。


 その足取りは冷静かつ機械的。


 まるで、この病院が最初から“占拠されるために存在していた”かのように。


 モニター室を占拠した情報班が、各階の監視カメラを掌握する。


「問題なし。全ルート制圧完了。医療スタッフ、避難済みエリアに隔離。対象患者はまだ覚醒していません」


「よし。実験開始フェイズへ移行する。」


 ヴァルドは足を止め、厚い鉄扉の前に立った。

 その奥には、最重要区画――B3-17。


 人工冬眠装置で眠る、ただひとりの少女がいる。


「目覚めの時は、もうすぐだ」


 仮面の奥で、男の唇がわずかに歪む。


 それは、この世界の“封鎖”が始まった日。


 そして、彼女――佐伯茉美の運命が動き出す日でもあった。


 ──この病院は、今この瞬間、完全に占拠された。


 


 ──次回『第一章:目覚めの少女』へ続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ