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赤い鳥居が一列にいっぱい並ぶ道を歩いていく。聞こえてくるのは木々の優しい葉っぱの音と二人の足音。小さな黒い友達は僕のパーカーのフードの中でスースーと寝ている。

高風稲荷神社にはよくお父さんが僕をつれてやってくる。僕とお父さんは手を繋ぎ歩いても歩いても終わらない鳥居の道を進んでいく。そんな僕は真下を向きながらなにも喋らずもやもやした気持ちを顔に出しながらお父さんに手を引かれるように歩いていく。


父「どうした一歩。また幼稚園で何かあったのか?」


お父さんの問いかけに一歩はうつむいたままボソッと一言答える。


一歩「………………また変……だって…。」


またあの時の気持ちが込み上げてきた一歩はお父さんの手を強く握り「僕……嘘ついてない……」と言う。その様子にお父さんは「そうだね」と優しく声をかけるも、納得のいかないような一歩は「何でみんな……見えないの」と悔しそうに言う。


父「一歩、一歩はみんなに見えてほしいの?」

一歩「……うん。そしたら僕、嘘ついてないってみんな分かってくれる…。」

父「そうだね。でもね一歩、世の中には見えないの人もいるんだよ。」

一歩「……なんで?」

父「みんな色々あるんだよ。一歩は見えてほしいと思っていても、見えない人もいるし、一歩のように不思議なものが見えてても、見たくない、怖いって人もいるんだよ。今、父さんには見えてるけど、一歩には見えてないものだってあるんだよ。」

一歩「……。」


黙りこむ一歩に父は「今は分からなくても、いつかは一歩も分かるよ。」とまた優しく声をかける。


父「いまよふのみ めのそやを

おろゆわまご こくよにしとう…… 」

一歩「?…なにそれ?」

父「おまじない……昔、助けてもらった人から教えもらったんだ。」

一歩「……」


お父さんはそのまま一歩の頭を優しくなでる。一歩はおまじないのおかげなのか少しだけもやもやがなくなり、ちょっとだけ足が軽くなったような気がした。いつの間にか赤い鳥居は終わっており階段を上り終え、一歩の目の前には、木々に囲まれた大きな拝殿がたっている。

お父さんは財布から五円玉を2枚取り出すと、1枚を一歩へ渡す。もらった一歩はお父さんと一緒に賽銭箱に五円玉をなげいれ、上からたれさがった紐を左右に揺らすとガラガラと鈴があたりになり響き二人揃って二拝二拍手一拝をする。しばらくするとお父さんは顔を上げて一歩に声をかける。


父「ちゃんとお願い事した?」

一歩の表情は先ほどよりも柔らかくなっており、父に向かってコクりとうなずく。


一歩「お父さんはどんなことをお願いしたの?」

父「んー。誰もが自分らしく、自由に暮らせますように……かな。一歩はどんなことお願いしたんだ?」


一歩「僕は……」






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