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第六章59 【1月1日/初等部4年生活動中】3/元旦での【天村 能活(あまむら よしかつ)】3

 【能活】の【先人が残した10大修行苦行】の1つ、【百姫(ひゃっき)救出行(きゅうしゅつぎょう)】は続いている。

 64番目の扉から戻ったと思ったらすぐさま65番目の扉を開けて、別の【異世界】へと飛び込んだ。

 今度は【海の底】に飛ばされた。

 このままでは、溺れ死んでしまう。

 だが、今度も【能活】は慌てない。

 慌てれば死期を早めるだけだと直感的に理解しているからだ。

 いつもの様に、自分の【力】の確認と状況確認をした。

 それにより、今回は【融合】の力があることを確認し、すぐに近くの魚を捕まえて同化した。

 えら呼吸を確保して、一命を取り留めた。

 この苦行は行ったら即死という事はまずない。

 何らかの方法で、生き残る方法は必ず存在する。

 後は出来るだけ冷静になってそれを少しでも早く見つけるだけだ。

 【能活】はそれを感覚的に理解していた。

 これまでの64回の苦行で得た経験値だった。

 最初の方は表現するのも憚れるほどのみっともない醜態をさらしていた。

 どうしようもない恐怖から泣き叫び、糞尿を垂れ流した事もあった。

 だが、それでも彼は生き残った。

 泥水をすすり、ネズミでも何でも生きるために食べて、生還した。

 それを繰り返す内に肝が据わってきた。

 高校生の年齢ではまず、得られない、貫禄の様なものも出て来た。

 それは、それまでの歩けば女子がきゃーきゃー言ってはやし立てていたイケメンである彼の人生では得られない貴重な経験だった。

 やはり、どん底を経験すると顔つきが変わってくるものである。

 数々の恥や恐怖を知り、彼は人間的に数段大きくなっていた。

 歴戦の勇者や、偉人にも匹敵する覇気が彼からは感じられる様になっていた。

 それでも毎回、死ぬような目にあっている。

 死ぬような目にあうのだが、どこか達観している様な感覚を覚え、自分なら何とか出来ると思うようになり、一皮どころか数十皮くらいむけた様な力強さを彼からは感じ取れていた。

 そして、今回は水中戦になる事を直感的に理解し、水中にある【深海王都】を見つけていつもの様に【姫君】救出の任務をもらう。

 どうやら、今回は【人魚姫】の【救出】らしい。

 【能活】はいちいちとんでも展開に驚いたりしなくなった。

 どんな事でもあり得るのだと思うようになっていた。

 これは発想にも影響する。

 どんな不思議な事も説得力さえあれば、肯定できるのである。

 その事を理解した【能活】は、【想像力】や【発想力】も段違いとなっている。

 心身共に、これまでの【能活】とは比べものにならない程の力を得ていた。

 そして、今回も命ギリギリの戦いを制し、【姫君】救出を成功させるのだった。

 【能活】は叫ぶ。

「後、35人」

 と。

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