第六章39 【12月31日/初等部4年生活動中】A4/【真緒】と過ごす大晦日4
【神】と【悪魔】の計らいにより、【真緒】と【芳一/弱転】は架空の設定で年越しデートをしている。
午前、午後と店を周り、夜になり、人通りの少ない所でスマホで年末番組を見ながら、【夢】を語り合うフェーズに移った。
甘酒を買って飲みながら人があまり居ない神社で語り合う事にした。
甘酒はお正月という話もあるのだが、日が明ければ、この魔法は解けてしまうので、今年の内に買っておいたのだ。
【真緒】は、【芳一/弱転】の肩に頭を付けながら、
「先輩・・・覚えていますか?・・・先輩が原案をくれて私が、初めて二次創作じゃなくてオリジナル作品を作ろうとした時の事」
と言った。
【芳一/弱転】は、
『え?あ、う、うん・・・【マイセルフ・エネミー/自分自身の敵】・・・
男は閾を跨げば七人の敵ありって言葉から・・・自分自身には7人の敵が居るって設定で・・・』
と内容を少し解説した。
【真緒】は、
「そうです・・・覚えていてくれたんですね・・・ありがとうございます・・・素直に嬉しいです・・・
先輩がせっかくお膳立てしてくれたのに・・・私、全然出来なくて・・・
悔しくて、先輩にあたって・・・
ごめんなさい・・・悔しかったんです。
私がスランプ以前に全然作れない中、先輩だけ、どんどん物語を量産していて・・・
何で私には先輩の様な才能が無いんだろうって思って・・・
だからですかね?
先輩は当時、それは人に聞くのが当たり前になっていて自分で調べないからだって言ってくれたのに、私、バカだからバカにされたんだと思って逆ギレしちゃって・・・
図星をつかれてキレて誤魔化したんです、私・・・
みっともないですよね・・・」
と言って涙ぐむ。
『・・・で、でも・・・素直に自分の悪いところ・・・認められるの凄いと・・・思うよ・・・』
と言う【芳一/弱転】はコミュ障なので言葉が出てこないがそれでも何とか【真緒】を励まそうと必死だった。
それが解るから、【真緒】は、
(駄目ですよ先輩・・・そんな事されたら・・・ますます好きになっちゃうじゃないですか・・・駄目です・・・もっと突き放してくれなくちゃ・・・)
と思った。
すると【芳一/弱転】は、
『だ、大丈夫だと思う・・・よ・・・アイディアならいっぱいある・・・から・・・あ、アイディアのサブスク・・・とか・・・足りなかったら・・・また、違うの出す・・・から・・・持ちつ持たれつだよ・・・』
と言った。
「駄目ですよ先輩・・・そう言うのはフィフティー・フィフティーじゃなきゃ・・・
私の方が貰ってばっかじゃないですか・・・」
『そっそそそ、そんな事・・・』
「ありますよ」
『そ、それは・・・』
「ありがとうございます・・・先輩は優しいですね・・・」
『そんな事は・・・う、うぇえ・・・』
「あ、ごめんなさい・・・先輩を泣かそうと思った訳じゃ・・・」
『ご、ごめ・・・先輩なのに・・・みっともなくて・・・』
「ううん・・・その気持ちだけで嬉しいです私・・・」
『う、うぇえ・・・』
「先輩・・・ぎゅってして・・・良いですか?・・・」
『ぎゅ、ぎゅって?』
「ぎゅはぎゅです。だっこです。ハグです。抱擁です」
『え?ひ、人が見てる・・・よ・・・』
「他の人もやってますよ・・・あ、先輩はこの言葉、嫌いでしたね・・・誰かの真似はしない。
それが先輩ですものね・・・」
『い、いや・・・』
「ごめんなさい・・・冗談です・・・先輩があんまり可愛いからちょっとからかいたくなったんです」
『え?そ、そうなの?』
「どうなんでしょうね?」
『え?』
「ふふっ・・・内緒です・・・」
と言う感じで良い感じの雰囲気になっていた。
だが、本日の【真緒】の予定は詰まっている。
次のフェーズに移らなければ、今日中に全ての予定をコンプリートする事は出来ない。
気がつくと、まばらには居たはずの人が【芳一】と【真緒】と【美架】を残し、居なくなっていた。
この繁盛しているとは言えない神社でもささやかながら年越しイベントがあり、【宮司(ぐうじ)】達も少なからず居たはずなのに人気が無くなっていた。




