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ep.8 今できること


「お前に俺のようなレベルを求めているわけではない、お前はただ俺の後ろに付き従っているだけでいい。それくらいならお前にもできるだろう?」

「それはそうですが」

「決まりだな。洗礼には俺も付き添うとしよう」



兄は珍しく少しだけ口角を上げる。機嫌の良い兄とは対象に俺の心はかなり地の底まで落ち込んでいた。



(兄のようになれないレッテルを家の中だけじゃなく外でも貼られるのか。それに両親は兄の言いなりだし…きっと『影武者』として兄の代わりに囮になる役割を果たしつつも、表でも兄を守れと言い出すに違いない。あぁより寿命が縮まったな)



「俺はこのまま王家との茶会に出る。洗礼の時に」



兄はそういって足早に去って行ってしまった。更に重くなった足を引きずって部屋のベッドに体を投げ出す。



「どうしようもないよな。俺にできることはもう洗礼式まで息をすることくらいしかない」



仰向けになりながら天井を見つめる。洗礼式で万が一にも優秀なスキルを手に入れたとしても結局兄の傍に付くなら状況はあまり変わらない。正直、裏から兄を守って死ぬか表から兄を守って死ぬかくらいの変化しかないだろう。



だがそれよりも最悪なのはスキルも何もかも両親の期待に満たなかった場合。その時は兄の危機を分散させるために裏で影武者として囮に使われるだけではなく、その役割を果たしながらも表立って兄の補佐、そして有事の際には兄を率先して守らなくてはならなくなる。



「暗殺で死ぬよりも過労死の方が先だなこれ」



というか、普通の貴族は洗礼を終えたらそのまま貴族学院に入るのが当たり前なのに、兄という最高の前例がいるせいでその選択肢は浮上すらしないのはどうかと思う。



兄は貴族学院で学ぶべき教養など幼い頃で修めている。それにコネクションを広げることが目的の貴族学院に入るよりもすぐに貴族としての役割を果たす方がこの国の利益になると考えられたのだろう。飛び級という前代未聞の措置で貴族学院を卒業したことにされた。



「いや、でも万が一があるかもしれない。諦めるな俺。もしかしたらスキルが大当たりかもしれない!」



いつまでも憂鬱な未来を想定してもきりがないので、結局俺は洗礼まで何も考えないことにしたのだった。



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