ep.2 この世界の在り方
部屋に戻ってから、本棚にある数少ない本を開いて文字を目で追う。兄の天才っぷりを知っていた両親は俺が4歳になるまでの間だけは教育を詰め込もうとしてくれた。しかし俺はどうやっても兄に至るほどの修得が出来ぬまま両親に見捨てられた。
今では教育係もおらず、こうして過去に買い与えられた本を読むことで少しでもいいから知識をつけようとしている。読み進める内に次の目次へ進んだのか、『12歳の洗礼』と書かれたページを指でなぞった。
「もうじき俺も洗礼を受ける年になるのか。」
この世界には神が一柱だけ存在している。そのため世界共通で、その神に対して12歳になることを教会で報告するのが『12歳の洗礼』だ。何故12歳なのかはわからないが。
「…スキル、少しでも強いものであればいいんだが」
12歳の洗礼の際には神や世界を創り出した際に神が自ら力を分け与えて生み出した『精霊獣』と呼ばれる存在から祝福として、使える魔法属性やその人間しか使えない『スキル』を授けられるとされている。
「この世界における魔法属性は、火・水・土・風・雷そして、闇と光。多分俺は闇は持っているとは思うけど…アレみたいに何属性も持った希少な存在かと言われたら…」
何故俺が洗礼を受ける前に自身の持つ魔法属性に検討がついているのか。それには先ほどの神から直接力を分け与えられた『精霊獣』が関連している。
神話において精霊獣は神から『魔法属性にまつわる強大な力』を分け与えられており、生み出された精霊獣たちは各地へと降臨し、その土地に住まう人々にその力を持って守護を与えたというのが通説だ。精霊獣は全部で7体おり、光属性を司る精霊獣は何故か降臨しなかったため、それ以外の6属性の君臨に合わせその土地に国ができた。そのことからこの世界は6つの国々で成り立っている。
つまり、その降り立った精霊獣の属性にその土地で生まれた人間は左右されやすいということである。このフィーニス王国は闇属性を司る精霊獣が降臨したとされており、その証拠と言わんばかりに国の民の大多数が闇属性を与えられている。…まぁあの天才といわれるあいつはそれ以外の属性も持ち合わせているが。
「2属性以上を持つ確率は20%以下、3属性に至っては10%。うちの天才様はまぁ素晴らしいことだな。4属性なんて、ほかの国にもいないだろうよ」
そう。我が家ご自慢の天才嫡男様は4属性を持っていた。かつそのスキルは『創造』、兄の魔力と思考力に合わせて何でも作りだせるスキルだった。もちろん、4属性も持つ素晴らしい兄は魔力も膨大であると言われており、その魔力量はこの国の魔導士団全員分以上に匹敵すると言われているそうだ。
兄の強さや異端さばかりを思い出して気分が少し落ち込んでしまう。自身もそこまでいかずともある程度の祝福を授かりたいものだが、そればかりは只人にはわからぬことである。
「スキルって言っても、喜ばれるのは多分戦闘系とかほかの貴族も持ってないような珍しいものだろうな。でも、『裁縫』とか『鍛造』とかの生産系統に関連するものもある。貴族の俺が生産系統のスキルを持っても仕方ないし…そうだった時の父親や母親の顔を想像しただけで吐きそうになるな」
元々期待されてはいないし、兄に比べれば当然劣っている俺は周囲に『病弱で外へも出られないような次男』と説明されているらしい。スキルや属性である程度見切りをつけて遠い辺境の地の貴族へ養子に出すか、最悪一生幽閉か。
兄のメンツに傷をつけないためならばあの両親は何でもするだろう。
主人公ボッチだからあまりセリフ入れられなくて焦りますね…。