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ep.12 光の過去と神の無茶ぶり


「ちょっと待ってください。俺が国外へ逃げるしかないっていうのはわかりますけど、目的が一致しているからといって精霊獣と旅なんて…それに拒否してるじゃないですか」

「えぇ。神のミスのせいで外に引っ張り出されそうになっているんです。拒否したいのも当然と思いません?それにもう何かめんどくさくて…魔素が枯渇して滅ぶんならもう滅んじゃえばいいんじゃない?みたいな?」

「いや何言ってんの!?君は枯渇させないためにいるよね!?ミスったのは僕が悪いけどさあああお願いだからいい加減外に出て!1匹じゃ怖いのかなって思って彼も誘ってあげてるんじゃんんん」

「怖がってるんじゃないです~!!もう人間と関わりたくないんですよ!あなたも覚えているでしょうが!」



白い龍は尻尾をビタンビタン地面に打ち付けながら抗議している。…過去に人間と何かあったのだろうか?



「あの、過去に人間と何が?」

「いや~彼の場合は色々可哀そうだったんだけど、あれは400年前…」



神様はどうやらおしゃべりであるらしい。とてつもなく話が長かったので割愛する。



「要は、400年前にどこぞの国の領主が自身が王族にとって変わりたくて精霊獣との従属契約を目論んだと。で、ただの人間じゃ召喚できないだろうから異世界から人間を呼び出して、何の方法を使ったのか不明だけど、この精霊獣を引っ張り出して契約を迫り続けて、逃亡した彼をその後領主一族は100年追いかけたと。」



というか、異世界から直接召喚とかできるんだ。



「もう、もう、本当に最悪な100年だったんです!意味の分からない異世界人は契約できたら自分も王族になれるからとアホみたいな執着心で私を追いかけまわすし!その男を神がしびれ切らして元の世界に無理やり返したと思ったら、異世界人召喚またやらかして、しかも召喚された人間が個体の魔力の追跡ができたせいでトカゲのしっぽ切みたいに次から次へと追いかけて契約迫ってくるし!」



龍は小さい子どもがぐずるようにぴえぴえ泣きながら語ってくる。相当なトラウマになってしまったようだ。



「ていうか、異世界人召喚とか普通の人間でもできるんですね」

「いや~、アレには僕も参ったよ。実はあれ、本来は『接続』っていう工房系スキルでさ。で、何かを引っ付けたりするスキルでしかなかったものを、膨大な魔力で無理やりこの世界の外側に『接続』したらより強大な存在が呼べるんじゃない?って思いつかれちゃって。しかもこの世界以外の存在だからここに来ちゃうと強めの魔力とか持ちがちでさぁ。世界の制約上この世界に存在する人間にはその魂に問題ない程度のスキル上げなきゃだしぃ…」

「神様本当にろくなことしないな」

「ひどい!?」



俺はもはや神を敬う気持ちなど忘れて思わずそう言ってしまう。



「最終的にどうなったんですか?光の精霊獣が国に降り立った記録なんか残っていないし、そもそも異世界人召喚ができることも載っていなかった気がするんですけど」

「最終的に私がキレてその領地一帯全て滅ぼしました」

「ん?滅ぼしたぁ!?え、そこまで追い詰められてたんですか!?」



驚く俺に龍はため息をつく



「追い詰められていたのはどちらかというと、あの領主一族でしょうね。異世界人召喚の方法や私の事を必死に王族に隠していたようですから。それを怪しまれて追及が来そうになって、どうしようもなかったのでしょう。領民の命を盾にこちらを脅してきたのです」

「領民の命?!え、どういうことですか?」

「精霊獣がその土地を守る存在であることは周知の事実だろう?だから、その領主らはその土地に住まう平民の命と魔力を無理やり使用して、彼を無理やりに従属させようとしてきたんだ。その時は一万くらいの命だったかな…」

「い、ちまん…」



膨大な数の命が欲望のために利用されてしまったのか



「珍しく追いかけるのではなく、無理やり召喚されたと思ったら周りは死体だらけで領主一族は何かわめいて脅してくるし…あ、もうこれ無理だと思って灰も残さず焼き払いました」

「彼が焼き払ったのもあって、異世界人召喚の技術や光の精霊獣を従属させようとした事実も全て闇の中になったってことだよ。まぁ、それらが王族に知られなかったのは幸いだったけど」

「私はもう、あの惨劇で人間に失望してしまいました。あんな…自分の私欲のために幼子老人関係なく命を奪うなど…もうそんな人間とかいらないから滅んでもいいかなって」



いやまぁ、確かにそんなことがあればもはや人間不信になってもおかしくないかも。



「神様、こうも言ってるんですし俺の逃亡旅に無理やり巻き込むわけには…」



俺も神に進言する。すると神は首を振ってこう語った。



「いや、ここからは彼にもまだ伝えていないがね。実はどうやら光の精霊獣が従属できる一歩手前だったことを記した記録がまだ残っていたようだ。それが王族に献上されてしまったみたいでね」

「は!?聞いていませんでしたが!?」

「うん、今言ったしね」



龍は目を吊り上げると、神に向かって爪を振り下ろしまくる。しかし神はにこやかにそれを回避。なんかすごいものを見せられている。



「そういえば、その国ってどこの国なんですか?」

「あ。言ってなかったっけ?君んとこだよ。ルナード君」

「え、フィーニス王国?!でもそんな歴史聞いたこともないですけど」

「それはそうでしょう。突然領地が滅んだと知られたらまずいですし、理由はわからないけど隠ぺいしておけとなったんでしょうね」

「えぇ、適当過ぎる」



神は「話を戻すけど」と続けた



「恐らく王族は光の精霊獣である彼を狙うだろうね。しかも今場に引きずり出すことさえできれば、魔力量も力もある君のお兄さんがいる。従属できる可能性は十分にあるということだ」

「そういえば!兄は王女との婚約が決まりそうだって両親が」

「あぁ、王族は君の兄と婚約を結んでしまえば光の精霊獣と最強の人間、その双方が手に入ると踏んでいるんだろう」



なるほど、そこに兄の婚約の話が繋がるのか。でも、俺は逃げる気だけど光の精霊獣であるこの龍はそもそも下界に降りる気はないと言っているし…



「僕は彼に下界に降りてほしいし、君は彼が旅に同行することで逃げられる確率は格段に上がる」

「確かに、俺だけでは逃げられないと思いますけど…」

「待ってください。だから私はもう関わりたくないんですって!そりゃ、私だってあんなことさえなかった時にはお忍びでこっそり降り立つこともありましたけど…でももう…」



こんなにトラウマになっている龍には酷な話になっているのではないだろうか。



「いや、君にもメリットはあるんだ。光の精霊獣として従属契約を結ばれそうになっているのであれば先に他の誰かと結んでしまえばいいんだよ。それも絶対に君を狙う国に君の従属契約権を渡そうとは考えない相手にね」

「そんな相手この世界のどこにいるんですか…あ」



そこで一体と一人は俺に視線を向けてきた。いやいや、待ってくれ。



「まさかとは思いますけど、契約って俺にさせようとか考えてないですよね」

「そのまさかだよ!」

「うそでしょう!?俺にできるわけがないですよ!」



この神様いくらなんでも無茶ぶりが過ぎるだろう!


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