プロローグ
生まれて自我を得てから、最初に覚えた感情は「兄への劣等感」だった。
「こんな簡単なことが何故出来ない?…まぁいい。時間の無駄だ、ここから去れ。俺は忙しいんだ」
何が原因で兄にそんなことを言われたのか…今となってはもう思い出せないが、その言葉は幼い俺の心に深く傷をつけていたことは確かだ。
兄は世間を知らない俺でも察することができるくらい正に「神に愛された存在」だった。
1歳の時点で言葉を流暢に話し、3歳の頃にはこの世界の貴族が学ぶべき教養を全て修め、むしろ教育係の知識が追い付かないレベルだったという。
兄の存在がこの国に広く知れ渡ったのは4歳の頃だ。兄は若干4歳にして国の戦力が一変してしまう様な兵器を己1人のみで開発して見せたのだ。造られたその兵器は魔法のみで争う戦争に革命を起こした。魔法が使えない人間でも扱え、その威力は一発で何十、何百という人間を瞬時に殺めてしまうほどだったためだ。
当時、このフィーニス王国は海の境界線を巡って隣国であるフォータル公国との争いが起ころうとしていた。そんな最中、前代未聞の破壊兵器を開発した兄を脅威に感じた隣国は和平を考案。兄は「天才」という異名と同時に「若き英雄」という称号を手にした。
そんな時だ。俺が公爵家である両親のもとに生まれたのは。
「この子もきっと兄と同じような、そうでなくとも兄の役に立てるような子であるはずだ」
そんな期待を寄せていた両親も、俺4歳になる頃には兄との違いに落胆し、期待どころか存在すらも無視してくるようになった。
そうしてそのまま月日は過ぎ去り、両親の冷めた態度や兄の冷たい声に耐え切れず日々泣いてばかりだったことしか思い出せないような幼少期を抜け、俺は11歳を終えようとしている。
初めて小説を書きます。どうか温かく見守ってください。