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莠の凪  作者: 藤泉都理
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花々の楽園





 休日にもかかわらず、どこもかしこも開けっ放しの高校の階段を上って、上って、鍵がない格子状の竹扉を押し開けた先は、屋上。

 野生植物である花畑、小さな花々の楽園が広がっていた。


 カタバミ。

 アカカタバミ。

 オッタチカタバミ。

 イモカタバミ。

 ムラサキカタバミ。

 セイヨウタンポポ。

 オニタビラコ。

 ノゲシ。

 ヒメツルソデ。

 ツタバウンラン。

 

 いつの間にか自生していたのだと校長先生は言っていた。


「七星天道虫って言ったらここでしょう」


 ここを訪れればいつも数えきれないほどの七星天道虫を見かけるのだ。

 春も夏も秋も冬も。


(あれ?七星天道虫って年中活動してるんだっけ………まあいいか)


 私がドヤ顔になっておばあさんを見れば、おばあさんは目を細めて屋上を見つめていた。


「懐かしいですか?」

「ええ」


 つい溢しそうになった。

 笑いながら。

 この高校は未来ではどうなっているんですかって。

 でも寸での所で押さえた。

 おばあさんの未来云々の話を信じてはいない。

 おばあさんの与太話だって思っている。

 けれど。今は茶化すべきではないと、思ってしまったのだ。


「じゃあ、七星天道虫を見つけますか。すぐに見つかるでしょうけど」

「そうね」


 そう話して数秒後。あっという間に見つかり、七星天道虫をおばあさんが持っていたガチャガチャ用のカプセル型虫保育機に入れた所で。

 事件が勃発した。

 またぎんくんが現れたわけではない。

 同級生の機械大好き、開基かいき君が突撃して来たかと思ったら、カプセルをおばあさんの手から奪い取るばかりか、あちらこちら走り回って何かを回収する素振りを見せては、脱兎の如く立ち去って行った。


「何だったの?」

「ここの七星天道虫を全部取って行っちゃったみたいね」

「開発に必要だったのかもしれませんね。まあ、しょうがない。野原に行きますか」

「いえ。彼を追いかけましょう」

「え。ちょっと待ってって。もう」


 私の機械開発発言がおばあさんの琴線に触れたのか。

 開基君の後を追ったおばあさんの後を私も追ったのであった。

 










(2022.7.5)


 

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