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莠の凪  作者: 藤泉都理
16/27

開基の第六感




 ぎんくんよ。

 未来の自分からの手紙を読み終えた開基が、おばあさんに質問をしようとした時だった。

 おばあさんが指を差した先に、ぎんくんが居た。

 二足歩行四足疾駆可能な変形銀色ロボット、ぎんくんだ。

 頭に群青色の朝顔(か、昼顔か、夕顔かは分からないからとにかく朝顔と仮定する)を髪の毛みたいに巻き付けながら、自分たちに向かって無表情で(そもそも表情はないがもうちょっと愛想の良い顔だったような気がする)追いかけて来る。


「早く歌って」


 何か嬉しそうだな。

 開基は思った。

 おばあさんが何やら嬉しそうだ。

 まるで中井恵の、昔の自分の歌声をとても待ち望んでいるような。

 今の所、未来現在双方の中井恵、及び、七星天道虫を抹殺しようとする植物に寄生されたぎんくんを止められるのは、確かに、現在の中井恵の歌声しかない。

 ゆえに、おばあさんが現在の中井恵の歌声を強く求めているのは、よくわかるのだが。わかるのだが。


(何だろう。それだけが理由じゃないような気がするっす。昔の自分の歌声が懐かしいから聴きたい?う~ん。それも違うような気がするっす。もっともっと、すんごい熱量を感じるっす)

 

 例えるなら、そう。

 他の人には見向きもされない、ファンは自分一人だけ。

 小さなライブハウスで歌う、強く憧れている歌手に、歌ってと叫びながら懇願する時のような、そんな熱量。


「あの」

「え?何?」


 歌の効果が出たのだろう。

 ぎんくんは動きを止めたが、念の為にとおばあさんに促された中井恵が歌い続ける中、開基がおばあさんに話しかけると、おばあさんにすごく怖い顔を向けられた。

 この素晴らしい歌声を聴くのを邪魔するんじゃないと言わんばかりの顔である。


「いや。ただの勘なんすけど」

「だから何?早く言ってちょうだい」

「あなた、本当に未来の中井恵っすか?未来の中井恵に化けた誰かじゃないっすか?」











(2024.6.23)




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