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莠の凪  作者: 藤泉都理
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海老茶式部




 寒の戻りと言うべきだろう。

 湿気の入り混じる熱風から乾燥の目立つ寒風が四方八方に吹き荒れる。

 暖かいなんてものじゃない。

 初夏のような暑さから解放されたのはとても嬉しいのだが。

 気温の激しすぎる落差に身体が参ってしまい、終始眠気に襲われる始末。

 咳や鼻水、熱などといった己をひどく苦しめる症状がないのが救いなのかどうなのか。


 いや。

 訂正。

 ひどく煩わしい症状が一つ。

 幻覚。

 おばあさんが見えるのだ。


 写真でしか見た事がない祖母たちでもないおばあさんが一人。




 焦げ茶の瞳。

 青色の眉毛。

 丸い眼鏡。

 少し曲がっている腰。

 真っ赤な杖。

 垂れている耳。を福耳と呼ぶべきか悩ましいだってなんか嘘っぽい。

 白く美しい歯並び。は多分入れ歯だろうと予測。

 矢絣の紬に海老茶色の袴、漆黒の編み上げ革靴。は卒業式で着てみたいと思っていた。




「私は私が護るからね。もう大丈夫だよ」


 観察して、幻聴まで聞こえて来て、身体が限界を迎えたんだろう。


 意識が早いか、瞼が早いか。

 世界を遮断した。


 靴を脱いでくださいとだけ言って。


 なぜかドヤ顔にひどくイラっとしながら。









(2022.4.13)




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