私の大好きな○○くん
初めて小説を書きます。
至らないところまりますが、楽しんでいただけたら幸いです。
是非、最後まで読んでください。
教室を開けると恋の香りがした。
恋愛をすると人は変わるというが多分、見える景色が変わってしまうからだ。
私はつい最近まで恋愛とはほど遠い世界にいると認識をし、流行のラブソングにもついていくことが出来なかった。しかし、それは単純に共感することができなかっただけなのである。
私は生まれて初めて、現実世界との繋がりをもつことができたのかもしれない。
それはきっと彼の存在が大きいのだろう。
彼の名前は二条疾風。
1年生の時から彼の噂は聞いていた。スポーツ万能でかっこいいと女子たちの会話で聞いたことがあった。どうせサッカー部に所属しているため、スラッとした体系にどこかしっかりとした筋肉質と、シュッとした小顔に整った顔のパーツがとてもかっこいいとかなんだろうなと。
でも初めて彼と話をした時、見た目とか関係無く優しい内面に惹かれ、あっという間に恋に落ちた。
それから毎日のように彼のことを考えてしまうようになった。
でも彼には好きな人がいる。彼女の名前は小鳥遊玲子
なぜ、分かるかって?好きな人の好きな人は分かってしまうものである。
小鳥遊玲子は長い黒髪ロングヘアに、はっきりとした二重に黒く大きな瞳をもち、細い身体のラインからは想像できない、制服の上からでも分かる、主張しすぎないくらいの豊かな胸とまんまるとした小尻が男性陣の視線を釘付けにする。
頭脳明晰で誰にでも優しく平等に接する彼女は、まさに学園のマドンナに恥じない姿であった。
そして彼女は誰に対しても「さん」を付けて呼ぶのであった。
私には幼馴染みのAがいる。Aは程よい距離感を保ちつつ、客観的に物事を判断してくれるため、困った時には相談をしている。
今回、告白した方がいいかなという相談に対しては断固として拒否された。「絶対、後悔する。付き合えるわけがない。」など、ここまで否定されるのは初めてだった。
漫画とかだったらよく、美人なヒロインが出てきて慌てる幼馴染みとか出てくるが、Aに限ってそんなことは絶対あり得ないことなのである。
どんなに否定されようと、1つだけハッキリしていることがある。それは彼を大好きな私、葉桜瑞喜が確かにここに存在していることである。
私は自分の席に着くと、机の中に謎の手紙を発見した。手紙にはただひと言だけ、
『葉桜さん、17時に屋上まできてください。伝えたいことがあります。』
この時に私の頭の中に真っ先に浮かんだことは、いつものようにAに相談しようかという考えだった。
しかし、告白する件で全否定されたためこの時ばかりは相談する気にはなれなかった。
私は悪戯なのではないかと疑ってしまったが、このデジタル化の時代に手紙というものがとてもロマンティックに感じ私の心はときめいた。おまけに手書きの文字がなんとなく疾風くんの字に似ているような気がしてさらに舞い上がってしまった。
私はさらに妄想を膨らませ、挙句の果てには疾風くんを好きになった瞬間を思い出していた。
―――――数か月前―――――
あれは、私が図書館でシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を読んでいる時だった。
最初は、私だけでほぼ貸し切り状態だったため、落ち着いて自分の世界に没頭していた。
だが、その環境はすぐに壊れてしまった。
図書室のドアが開かれると、何人かのクラスメイトが入ってきた。その男子の集団の中に疾風くんがいた。
私は途端に高校生にもなって、『ロミオとジュリエット』を読んでいることが恥ずかしくなった。
そのクラスメイト達が、こそこそと小声で話している姿を見て、自分のことを笑っているのではないかと思ってしまい、途中だったが本を隠すように元あった場所にしまおうとした。
その時だった。目の前に疾風くんが現れたのだ。私は驚きのあまり「あっ、」と声を出し、本を落としてしまった。そして運が悪いことに、表紙が見える形で落としてしまったのだ。
彼はすぐに本を拾い、私に渡してくれた。その時にある言葉をかけてくれた。
「葉桜、本を読んでるなんてスゲーよ。俺には絶対真似できないからさ。」
その何気ない言葉で私は救われたのと同時に、恋に落ちてしまったのだ。
―――――夕方―――――
私は今日1日、今朝の手紙の影響もあり勉強に集中することができなかった。
約束の17時になり、私は屋上へと向かった。
そこにいたのは……………………
疾風くんだった。
その時の私はとても嬉しく、言葉にすることができなかった。
私は手紙を持ちながら、フェンスにいる彼の側まで駆け寄った。
「疾風くん、お手紙ありがとう。とても嬉しかった。ほんと、夢みたい。」
私がそう彼に伝えると
「夢じゃないよ、手紙なんか書いてごめんよ。実は話があるんだ。」
彼はそう云って、私の後ろに周り「手紙、ちょっと貸して」と耳元で囁いた。
私は無言で頷き、手紙を彼に渡した…………、その時だった。
彼は私の足を持ち上げ、外へと放りだしたのだった。
私は何が起きたのか理解できないまま、そのまま地面へと落ちていった。
「ドンっ、」という鈍い音がし、私はそのまま絶命したのだった。
―――――4時間前―――――
その日の昼休憩の事である。
黒板の前で他の男子と駄弁っていた疾風くんを見ている時だった。
小鳥遊玲子が突然、私の前の席に座り話しかけてきたのだ。
「葉桜さん、前から仲良くなりたいと思っていましたのよ。」
私は突然の事で頭では何が起ったのかとうてい理解することができなかった。
近くに座っていたAをはじめ、クラスの皆が驚いている様子だった。疾風くんはとても動揺していた。
「葉桜さん、いつも読書してますよね。私も実は本を読むことが好きなんですよね。特に古典ものに最近はまっていますわ。周りの友達で読んでいる方居なくて・・・・」
「”古典とは、人々は称賛するが、読まない本のことである”」
私がそう口を開くと彼女はすかさず、
「マーク・トウェインですわね。」
それは私が望んでいた回答だった。初めて自分を理解してくれる人が現れた気がした。
彼女は満面の笑みで、気恥ずかしそうに私にこう問いかけたのだった。
「ねぇ、これから瑞喜くんって呼んでもいいかしら?」
――――――完――――――
いかかでしたか?!
皆さんは違和感には気づけたでしょうか?
最後まで楽しんでいただけたら幸いです。
是非、感想など聞かせていただけたら嬉しいです。