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第三十九話 ふつかめいろさん


皆元気に走ってる。

迷路は一旦後回しにして、今はこのダンジョンの手書き地図を見てもらいながら、あちこち案内してる。


自分の荷物の不要物は、荷物持ちさんの負担を減らすために最初の部屋へ置いてきた。

そこから先ずは海水プール。

今は滑らかに何も見えなくなってる青い壁を指差して、

「あそこに隠し扉があったの」

と教える。

次に電撃罠の手前まで。

パシーン!と放電するのをみせた。

そして中央通路に戻って、開いてた小部屋とか見て回る。

皆の協力があっても、閉まってる扉は開けられなかったし、開いてる扉を閉めることもできなかった。

でも半ば開いてる扉は御蔭様で、拳一つほどの隙間だけ残して、ほぼ閉めることができた。

全部試したわけじゃないが、扉が固いのは再確認できたし、絶対動かせないわけではないのもわかった。


恐怖の窓と地獄めいた暗渠へもお連れした。

皆も非常に緊張していたが、さすがに8人も明るい灯火を点けて行動しているので、恐ろしがるというよりも、極度に戦意が昂揚している。

その勢いのままに、暗渠へ突入するのではないかと危惧されるほど。

だが、皆自制して黙して語らず引き返した。


暗い中をゆっくり走りながら、

「あれは恐ろしかったな!」

と、誰かが言葉を零した。

「あそこは開きっ放しだから、怖いのよね」

「いや、それもそうだけど、怪物がいただろう?」

ビフォーベさん?

「え?」

「何か居た?」

「端に居た俺だけか、見えたのは……」

「何を見たの?」

「怪しく緑色に輝く闇の中で、半透明な、遠めにも大きな不定形の何かが、人に似た別の怪物を襲っていた」

何かを思い出したのか、身を震わせて、

「襲われたと思ったら、ずるりと肉が溶けるようにこそげとられて、あっという間に骨だけになって崩れ落ちた」


暗闇に包まれる通廊で、彼の恐怖が皆に伝染してきた。

T字路についたので、恐怖方面に行かないようにガムテを壁から壁へ張り渡しておく。


--


再び横穴へ。

今度は階段を下へ。

廃病院めいた短い廃墟を案内してから、終点の二重扉を初めて完全開放して、屍人の荒野へ全員で出て行く。

荷物持ちを護るため、先頭の俺と左後ろのシコーキと右後ろのギデア様で三角形を作り、中間を埋めるように残りの近習が隊列を形成。

少し病院(仮称)から離れるとこちらを感知しだした亡者どもが襲ってくるので、骨と屍人は斬り飛ばして、悪霊はシコーキに祓って貰って進む。

まっすぐ進んでゆくと、またしても


WAっHAっHAHAHAHAHAッ!!


笑い声を耳にするだけでも腹が立つ豚爺ぃの一党が現れた。

皆で粉砕したのは言うまでも無い。

俺は例によって魔法の攻撃を喰らって鼻血を吹いたが、腹パンはしっかり喰らわしてやった。

ギデア様にトドメは持って行かれてしまった。

残念だ、俺がこの手で殺ってやりたかったのに。


その後、今度もまた豚爺ぃの骸が皮袋を残して速やかに土に消え去った。

呪われてると厭だから、前に拾ったのは最初の部屋に置いて放置している。

これもそうするか。

しかし、シコーキが居るので、呪いでも祓えることもあるというので、試しに開けて中を覗いてみることにした。

当然俺が。


紐で縛ってあるのを普通に解く。

何の変哲も無い縛り方だ。

紐を緩めて皮袋の口を開く。

中には灯火に照らされてキラキラと燦く金貨が掌半分ほどの量、封印された小さな羊皮紙の巻物が二本、指輪一個、乾燥しきった薬草や欠けた真珠などが詰まっていた。


そうしている間にも、どこからともなく別のアンデッドがちらほら寄ってくるので、その都度駆除してる。

人数があっても広大な闇黒の荒野に踏み留まるのは安全ではないので、引き揚げた。


廃墟の部屋に散在するベッドの上に腰を下して小休止。


--


階段を上ってまた迷路へ。


また最初のゴブリンを蹴散らし、マーカーを残しつつ新たな分岐へ踏み入っていく。

犬頭人や豚頭人と二、三度遭遇して屠り、先へ。

毒々モンスに再び遭遇すると、対策ができていないので大きく後退し、別の分岐へ。


--


通路の先に下り階段を発見!


しかし、階段の前に群れる竜頭人。

鮫頭の半魚人の上位互換っぽい。

あれは強そうだ!


シコーキとギデアが最前列に出てくる。

敵が動き出した。

俺は一個だけ荷物持ちに持たせていた灯油火炎瓶に点火して、激突前に高い放物線を描くように通路へ投げつけた。

床で割れて燃え出す。

炎と破片で敵の突進の勢いが少しだけ鈍った。

これでよし。


迎え撃つ隊列は、中衛の近習の三本の槍と、前列のギデアとシコーキ。

俺は後詰め。


前衛の線で留め切れなかった一匹の竜頭人の、恐るべき剛腕から繰り出される必殺の一撃。

鮫剣より大きな幅広の刃が中衛に食い込む!

槍を叩き切られながら避けて辛うじて直撃を免れた近習のシュッツが肩を切り裂かれて瀕死の重傷を負い、即座にヤチュチェとビフォーベが運び出して、彼の背嚢から薬を探し出し、応急処置。

シコーキとギデアが反撃してなんとか敵の勢いを削り押さえている。

俺は中衛に立って、どうかすると怪物が隙間を衝いてこようとするのを見つけては、怒りの鮫剣を全力でブチかまして撃退する。

後方で重傷者の手当てを終えた二人が戻ってきて加勢し始めると、やっと一匹また一匹とシコーキとギデアが敵にトドメを刺し始め、遂に敵を撃退した。


竜頭人は二匹が階段の先へ逃げ去り、腕や脚や尻尾を所々失った死体が三つ残された。

シコーキが癒しの術を使い、負傷者を可能な限り回復させたが、今日はここまでにして撤退。

慌しく戦利品を袋詰めして鮫剣と一緒に一つの担架に載せると俺が持って引きずり、最後尾を警戒。

もう一つの担架に毛布を敷き、負傷者を載せて包むと、荷物もち二人で出来るだけ揺らさぬように運ばせる。

マッパーとマーカーが先導し、ギデアとシコーキが前と後ろで警戒。


迷路を出て階段を降りて、中央通路に出ると床が平滑だ。

負傷したシュッツが寝てる担架の足側を下した棒の先に布を巻いて、床との僅かな擦れによる振動をも抑え、ごく滑らかに引いて進ませる。

T字路でゆっくり右折し、窓辺に辿りついた。

負傷者の負担をなるべく減らして空中通廊の窓から下すために、担架に縄を巻いて、上から吊るし、下から梯子に沿って逸れないように誘導して、丁寧に下へ。

草原を黄金色に染める夕陽の中を、負傷者を担架に載せて、お城へ帰還。


俺は窓辺で後始末。

後日お城に伺うことにして窓を閉め、そこから暗闇を一人きりで鮫剣を担いで歩き、階段前でキックボードを拾い上げて載せた自転車に乗って家へ帰った。



拙作など御読みいただきましてまことに有難うございます。

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