第三話 武器はありったけ持って行こう
武器は、手から離れたら即座に次の武器を手当たり次第に掴んで戦い続けなければならない状況を想定。
撤退して家まで取りに戻る余裕があるか分らないから、重いけどはじめからありったけ持って行く。
先ず、クロスボウ一丁とボルト15本。尖端は鋭利に変形させてある。
既に一本番えた状態で、但しまだ弦は引かずに、背負う。
次に、鋤を槍代わりに。
長さが背丈ほどもある、筍掘りに使うような代物。
これは細かい槍の技など使うには無駄に重いので、構えて真直ぐ突進して身体ごとぶつかり致命傷を与えながら突き飛ばして突き抜けるしかない。
馬無しランスチャージのように。
槍があれば良かったんだけど、無いから。以前なら長柄の材料が転がってたんだけど、もう無い。時間がかかるから、作らない。
最初の会敵に備えて、この鋤を利き手である右腕の脇に挟んで構える。
やっぱり重いなあ。
あとは間合いほぼ無しで使う物ばかり。
前に興味本位で買った対人殺傷専用ナイフが二種類と、使っていない庖丁二本、一本は出刃。これら四本は敵に切りつけるか突き刺す。
手斧一本、鉈一本。この二本は敵に叩きつけてぶち切る/ぶち割る。
鋸一本。悠長に挽き切る余裕があるか分らないけれど。
鑿二本。突き込んで抉る。
金槌二丁。敵に叩きつける。
先端を削って尖らせたキャンプ用の直径2cmのクロームメッキの鉄杭を一本。敵に叩きつける/突き込んで抉る。
短い鉄パイプを一本。敵に叩きつける。
太めで短めの木の枝を折れにくいように鉄片で補強した棍棒を一本。重量があり、真上か斜めに振り下ろす。
これらを引っ掴んですぐに抜けるようにあちこちに差込み、ダクトテープで軽く固定。
対人殺傷専用ナイフのうち一本は鍔がほぼ無いから、実戦では自分の指を切りかねない。それで、元々ナイフの柄に開いてた幾つかの穴に丈夫な紐を通し、輪っかを作って、そこに中指から小指までの三本を通して柄を握れば、それにひっかかって刃まで人差し指が滑っていかない、そういう工夫をしてみた。
実戦でナイフを抜き出す時には手元なんか見てられないから、そう上手く紐の中に手が通るかイマイチ心配だ。
練習では上手く行ってるが、焦ったらどうなることやら。それに刃が非常に鋭く研いであるので、鞘から抜き出す時も気をつけないと危ない。
だからナイフを滑らかに抜く為に、30回ほど練習して、ちょっとあんまり輪に指がひっかかることが多くてスムーズに入らないので、紐を調整しつつ輪に指を通す動作だけ100回練習してから、改めて抜き出す一連の動作を30回練習した。
やり終えた達成感に浸ったが、その後で素手で練習してた事に気づいて、本番では強化革グローブをつけて洞窟に入るのだから無意味な事をしていたと気づいてしまった。
ガーン!
武器ではないが、富士山の浅間神社の焼印が押された軽い金剛杖を、所謂10フィートの棒の代わりに、6フィートの棒として右手に持つ。
火炎も重要な武器だが、松明はない。
灯油などもない。うちはストーブとか使わないので。
煙草も吸わないので、ライターもない。
そこで防災用品からチャッカマンを取り出し、納戸から災害用の白金懐炉のオイルを掘り出し……と思ったらそこには無く、納戸じゃなくて工具箱で見つけたりして、探すのに手間取って疲れた……。
疲れたので、またまた全部脱いで着替えて、お茶を飲んでお菓子を食べて、一休み。
ついでにちょっと横になって一寝入り。
この日は、これでお終い。起きたら雑用が待っていたので、どうしようもない。
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翌日。
改めて準備作業。
昨日の武器をずらっと並べて、ナイフだの手斧だのとどうにも間合いの無いものばかりが矢鱈と多いのが気になったので、刃物を枝きれにでも縛り付けて手槍……の更に短いようなの……くらいはできないか、と思う。
しかしトネリコどころか、細竹すら手に入らない。
近くに手入れ不足で細竹ばかり矢鱈と生えている、所謂下り藪になってしまってる処があるんで、そこの地主さんに掛け合えば貰えるとは思うんだけど、いきなり初見の他人に声かけてってのはちょっと……という以前に、その竹やぶの地主がよく分らない。
ハイ、駄目ーっl!
昔は安い海釣り用の釣竿があったのだが、今はもう無い。
部屋の調湿用に隅に積んであった庭木の枝の剪定して樹皮を剥いで細い丸太にした物があったので、その中から材質と長さ太さが手頃なのを選び出して、庖丁二本、鑿二本、昨日散々練習した鍔なしで刃が鋭利な方の殺傷専用ナイフ一本、尖らせたクロームメッキの鉄杭一本の、合計6本に長柄化加工を施した。
長柄と言っても、手近にあってすぐ使えるのが割りと短めのしか無かったので、接合部位を重ねることも入れると、加工した6本のどれも精々50cm前後しか延長できていない。
沢で鰍を刺して捕まえるのに使うヤス程度の間合いしかとれないけど、マシにはなった。
しっかり縛り付けるのに一本一本少しずつ違う工夫を色々しなければならず、時間がかかった。
この日は、もうこれでお終い。
そうそう閑人じゃないんだ。
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翌日。
まだ準備作業。
慣れる為に、頭の天辺から爪先まで、防具一式を着込んで、暑さに喘ぎつつ、更に盾を構えて、新聞紙の上で軽く動いてみる。
動きづらいが、なんとかなりそう。
ただ、やっぱり暑い。
これだと稼働時間あんまりとれないぞ……困るなあ。
とにかく放熱できないから……
そうだ、使い残しの銅箔があったな!
CPUクーラーみたいに放熱できないかな?
またまた一旦全部脱いで、既に汗を吸っていた二着目のステテコと長袖肌着をまた交換。できるだけ常に快適に。疲労防止のコツだ。
で、銅箔を肌着の背中にガムテープで簡易に留めて、その上からツナギを着込んで、放熱の為の銅箔をツナギの襟元から外へばらっと出した。
暑さがマシになったかどうか、正直よくわからないけど、放熱効果がまるっきり無いって事は無いだろう。
うーん、マシになったかもしれない。
激しく動いたらやっぱり間に合わない気もするけど。
今度銅箔をもっと買って来て、胴体前面とか腕とかも冷却を試みようか。
特に頭部。
ふと思いついて、サランラップで重曹を包み、厚み5mm程度の小さな包みにしたそれを多数作り、ヘルメットに更に貼り付けていった。
草摺り代わりのチタン小片のダクテ止めと同じく、追加装甲ってやつだ。
ラップなんか使うから問題があるが、スライムと遭遇して強酸を浴びせられたら少しは中和して頭部を守るのに役立つだろう。
スライム以外の敵と先に遭遇して、物理的に重曹が払いのけられた後でスライムに溶かされたらどうしようもないので諦めよう。
メットや警備服の内側に、或はチタン防具の上にびっしり貼り付ける手もあるが、時間がかかる、面倒くさい、もうヤダ!
……フラグ?
この日は、もうこれでお終い。
拙い作文をお読み戴き、有難うございます。