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第二話 ソロはガチガチに防具で身を固める

とにかく、防具でガチガチに固めてみるか。


階段を上って、二階の自室へ。

自分の手でカーペットを剥して、床の捨て張りのベニヤの上に、一枚一枚自分の手でえんこ板を敷き詰めた、この家で唯一のフローリングの私室。

スッキリした床がお気に入りなので、物をきちんと整理整頓して、床ができるだけ広く見えるようにしている。

うっかり物を落っことすと、階下にも響くし近所迷惑なので、いつもひっそり過ごしている。

その床の上に今、所狭しと物品を並べている。


一旦、全裸になる。

最初に、木綿のステテコとウールの靴下を履き、長袖の木綿の肌着を着る。

その上から、ウレタンクッション入り肩帯つきのナイロン製の薄い胴着を着込む。

ぶっちゃけアリスパック時代の米軍のコンバットベストだ。

この肩帯が緩衝材となって、長時間行動した時に、上に着込む胸当ての肩帯が肩に食い込むのを防いでくれる。


その上に、難燃性布地ノーメックス製の米軍戦車兵用ツナギを着込む。

足首から襟まで被覆できるが、フードは付いてない。


で、鎧一式を着込む。

趣味で自作したチタンの胸当てを中心とする、全身の各部を防護するチタン防具一式を装着。

腹 胸 背 腰 尻 もも すね 脹脛ふくらはぎ 上腕 前腕 肩 くび

胸部のようにNIJ規格3Aレベルけんじゅうのたまをふせぐで頑丈に作ってあるものもあれば、脹脛ふくらはぎ頸部けいぶのように薄っぺらくて辛うじて人の手で刃物を突きたてるのを防ぐ程度の強度しかないものもある。


挿絵(By みてみん)


チタンは軽量。

チタンは錆びないから手入れがほぼ要らないのが一番の利点。

チタンは金属の中では熱伝導率が低いので、寒冷時の急速な体熱喪失が鉄より少ない。

暑い時は鋼鉄以上に熱が篭るのが欠点。

鋼鉄より粘りはあるが硬さは劣るのも欠点。

今はいかにも頑丈そうで頼もしいが、戦闘で強烈な殴打を浴びてボコボコになれば、一時的には修理できたとしても、いずれは金属疲労で破損するのだろう……チタンは粘り強いからアルミよりマシ。


追加で下腹部・鼠径部を護る為に、チタンの余ってる小さな板を寄せ集めて、余ってる革切れを土台にダクトテープで固めて、同じくダクテで当該部位にべたべた貼り付けた。

草摺りとか作っておけば良かったと思ったが、分ってたけど放置してたのが今頃裏目に出るとは。

まあいいや。


ツナギの上にチタン防具一式着込んだので、この時点で既にかなり身体の動きを拘束される感じがしている。


そこへ更に、警備作業用のデニール値が1600(とてもつよい)以上のナイロン製の厚手の作業服を着込む。

これは耐磨耗性と衝撃吸収性がある。

それに、下に着込んでる鎧の存在が他人には分り難くなる。


但し、そういう厚手ナイロンの下半身用のは持ってないので、単なる米軍のカーゴパンツを履くだけ。


ここまで着ると、ガチガチでかなり動きづらく、割と単純な動作しかできなくなってくる。


何よりも暑い。ダンジョン内部はひんやりしていたからよさげだが、どこかで温度が上ったらそれだけでヤバイ。自分の発する体熱で自滅する。


更に更に、警備作業用の合成樹脂製の硬質な肘カップ、膝カップ、手甲や脛当てなど、プラスチック製防護パーツを外側へ装着。

今回の最外殻となる。


最外殻の一つとして、首周り(首や僧房筋、鎖骨など)を護る部分ソフトアーマーも装着する。

カトリックの大きな教会で見かけることのある、偉い僧侶が首の周りに肩から掛けてるビショップマントルと同じような感じの被覆だ。

かなり分厚いから、ケブラーを数十枚重ねて袋に入れてる構造だろうきっと。

首の周りは形状が複雑かつ動きのある部位なので、とても防具を作りづらい。

自作は一応はしてみたが到底納得も満足もできない代物しか出来なかったので、仕方なくイスラエルの通販サイトで5万円前後で購入した。

たしか、信頼できるか分らないサイトだったので、偶然目にしてから買う決心をするまでに7年くらいかかった覚えがある。高い買い物だし。


ソロなので、防御力を重視してここまでやるのだ。

一抱えも有る大きな石が崩れてきて下敷きになっても潰されないくらいのタフなシェル(よろい)が本当は欲しい。プレートアーマーならいけるか?

今着てるものにはそれほどのタフさはないのだが、そこらのマッチョにバールや鉈を助走つけて全力で叩きつけられても死にそうにない程度の頑丈さはある。

それでも鋼鉄のプレートアーマーなんか着込むよりずっと軽い。

それに、塀の大谷石の一枚くらいなら、乗っかられる部位によっては多分潰されずに耐えられる。腹/腰とか。


更に、廃品同然の酷く汚れたムートン(けがわ)を納戸から掘り返してきて、腰巻にした。応急固定はダクトテープで裏側を繋いでから表側をグルグルと。

これは例えばゴブリンみたいに背が低い敵が腰から腿にかけて組み付こうとした時などに都合よく敵ごと剥がれ落ちてくれればよいと思う。

そういう用途なら単なる薄っぺらいボロ切れでも良かったかもしれない。

でもこれなら多少の防護効果も期待できる。

汚損ムートンはまだあったので、もう一枚取り出して上半身に"ちゃんちゃんこ"風に装備。なんだかファンタジーRPGの蛮族戦士バーバリアンっぽくなった。


まだ手と頭部は露出している。


……だが既に暑い!

身体の熱が総て難燃ツナギそのうえのチタンの板そのうえの警備服、部位によっては更にその上の殻やムートン、によって閉じ込められているから。

犬みたいに、口でハッハッと熱を排出しないといけない。

これで頭までヘルメット?

死ぬわ。


だがここで、更に局部も防護すべく、空手用の金カップを履かなきゃ、と思いついて、着込んだ物をまたしても一旦全部脱いで、ステテコの上から装着した。


鎧の着装作業では、こういう二度手間はよくあることとはいえ、煩わしいものである……。

でも暑さから一旦解放されてほっとした。

涼しい。

汗が気持ち悪いので、ステテコと肌着を替えた。


再び一式装着し直した。

少しは慣れたが、やはり暑いものは暑い。

熱が篭るから、どうしようもない。



頭部と顔面を守る装備として、耐爆ゴーグルと小型防塵マスクと、やはり廃品と化していた古いフルフェイスのバイクのヘルメット。

視界が暗くならないクリアーなシールド付き。

そのクリアシールドも、何枚も積層にして強化してある。


ヘルメットの上から適当な余ってるチタンの板をダクトテープで応急処置としてベタベタと貼り付けていく。

小片とはいえ多少曲げた程度ではメットの曲面にぴたりと沿うわけもなく、実に急造感溢れる出来上がりとなった。

当座の物理防御力向上の為と割り切る。

その上からガラスクロスで覆い、縁をダクテで留めておく。

できた。

まあ、こんなんじゃあ、火炎やら強酸やら浴びたら忽ち剥がれ落ちてしまうだろうが……そういうのが出てきたら、兎に角逃げよう。

不意の一撃に耐え、逃げる間だけ保てばよい。


盾も手作りのがある。

地元の山海堂(おみやげや)に行けば、カイトシールド(騎士のたて)売ってるけどね。

(´・ω・`)あまりお金残ってないからホイホイ買えないんだ

挿絵(By みてみん)

分厚い布地を用いて自作したお手製リュックの中に程よい厚みの一枚板の大きなチタン板をぴったり嵌め込んで、盾として左腕で構える必要がない時には楽に背負って行けるようにしてあり、構える時に左腕を通す環と握るべき把手も付けてある。

もっとも、チタン板を入れてある時にはリュックの形状も一枚板みたいになってしまい、容積が極端に小さくなるので、リュックとしての運搬能力は大幅に制限される。

ま、探索と生還が第一目標で、採取なんか二の次三の次だから、これで良い。

盾として用いるのだから基本的には荷物を入れたりはしない。

これもリュックの布地が大きく損傷したら盾を保持できなくなる、という顕著な欠点があるが、作った時にはそんなヘビーユース(なんどもつかうこと)なんか考えてなかったのだから仕方ない。テロで爆発物が飛散したり、大地震で窓ガラスが割れて落下したりした時に、破片から身を護る。その程度の想定で作っただけなのだ。

盾に用いているチタンの板は頑丈すぎてとても人力で曲げる事なんかできないので、それがお手製リュックの中に嵌め込まれていると、背負った時に真ったいらな板が背中から離れて浮いて見えるから、はたから見ると何だか不恰好でリュックとして不自然さが目立ってしまうのが難点で、それを誤魔化して少しでも最近多いスクエア形状のリュックっぽいシルエットに近づけて、不自然さを隠蔽しようと一応工夫はしてある。


最後に鉄板入りのブーツとチタン板を貼り付けた革グローブを身につけるのだが、ブーツを室内で履くのは嫌である。畳が汚れる。荷物をどかしてスペースを空けた押入れの中に古新聞を敷いて、ダンジョン進入直前に履くべく、ブーツを置いておく。強化革グローブは新聞紙の外。



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