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第十七話 中央の扉

前回、すきの柄で罠を探ってゆくのに、限界を感じた。

10フィート棒を作ろう。

棒の本体として、通電性の高そうな古い物干し竿を使う。

ベランダにほぼ放置に近い状態になってるので、問題ない。

強度的に少し不安だが、まだ両手で簡単に折れてしまうほど朽ちているわけでもない。

物干し竿の端についているプラスチックカップを外す。

プラスチックカップに絶縁性があるか知らんけど、もしあったらあまり嬉しくないので。

通路の床の感圧スイッチを押した時に、天井からの放電がそのまま金属製の物干し竿が接地してる床面へ流れて、人体へ流れてこないのが望ましい。

勿論、天井から自分の頭へ放電が飛んで来たら大変だから、探る時いつもそうであるように、腕を前方へできるだけ伸ばし、頭と身体を後方へ下げた姿勢で探る。


放電罠を発見した時、高圧電流はすきの木製の長柄を伝わっては来なかった。

そこで絶縁の為に、新たに作る10フィート棒の握りも木の枝で作る。

適当な枝を1mほど切って丸太にし、半月はんつきばかり乾燥させて水分をなるべくとばすことにする。


挿絵(By みてみん)


わきしたに握りの端を挟みこみ、二股に分かれた細い部分を握ると、片手でも扱いやすい。

枝には最低限の浅いへこみを彫り、そこに物干し竿を当てておいて、ダクトテープで留める予定。


その後、これだと二股部分を握る手と物干し竿の端との距離が近く、放電が手に跳んでくる惧れがあるのに気づいて、別のもう少し長い枝を切るところからやり直すことになってしまった。


----



った枝を乾燥させている間はダンジョンにもぐらない、なんていうのもなんなので、中央の扉を開けて探査を進めることにする。

すきを用いてできる限りはわなチェックしながら。


少しだけ緩めた鉄鎖の隙間すきまから扉の向こう側を確認すると、真っ暗な通路が真直ぐに真っ暗な奥へ延びていた。


中央扉の右半分と左半分、どちらかだけ開けて、もう片方は閉め切って行けば、鉄鎖のゆるみを最小限で済ませられる。



どっちを閉めておこうか。

最初の部屋は左右対称だ。

左右非対称なのは、俺自身だ。

左腕は盾、右腕は武器や棒を握るから。

そうなると、盾を構えるのが左手というのが決定因子かな?

盾ねえ。

メイン盾は例によって扉のこちら側に置いておく。持ったまま扉の隙間を駆け抜けるのが難しいからだ。一応小盾は胸前に吊るしてあるし。

苦労して作ったメインウェポンの鮫剣も、重過ぎるし大きすぎるから通路に持って入ったりはしない。扉のこちら側に置いておく。


もしも扉の向こう側で逃げ切れずに戦闘になったら、サブで対応するしかない。危ないな。とにかく逃げられるように考えないと。


バラ線フェンスとカカシとミニランタンは扉の向う側に持ち込んで、追いすがる敵をなるべくそれらで足止めしつつ自分はダッシュで逃げる。

転倒罠も、中央扉だとあまりこちら側に設置しても、自分がひっかかりそうだから、可能な状況であれば扉の先の通路に持ち込んで仕掛ける。


転倒罠は単体で仕掛けるのではなく、転倒して刃なりあみなり穴なりに突っ込むのが理想。

しかしこの先の通路も岩の床のようだし、掘り下げられない。

通路巾は4m弱。そんな長さの突っ張り棒も持ってない。

固定できないから、衝突で下が押されたら上から倒れ掛かるようにするか。

そういう柱もしくは壁みたいなものを作って立てておく。

カカシはそういう用途じゃないので、別に作らないと駄目だなあ。

それなりの重量と、ほどほどの安定性がないといけない。

三脚みたいので良いが、遺品を使い捨てたくないので、枝とってきて作り上げるか。


通路をおいかけてくる敵の目から転倒罠を隠すのも良い。

黒い布を地面から40cmくらい、屏風のように立ち上げておけば、可能だろう。


転倒罠を避けてきた敵の足止めに、バラ線フェンス。

転倒罠を通過した直後に、ひっぱりやすくしておいた紐を引いて、走りすぎた自分の後ろで倒れさせ、通路を塞がせる。

そうなるように設置しておく。


挿絵(By みてみん)


あとは、実際に少し通路を進んで、もっと見てみないとわからないなあ……。



とりあえず、どちらの扉を閉めておくか、だが……。

逃げてきて鉄鎖の下を潜り抜けることに関しては、左右どちらであっても困らない。


前回の戦闘では扉があちら側に開く状況で右が閉まっていたから、とても突き刺しづらかった。

右手を左に寄せて、反復横跳びのように左にステップした瞬間にヤッと突き刺し、刺した胸をえぐる余裕もなく、またすぐ右ステップして隠れる必要があった。


右半分を閉めておこう。そうすれば隙間からぐさぐさ突き刺すのもしやすい。

今度は扉が手前に開くから、左側の扉を開けておいて、開きすぎだと思えば扉を左腕の盾と左足の両方で体重掛けて押し込めば、敵を隙間に挟みこめる。

挿絵(By みてみん)

無論、右半分が開かないように、くさびを二本以上打ち込んでしっかり留めておかないといけない。


盾じゃなく、突き刺しやすさが決定因子だったか。

盾というよりも、左半身で扉の開閉が調節できる可能性か。

まあ、実際には、敵のパワー次第で全然調節が利かない可能性だってある。


斬る観点からはどうだ。

両手を使うよなあ。

盾を持たないとなると、左足で扉を押さえつけておいて、出てこようとする奴を隙間に挟みこんで、えいっと断ち切る。

やっぱり左扉だけ少し引きあけた状況が、一番やりやすいようだ。


よし。

右扉の下にくさびを打ち込む。

鉄鎖は左扉の隙間すきまが40cm程度になるようにゆるませる。

これなら通路から逃げてきた時に自分はすぐに鉄鎖の下をくぐれるし、あのさめ頭の半魚人が通路でまた現れて襲い掛って来ても、対応しやすい。


自分が扉のこちら側に戻った後で、扉の隙間をせばめられると良いのだが、そんな余裕を与えてくれるかどうか。

弛みを締め直すのが大変な鉄鎖だけでなく、丈夫なロープを使って、扉に足を掛けて押さえつけながら全力で引き絞る感じで、隙間を狭められないかな。

挿絵(By みてみん)

太いナイロンロープなら家にある。

槍もった半魚人なら、刃は持ってなかったから、頑丈なロープならすぐには断ち切られないだろう。

ロープを左右の把手とってに掛けておいて、一旦引いて締めたらゆるまない仕組みが必要だ。

登攀とうはん用具にはそういうのがあるけど、うちにはない。

弛みにくい結び目を作って移動させる方法で済ませていたから。

今回はそれでは駄目だろう。もしもパワー半魚人相手なら。

難しいな。


足許あしもとくさびを蹴り込みながら、ロープも併用して、すきあらば締めていく、くらいしか思いつかない。


右扉の把手とってに滑車を取り付けて、というか、把手自体が動滑車代わりか。滑らかにしてとろみ液を塗れば。

ロープは左扉の把手に端を固定して、それで引っ張れば、多少はパワーに対抗できるかもしれない。

多少は。

それより、右扉の把手に固定して、左、右と把手に通して、左扉の蔭で左にロープを引けば、二重滑車。

それでロープに予め大きな結び目を作っておいて、良い感じに扉の隙間が狭まると結び目が左側の固定の輪っかにひっかかるように。

輪っかの固定は、しかし、把手しか固定点がなく、長さの関係で、そこだと敵の手が届くから、危ない。無理か。

となると、単にずっと引っ張り続けないといけなくて、力を入れ続ける必要が出て来てしまう。

それは困る。攻撃ができなくなる。


Γ(ガンマ)状の棒を作っておいて、左扉に立てかけておいて、横木よこぎの端を把手とってに固定しておく。

これなら安定した固定点が得られる。ダクトテープで簡易固定すれば猶更なおさら安定する。

これで、『二重滑車で増大したパワーでロープを引き絞り、扉の隙間をせばめて、予め準備した輪っかと結び目を引っ掛けあって固定』という手が使える。


これで一つ、補助する仕掛けができる。

これと、足許で蹴り込む楔とで扉を少し狭めた状態を固定しておく余裕ができればよいのだが。

鉄鎖も引っ張って弛みを減らし、そこで予備の連結器シャックルで固定できるから。

とはいえ、シャックル固定はナットを二つ回して留める必要があるから、敵がガチャガチャやってる状況で悠長にやれるかどうかは疑問だ。

それでもなんとかして鉄鎖で固定できてしまえば、ロープよりずっと安心できる。

挿絵(By みてみん)


こんなところか。


結び目を直接引っ掛けるのだと、人力を超える強い力で引かれると動く可能性がある。

輪っかにかけるのは結び目ではなく、カラビナの方が良い。


ゴチャゴチャした仕掛けを把手につけるなら、垂れ下がって邪魔にならないようにしないといけない。

でないと、逃げてきて鉄鎖の下を潜り抜けようとして、引っ掛かって、背後から敵に追いつかれたら大変だ。


あとは扉の狭い隙間を通ってこられない敵へ、Γ(ガンマ)状に折れ曲がった長柄の柄杓ひしゃくで灯油をかけてやり、点火して燃やす。


扉を抜けて来る敵には、両手で握った鮫剣で、一撃を加える。

鮫剣はりがない。長巻ながまきと同じ思想で作ったグレートソードってところだ。

肩の上から全力で振り下ろして、一撃でブチ斬って仕留めないと不味い。

ブチ斬ったあとに刃が石の床に激突して潰れるおそれあり。

床にまな板でも敷いておくか?

いや、蹴っ飛ばされて、どこかへスッ飛んで行くのがオチだ。

そんなことするくらいなら、鮫剣の素振りをたっぷりやって、扱いに少しでも慣れておこう。


いざとなったら現場にすべて放置して出口まで逃げる。

他はどうあれ、あれだけ苦労して作った鮫剣だけは抱えて逃げるつもりだ。

鮫槍までは抱えてこれないので、鮫槍は家の自室に置いてある。



それじゃ、仕掛けを準備するか。

色々と材料を揃えたり加工したりしないといけないから、戸締りして家に引き揚げよう。


----


自室に戻ってノートに記入しながらもう一度考えていたが、ネットで二重滑車を検索したら、両側とも動滑車だから二重滑車と考えた自分が正しいのか判らなくなった。

さすが高校で常に物理も数学も赤点で毎回追試を受けていた俺だけのことはある。

自信もてなくなったのと、すべりの良さを考えて、売られている滑車の値段を調べた。

150kg 二個セットの製品価格を見て、1000円しないなら、そう何度も買うものでもないから、買っても良いと思ったのでネットでポチっと発注。

それにしても、高校の物理、もう一度勉強しないと駄目だな……


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数時間後、メモを見返していて、敵がロープを断ち切れないとしても、力で手繰り寄せる惧れは充分にある、と気づいた。

考えがヌケてた。

それでもう一度考え直す為に、慌てて滑車二個組の注文を取り消した。

拙作を御読みいただき、まことに有難うございます。


今日の更新分でストックが完全に尽きて、次回更新は少なくとも十日は先、みたいなことを書いていましたが、筆者周辺で色々予想外に進み、とりあえず拙作もちょっと軽くキンクリしてでも進めようかなと思います。

本来は推敲したりすべきですが、もうポンポンやっちゃいます。

直したり修正したり改稿したり全面改訂とかしたりするのは、後日余裕がある時にすることにして、今はとにかく掲載を出来る限り絶やさずに続けることをしてみます。

折角ここまで連日掲載できてるんだし。

とりあえずまたあと三日分予約入れました。

大体、毎回3000±2000文字くらいの範囲なのは結果としてなんとなく。

作業続けてたら、ルビだの説明入れたりしたのを見ても目が慣れてきた気がするので、今後は作者作業版は放置で、こっちだけにします。やっぱり両方修正入れたりするのはめんどかった。

本当は推敲したいんだけど、続き書かなくちゃ。

この前ちょっとメモ帳に書いた世界設定だと、結構ダダ長くなっちゃうので、いかに斬り捨てたりキンクリしたりして物語を縮めるか、悩み中。

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