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第十三話 サブウェポンの製作

メイン盾の改変の続き。

まだ持ち手をつけただけだった。

肩掛け用にスリング付ける必要あるかなあ、と。


の前の戦いではたしか、最初に半魚人の槍を防ぐのにだけ使って、あとはすきをブン回すのは両手でやってたから、その時点で既に盾は【訓練場】の地面に放り出していて、それっきり最後まで拾わなかった気がする。

敵前衛の二匹を倒してからは、盾の蔭に隠れているよりも、攻撃に専念しなければならない状況になってた。


盾は、必要ないときには足もとに放り出して、いざとなったらその都度つど地面から拾い上げりゃいいか?

いつもいつもそうできるかな?

窮屈きゅうくつな鎧で固められて重たくなった身体からだで、あんまりかがんだり立ち上がったり、姿勢をひょこひょこ変えたくない気もするなあ。

疲れやすくなるから。

一応、スリングは取り付けておくことにしよう。

盾を構えっぱなしで戦い続け、疲れて盾を構えるのをめて左腕を休ませたくなり、でもその場にとどまっていられない、そんな場合もあり得るし。


----


武器のこと。


今後斬る攻撃を多用すべく、新たにサブウェポンと位置づけるナイフ『鮫きり』。

現有の武器の中では随一ずいいちの鋭利さを誇る。


この間の戦いの中で、鮫頭半魚人の体液で汚れきってしまった長柄は、既に屍骸を燃やすたきぎとすべく取り外した。

もしも仮に汚れが問題にならなかったとしても、がたついていたので、いずれにせよ取り替える必要があった。

あの矢鱈やたらしぶとかった鮫戦士にブチ込んだまま、刺さったそれを抜かずにいずってやがったからな、あいつ。

ナイフ自体も体液まみれで除去が大変だった。

処理にあたってナイフの元々の美しさは損ねてしまったものの、機能面に悪影響を及ぼすような毀損きそんは無い。

刃は既に研ぎなおした。


今回、新品の長柄を用意し、一から作りなおした。

長柄の長さは1メートルあまりにした。

デカいメインウェポンの鮫剣がブン回せないような狭い場所で使うサブウェポンという利用想定だから、小回りが利いて扱いやすいのを重視した。


つか材には、庭のけやきの枝を用いた。

比較的真直ぐに伸びた枝で、狂いが少なく、無駄な突起も少なく、滑らかで、扱いやすい。

驚いたことに、これまで庭木の枝の丸太の乾燥時には、ほとんどの材にヒビや割れを入れてしまったのに、けやきの枝にはヒビも入らなかった。

本当に扱いやすい良材だ。

皮をいで丸太にする時に上手くやれば、独特の凸凹(でこぼこ)した網目あみめ状の繊維分を表面に残す事ができる。

これがまた非常にグリップを良くしてくれるので、に適している。

明るい黄色で心が洗われるような美しさだ。

しかし、汚損対策でニスを薄く二度塗りしたら、白木しらきの時の良い風合ふうあいが失われ、残念に思った。

ニスを塗るのなら、滑らかにしておいても良かったかもしれない。

また無駄な事をした。

割れが無いものの、一応針金を巻いてめて補強した。


ナイフのハンドル材は人工積層材マイカルタなので、除去してブレードだけにしてから取り付けようか、どうしようか迷った。

その方が断然、長柄への取り付けは簡単だし、強固に固定できるから。

だが、ナイフの柄には三つばかり穴が開いてて、そこに真鍮しんちゅうっぽいくだめこまれてるので、そういうのまで除去するのがめんどそうだったんでヤメた。

マイカルタもブレードに隙間すきま無くピッタリと貼り付いているようで、除去するのが大変そうだったし。


挿絵(By みてみん)


長柄の先端の前面となる部分を少しへこませるように削り、そこにナイフを埋め込む。

銃剣っぽい。

自分には無理だが、銃剣道の修練をしている者ならばきっと、初めてこれを手にしても、いきなり使いこなせるのだろう。


めるみぞくぼめるのには、のみ大雑把おおざっぱけずった。

その後の細かな調整で、地味に彫刻刀が高校の美術の時間以来の大活躍。

人生で全く今後使わなそうに思っていたが、何でもとっといてみるもんだ。

最初、工具箱に在った木工用のやすりを使ってみたら、全然うまく使いこなせず、微調整どころか折角の材を無駄にしそうになった。

それで、彫刻刀で細かく削り窪め、ナイフの柄の複雑な滑らかな曲線がおおむねぴったりまるように仕上げた。

あとはニス塗って乾燥させてから、ナイフの柄の穴にパラシュートコードを通して長柄に巻きつけ、ナイフの柄の上から巻き、力任せに引き締め、名称は知らないがよく締める事が出来る縛り方で済ませた。


一旦はそれで出来た心算つもりになってたんだけど、これだと柄の先の方向へナイフがすっぽ抜ける可能性があることに気づいた。

柄側のひもの固定がなってなかった。まるっきり。

さすがにあまりにも迂闊うかつというか手抜てぬきをやらかした自分に呆れ果てながら、すぐに対応しようとした。


まずは手元に細い穴をあけ、そこにひもを通してナイフを固定してるひもと連結して強く引き絞る。

これで手元方向へナイフを引き付ける力を掛けられる。

これだと単純に振り回した時の遠心力には拮抗きっこうできるのだが、ブレードが何かに接触して衝撃を受けた時がやや不安。

紐でナイフを長柄に締め付けてはあるけれど。


なので色々考えた。

金具は?

びる要素がアウト、とはいえどうせ使えばまたすぐ汚損して交換する必要が出るからそれは別に構わないか。

ただ、都合良い金具が無い。

ナイフが溝からすっぽ抜けないように、引っ掛かる部分までもめこむように窪みを彫りなおすのは?

めんどい。

でもやり遂げれば悪くない。最良の解決方法かな。

しかし余分に彫り窪めると長柄の強さが損われないか。また気にしすぎか。

ナイフの柄に近い位置で長柄に溝を彫り、紐をそこで巻くのは?

力学的にコスパ悪くないか?

紐を新たに引き絞ることで全体の紐のテンションが上って、一体性が強化されて意外に良いかもしれない。

本当の所どうなるかよく分らん。

さっき付けた紐を補強するのは?

紐って伸びるから固定力弱いのが不安の源なんで、本数や締め付けを多少増やしたところでイマイチ……切られたらお終いだし。


そう、紐だけに依存して固定してるから、紐切られたらお終いだ。

やはり彫り直し。

そして一本でも切られると全体の拘束力が失われる紐だけでなく、面で押えてはどうか……ラップや包帯じゃ、しかし、簡単に燃えそうだ。


考えて見りゃ炎対策、何にもしてないな。

炎対策をまるっきり無視するのであれば、ラップでも包帯でも両方でも使えば良い。但しあんまりゴテゴテすると重量バランスに影響が出る。

なら、一本の紐じゃなく、穴一つに紐一本、で紐三本巻くのも良い。一本の紐だと一箇所切られるだけでも全部弛むが、三本ならリスクが分散する。



そうして試行錯誤した結果、頑張って彫りなおしてぴったり嵌め込み、穴一つごとに紐を別に巻きつけ、その上から針金でびっちり巻いて締め上げた。


新生『鮫きり』が、出来た。


挿絵(By みてみん)


ただ、紐と針金で縛りつけるだけの固定は、どうも不安が残る。

やっぱり、ブレードだけにして固定すればよかったなあ。


でも、今更そんな事言い出すのなら、そもそも出刃でば庖丁ぼうちょうでも良かったんじゃないのか? と気がついた。


前回準備した長柄出刃は結局使わなかったので、ついつい実戦で至極良好な実績の生じた『鮫きり』にばかり目が向いて、副武器はこれ一本! みたいに迂闊うかつにも思い込んでいたが。

元は錆びてた出刃庖丁だって、丹念に研いであるので、イイ切れ味のはずだ。

刃渡りも鮫きりとどっこいどっこいだし。


そうだな、『鮫きり』でなく、出刃をサブウェポンにしよう。

出刃の柄なら白木なのでずっと容易に外せる、筈。


----


そう思ったので、長柄出刃を作り上げる。

前回はホントに即席で一発ブッ刺せればいいやテキトーに縛りつけろ的な、かなりいい加減な作りだったが、今回はまじめに作る。

目標としては、狭い穴から頭を出して這いこんで来ようとするゴブリンの首に次々と幾度いくどと無く斬りつけたところで、50匹や100匹程度ではガタが来ない頑丈さ、なんてのはどうだろうか。

そういう使い方をするのなら、処刑人の斧のような武器の方が良いかもしれないが、そんな使い方ばかりじゃないし、斧頭もない。

それよりは、実際に戦ったこの間の半魚人ともう一戦するハメになった場合に、力をめて両手で握って振り回して切り裂くのに耐える強度という目標設定の方が適切か。


新生『鮫きり』も折角がんばって作り上げたのだし、さすがにすぐにはガタは来ないだろうと考え、分解して元のナイフに戻したりせずに、長柄のまま使うことに決めた。

なので、長柄出刃用には新たなけやき材を採った。

繊維の網目を残した『鮫きり』は結局上からニスは塗るわ針金は巻くわで、ちょっとがっかりしたものだから、、こちらの材表面は樹皮を剥ぐ段階から滑らかに仕上げた。

乾燥させてニスを二度薄くすり込んだあと、たっぷり厚くムラ無く塗ってテヤテヤな表面にした。

なかなか持ちやすい。

あとはけやき材が充分に衝撃に耐えるのを祈るだけ。


シンプルに円く振り回した時に敵を斬るのを容易にする為に、微妙に刃を斜めにするように取り付けた。

垂直に衝突するのに較べれば、幾分かは切裂きやすくなった筈。

今回のコンセプトは手放さずに切り裂いて済ませる武器。

かま状にすると攻撃はしやすいが、コンセプトに反する。

刃は敵に向けて、謂わば仰向けに寝かす。

あくまでも寝かし気味程度だが。

それにより、出刃の出っ張った刃の下の角も、ほぼ長柄の延長線上に納まる。

紐などという固定上の不安要素もなく、のこぎりのみで切り取った隙間に出刃包丁を挟みこんで目打ち釘できちんと固定。

更に取り付け部分をアルミの薄板で巻いて、その上から針金で締める。

もっと単体でガッチリ締める金具があれば良かったのだが、そんなものは都合よくそこらに転がってなかった。

溶接も出来ないし。

ただ、2ミリ厚の細長いステンレス材があったので、これで取り付け部分を少しだけ補強することにした。

床に寝かせた長柄出刃の刃を真上に向けておき、ステンレス材を取り付け部に巻いた針金の上に当てる。

長柄に巻いた針金とゴツゴツぶつかって浮くから固定しづらい。

だが構わず当てておいて、ガムテでぐるぐる巻きにする。簡易固定で充分だ。

これはあくまでも、こちらが振り下ろしたのを下から受け止められてしまった場合に備えての補強だから、木製の長柄の一点に強い力が一瞬集中して木部が変形・破損するのを防げればそれで良いので。


長柄出刃が出来上がった。


挿絵(By みてみん)


長柄が黄色く光っているのをみると、すぐにも手にとって闘いに行きたくなる。

穂先とした出刃を、よく斬れるように、あらためて念入りに研ぎ上げる。


これで、狭い場所でのメインウェポンが長柄出刃、サブウェポンが鮫きり、となる。

リーチと威力重視の広い場所ではこれから作る鮫剣がメインウェポンで、長柄出刃にしても鮫きりにしてもサブウェポンだ。


拙作を御読みいただき、有難うございます。

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