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第一話 押入れの奥にて発見

久しぶりに和室の押入れを開けた。

そしたら下側の奥の壁に、いつの間にか観音開きの仏壇みたいな扉が設置されているのが見えた。

そんなことしたという話は聞いてない。


なので、一応、確認の為に、押入れに詰め込んであるものを色々とどかして、その扉を開けてみたら、真っ暗な闇がそこにあった。


「これ、騙し絵じゃないよな?」


手を当ててみる。何も手応えがない。そのまますっと闇の中へ手が入った。

ひんやりとした空気を感じる。


おかしいな、うちはこの押入れの壁の向こう側はトイレの筈なんだが……なにこれ?

肘まで入れても、何にもぶつからない。暗くてよく分らない。


怖い。


ちょっと不安に耐えられなくなったので、扉を閉めた。

光だ、灯りがほしい。

もっと光を!


押入れから、よっこらしょっと出ると、廊下に置いてある懐中電灯を取って押入れに戻ってきた。

また観音開きにして、闇を照らしてみた。


最初に目に入ったのは、ごつごつと荒削りな感じの岩の床。

ライトを回してゆくと、同様な質感の壁や天井が見て取れた。


大戦で軍が掘った人工洞窟に似ている。

有り得ないけどな、空間配置的に。

押入れの後ろは一階のトイレの筈なんだから。



ダンジョン? ダンジョンなの、これ?



ダンジョンが我が家にできただと?

ワイアーフレームのモノクロ3D画面の頃から散々楽しんだ、あのダンジョンが?


折角だから、乗り込んでみるか……

いやいや、一人だぞ俺。

ウィザードリィでPTを組まずにPCに一人で潜らせるプレイヤーはどれくらい居るのだろうか?

最初の遭遇で死ぬだろそれ。


だが、こういう時に声をかけられるような友人など居ない。

「お宝探しだ!命を懸けろ!」

なんて唐突に言えるほど親しい者など居ない。


いきなり終了? ソロじゃ無理だから封印して知らん振り?

いや、それは勿体無い。



----


勿体無いだろ? あんたもそう思うよな?


----


仕方ない、一人で行くか。

ソロプレイ→無事死亡エンド! のフラグが立ってる気もするが、俺は行きたいんだ。

危険を冒すから冒険なんだ。



そうと決めたら準備だ。

ソロでも死なない為に、できる範囲でガッチガチに、な。

俺は以前から趣味で色々と防具の類を買ったり作ったりしていたから、こういう時に役立つ。



その前に、闇を灯で照らしつつ、ちょっとだけ頭を突っ込んでみる。

さっき手を入れても問題なかった。頭なら?

大丈夫。そして、埃も立ってない。呼吸も問題なく可能。ひんやり無臭で刺激も感じない。

これなら、防毒面は要るまい。


まあしかし、奥へ進めば、毒気を吐いてくる敵とか罠とか地形とかあるかもしれない。

一応、ゴーグルと活性炭フィルター式防塵マスクくらいはね。



闇の中へ突っ込むんだ。灯りを予備も含めて持たないといけない。可燃性ガスは無いと思いたいが、一応オイルランプだのキャンドルランタンだのは無しで、電池式懐中電灯と電池式ランタンで最低限の光量を準備。念の為に予備電池も一回分くらいは。電池はすぐに重量が増えるから。


防具やブーツや盾や武器、中和剤など一通り持っていかねば。

中和剤って何かって?

そりゃあれだ、ダンジョンと云えばスライム、スライムと云えば酸、だからご家庭の万能薬剤、重曹を持っていくのだ。

一応強アルカリに備えて、クエン酸もあるでよ♪

いや、まあ、弱酸(塩基)遊離反応なら、どちらか片方だけでも良かろうが……念のためである。備えよ常に。

弱くても目や傷口に入っちゃったら大変だし。

あ、あと十字架とか魔除のお札とかも……念のため? いや、やめとこ、さすがに。


重曹とクエン酸、二つの袋を手にぶらさげて台所から居間に回ると、けっぱなしのテレビに

「新型コロナで一人死亡、2517人感染」

のテロップが出ていた。

ニュースは相変わらず新型コロナとロシアによるウクライナ侵攻の二本立てだな。

国際情勢のひどい現実だが、日本国内は大して変化ない日常が流れている。

有難いことに。

我が家にいきなり出現した、とびきりの非日常を愉しむ余裕があるくらいだもんな。


日中は皆でかけていてテレビを誰も見てないし、こっちも長くかかりそうなんで、テレビのスイッチを切って、二階へ上っていく。

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