流れ星の行き先
「私はお空の下に行ったらお花をいっぱい摘むんだ!」
「私もしたい!」
「僕はお日様の下でゆっくりお昼寝したいなー。」
みんな楽しそうに話す中、リンクは浮かない顔をしてます。
ここはお空の上、お星さまたちが暮らす大きな広場です。
(なんでみんなそんなに楽しそうなんだろう。僕はこわいよ。お空の下に行くのがこわい。)
ここで暮らすお星さまたちはみんな準備ができるとお空の下に向かいます。
お星さまたちは少しだけ下の世界を見ることができるので、向こうに行ったらこれをするんだとわくわく支度をしているのですが……お星さまの一人であるリンクはこわいようです。
リンクは楽しそうな仲間たちからはなれて広場を歩いていくと女の子のお星さま、ライラを見つけました。
ライラはみんなと違って準備をせず、じっと座っています。
「ライラは支度をしないの?」
リンクが聞くとライラはうなずきました。
「私、こわいの。」
リンクは一緒だ!と嬉しくなりました。
僕もだよ!と言うとライラは話を続けます。
「私ね、一回、お空の下に向かったの。でもこわくなって帰ってきちゃったの。」
リンクはびっくりします。
「帰ってくることができるの?」
「お空の下に届く前に戻ったから。下に着いちゃったらきっと帰ってこれないと思うわ。」
そうなんだとうなずきながらたずねます。
「お空の下はこわかった?」
「わからない。わからないまま帰ってきちゃったからますますこわいの。」
そう言ってライラは小さくまるまってしまいました。
○●○
「リンク!私は行くね!」
レイラもイルクもお空の下へおりていきます。
お星さまはどんどん生まれるので広場にはまだたくさんお星さまがいます。
けれど、リンクと一緒に生まれた仲間は気づいたらライラだけになってしまいました。
リンクはライラを探して歩いていると、ライラもこちらに向かって歩いてきました。
今日は下を見ず、まっすぐ前を向いています。
「リンク、私、お空の下に行くことにしたの。」
リンクはびっくりしました。ライラもこわいって言ってたのになぜ行くのでしょうか。
「こわくなくなったの?」
ライラは首をふります。
「ううん、こわい。こわいけど、ずっと目を背けてるのもこわいの。」
「目をそむける?」
「うん、こわいなって思って目をつむってるともっともっとこわくなっちゃう。だから行くことにしたの。」
そっか……とリンクはつぶやきました。これで一人になっちゃうと思うと悲しくなります。
「リンク、一緒に行かない?」
「え?」
「リンクと一緒に手を繋いで行ったらこわくないかもしれない。」
「手を?でも……僕こわくて帰ってきちゃうかもしれない。」
そしたらライラに迷惑をかけちゃうかも……とうつむくとライラは明るく言いました。
「そしたら一緒に帰ってこよう。そして仲間をつれて今度は三人で手を繋いでいこう。」
「三人で……?それでもダメだったら?」
「そしたら今度は四人で。四人でもダメだったら五人で行こう。」
五人のお星さまで手を繋ぐことを考えたらリンクは楽しくなってきました。
「そうだね。それでもダメだったらもっともっとたくさんのお星さまで手をつなごう。」
二人は笑い合い、手を繋ぎました。ずっと前から二人の支度は終わっていたのですぐ出発することができます。
「「行くよ、せーの。」」
二人は手を繋いでお空の下へ飛び立ちました。
○●○
その時、お空の下で女の人が空を見上げます。
「あ、流れ星。綺麗ね。」
隣の男の人もうなずきます。
「すごく大きな星だね。まるで2つの星が一緒に降りてきたみたい。」
「仲良しなのね。」
女の人はにっこり笑って自分のお腹を撫でました。男の人も優しく笑って女の人のお腹を撫でます。
それはとてもとても綺麗な夜でした。
冬童話2022年用に書きました。流れ星に願いを込めて。